1993年2月1日にポール・マッカートニーがMPL/パーロフォンからリリースした9作目のソロ・アルバム「OFF THE GROUND」からは、先行シングル「HOPE OF DELIVERANCE(明日への誓い)」に続いて、同1993年2月22日に「C'MON PEOPLE」がシングル・カットされました。ビートルズ時代のジョンが書いた「I AM THE WALRUS」を思い起こさせるリズムでの此の楽曲は、ポールの単独作ですが、サー・ジョージ・マーティンがプロデュースとオーケストラ・アレンジを担当していて、如何にも「ビートルズ風」です。アルバムでは本編の最後に収録されていて、此の楽曲が終わった後に、いきなりフェイドインしてくるポールが1968年頃に書いたと云う「COSMICALLY CONCIOUS」のサワリとセットになっているので、全くもって「ビートリー」です。まあ、ポールとサー・ジョージ・マーティンが組んでいるのですから、そりゃあ、本物なのです。1993年の2度目のソロ来日公演でも披露されていて、曲の最後にステージ後方のスクリーンにポールとジョンの写真が大きく映し出されて、そりゃあ、もう、感動的でした。7インチ盤のB面「I CAN'T IMAGINE」は思わせぶりなタイトルですが、ポールの単独作でアルバム未収録曲です。
此のシングルは「C'MON PEOPLE / I CAN'T IMAGINE」の7インチ盤の他に、「KEEP COMING BACK TO LOVE」と「DOWN TO THE RIVER」を加えた4曲入りのCDシングルと、「C'MON PEOPLE」と「DELIVERANCE」と「DELIVERANCE」のダブ・ミックスの3曲入りのCDシングルが出ていて、日本では2曲入りの短冊CDが出ています。此の内、「KEEP COMING BACK TO LOVE」がポールとヘイミッシュ・スチュアートの共作で、他は全てポールの単独作です。「C'MON PEOPLE」は、全英41位とイマイチな成績でした。更にポールは、米国や日本では同1993年4月19日にアルバム表題曲の「OFF THE GROUND」をCDシングル・カットしていて、「OFF THE GROUND」の他に「COSMICALLY CONCIOUS」のフル・ヴァージョンと「STYLE STYLE」と「SWEET SWEET MEMORIES」〜「SOGGY NOODLE」の4曲(実質5曲)入りで、ポールの単独作のカップリングの3曲(4曲)はアルバム未収録でした。そして、ヨーロッパ諸国では同1993年11月8日に「BIKER LIKE AN ICON」もCDシングル・カットして、カップリングは「UNPLUGGED」には未収録だった「MIDNIGHT SPECIAL」と「THINGS WE SAID TODAY」に、ライヴ盤「PAUL IS LIVE」からの「BIKER LIKE AN ICON(LIVE)」を加えています。
こうしてシングルのカップリングは全てアルバム未収録曲としてしまったので、1993年12月1日には本編全12曲(13曲)入りと、アルバム未収録の全12曲入りのCD2枚組アルバム「OFF THE GROUND:THE COMPLETE WORKS」がリリースされていて、レコーディング当時にコレだけの完成品を産んだのはポールにとっても前例がない事でした。ソレだけ、アルバム「OFF THE GROUND」のバンドによるレコーディングは充実していたわけです。日本のアホな評論家は、アルバム「OFF THE GROUND」に関してもエルヴィス・コステロとの共作の蔵出しだった2曲(「MISTRESS AND MAID」と「THE LOVERS THAT NEVER WERE」)ばかり褒めていて、要するにコステロが好きなだけとしか思えない評価をしているのですけれど、おいおい、本当に聴いて書いていますかあ?「THE LOVERS THAT NEVER WERE」は名曲だとは思いますけれど、他にもアルバムやシングルのカップリング曲には良い曲が満載なのに、コステロ絡みで書いて置けばいいか、と云う短絡的な事ばかり書いていて、全く無責任で楽な商売ですなあ。
さてさて、1993年は、ポールにとって何度目かの絶頂期でした。ソレはアルバムのリリースに如実に表れています。1993年にポールは新作アルバム「OFF THE GROUND」と「OFF THE GROUND:THE COMPLETE WORKS」の2作の他に、アルバム「McCARTNEY」からアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」までの16作を「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」としてリマスター音源で一気にリイシューしています。リマスターしてボーナス・トラックも入れているので、単なるリイシューではありません。「ニュー・ワールド・ツアー」の前半からのライヴ盤「PAUL IS LIVE」もリリースしていて、ポールとユースの変名ユニット「THE FIREMAN」の1作目である「STRAWBERRY OCEANS SHIPS FOREST」までリリースしているのです。つまり、1993年だけで20作ものアルバムを出してしまったわけですよ。リイシュー盤の16作を除外したって、新作だけでも4作も出しているのです。コロムビア時代のナイアガラじゃないんだから、そんなに出さなくとも良いのにねえ。まあ、ある事情で、其の後は1997年まで新作アルバムを出せなくなるんですけれどね。「C'MON PEOPLE / I CAN'T IMAGINE」は「THE 7‘’ SINGLES BOX」では56枚目で、ドイツ盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)