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2024年05月19日

「ポールの道」#375「THE 7‘’ SINGLES BOX」#51「THE LONG AND WINDING ROAD / C MOON」

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1989年にアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」をリリースしたポール・マッカートニーは、1989年から1990年に掛けて10年以上も行っていなかったワールド・ツアーを行い、103回のショーから厳選したライヴ音源でアナログ3枚組、CD2枚組のライヴ盤「TRIPPING THE LIVE FANTASTIC」を、1990年11月5日にMPL/パーロフォンからリリースしました。ツアー・メンバーは、ポール・マッカートニー(リード・ヴォーカル、ベース、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、ピアノ、キーボード)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル、キーボード、パーカッション)、ヘイミッシュ・スチュアート(バッキング・ヴォーカル、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、ベース)、ロビー・マッキントッシュ(バッキング・ヴォーカル、エレクトリック・ギター)、ポール'ウィックス'ウィッケンズ(バッキング・ヴォーカル、キーボード)、クリス・ウィッテン(ドラムス、パーカッション)の6人によるバンドで、基本的にはオリジナル・レコーディングを忠実に再現した演奏をバンド演奏で行っています。

内容は、CD1が、1「SHOWTIME」、2「FIGURE OF EIGHT」、3「JET」、4「ROUGH RIDE」、5「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」、6「BAND ON THE RUN」、7「BIRTHDAY」、8「EBONY AND IVORY」、9「WE GOT MARRIED」、10「INNER CITY MADNESS」、11「MAYBE I'M AMAZED」、12「THE LONG AND WINDING ROAD」、13「CRACKIN’ UP」、14「THE FOOL ON THE HILL」、15「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、16「CAN'T BUY ME LOVE」、17「MATCHBOX」、18「PUT IT THERE」、19「TOGETHER」です。CD2が、1「THINGS WE SAID TODAY」、2「ELEANOR RIGBY」、3「THIS ONE」、4「MY BRAVE FACE」、5「BACK IN THE U.S.S.R.」、6「I SAW HER STANDING THERE」、7「TWENTY FLIGHT ROCK」、8「COMING UP」、9「SALLY」、10「LET IT BE」、11「AIN'T THAT A SHAME」、12「LIVE AND LET DIE」、13「IF I WERE NOT UPON THE STAGE」、14「HEY JUDE」、15「YESTERDAY」、16「GET BACK」、17「GOLDEN SLUMBERS / CARRY THAT WEIGHT / THE END」、18「DON'T LET THE SUN CATCH YOU CRYING」の、全37曲入りです。

最新アルバムだった「FLOWERS IN THE DIRT」から6曲と多いものの、ビートルズやウイングスやソロからのセットリストになっていて、此の時点でのベストな選曲で、何よりも驚かされたのがメドレーを分ければ17曲にも及んだビートルズ・ナンバーの大盤振る舞いです。しかも、ソノ多くはビートルズがスタジオに籠っていた時代の楽曲で、つまりは初めてライヴで披露された楽曲も多く含まれていました。ポールはライヴ盤から3作のシングル・カットをしていて、順番は違っていますが1990年と1991年にヨーロッパ諸国と日本で「THE LONG AND WINDING ROAD」をリリースしています。「THE LONG AND WINDING ROAD」は云わずと知れたビートルズ時代の名曲のひとつですが、1970年にビートルズのアルバム「LET IT BE」でフィル・スペクターの大仰なヴァージョンが初出で、ソノ時には米国でシングル・カットされて全米首位!になっています。1976年にはウイングスのライヴでも披露して、ライヴ盤「WINGS OVER AMERICA」に収録されています。更に1984年のサントラ盤「GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET」では、サックス入りのAORアレンジで再演しています。

そして、1989年のアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」からのシングル「THIS ONE」のカップリングで新録ヴァージョンが、シングル「FIGURE OF EIGHT」のカップリングでヴィデオ・ヴァージョンが収録されているので、此の時点でも6度目のレコード化と云う事になります。フィル・スペクターのプロデュースには激怒したと云われているポールですが、サントラ盤「GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET」でのへなちょこアレンジの方が酷かったし、コノ頃からはフィル・スペクターが導入したストリングスをシンセサイザーで代用してオリジナルのヴァージョンに近くなっています。ポールも大人になったし、ビートルズ・ファンに対しては「レコードと同じアレンジで演奏しよう」と考えを改めたのでしょう。まあ、しかし、2003年には「LET IT BE... NAKED」を出しちゃうんですけれどね。此のライヴ盤シングルには、7インチでB面がアルバム未収録の「C MOON」と、12インチやCDシングルで更にアルバム未収録の「MULL OF KINTYRE」を加えた3曲入りと、12インチやシングルCDでアルバムからの「PUT IT THERE」を加えた4曲入りがあります。

ポールは此の後にも2002年のライヴ盤「BACK IN THE U.S. LIVE 2002」と2003年のライヴ盤「BACK IN THE WORLD」にもライヴ音源を収録していて、2009年のライヴ盤「GOOD EVENING NEW YORK CITY」にもライヴ音源を収録しています。ポールが最もレコーディングし直している曲が「THE LONG AND WINDING ROAD」と云う事になりますし、それだけ思い入れがある楽曲なのでしょう。故に、ヨーロッパ諸国や日本でしかシングル・カットしていなかった此の時のシングル盤を「THE 7‘’ SINGLES BOX」に収録したのでしょう。此の時の3作のシングルは、それぞれがカップリングにライヴ盤「TRIPPING THE LIVE FANTASTIC」には未収録のライヴ音源を入れているので、単なるシングル・カットではないし、日本のバカな評論家がそんなにポールが1980年代には低迷していた事にしたいのならば、復活したのはワールド・ツアーの大成功とソノ成果である此のライヴ盤の存在を無視するわけにはいかないでしょう。「THE 7‘’ SINGLES BOX」には51枚目で、欧州盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。

さてさて、来るべき2024年6月14日には、ウイングスのスタジオ・ライヴ盤「ONE HAND CLAPPING」が遂に公式盤CD2枚組でリリースされるのですが、元相方のジョン・レノンも負けじとアルバム「MIND GAMES」の箱を7月12日にリリースするそうです。コレがですね、箱はCD6枚にBD2枚の8枚組で、価格が3万5千2百円もするんですよ。2018年にリリースした「IMAGINE」の箱は、CD4枚にBD2枚の6枚組で1万3千2百円で、2021年にリリースした「ジョンの魂」の箱は、CD6枚にBD2枚の8枚組で1万7千6百円だったのですよ。つまり、内容的には「ジョンの魂」の箱と同じなのに、何故か価格が倍になっているのです。おいおい、こりゃあ、一体どうなっているんでしょうか。これまでの箱は買ってしまったけれど、まあ、内容は今までの箱と同様に「なんちゃってリミックス」が多いみたいなので、CD2枚組でもいいかな、と思っています。しかし、ジョンのアルバムとしては評価が低い作品なのに、此の強気な価格設定には驚きましたよ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする