ポール・マッカートニーが1989年6月5日にリリースした8作目のスタジオ・ソロ・アルバム「FLOWERS IN THE DIRT」は、アナログ盤のA面が、1「MY BRAVE FACE」、2「ROUGH RIDE」、3「YOU WANT HER TOO」、4「DISTRACTIONS」、5「WE GOT MARRIED(幸せなる結婚)」、6「PUT IT THERE」で、B面が、1「FIGURE OF EIGHT」、2「THIS ONE」、3「DON'T BE CARLESS LOVE(ケアレス・ラヴに気をつけて)」、4「THAT DAYS IS DONE(ふりむかないで)」、5「HOW MANY PEOPLE(ハウ・メニー・ピープル(チコ・メンデスに捧ぐ))」、6「MOTOR OF LOVE」の全12曲入りで、CDには最初から「OU EST LE SOLEIL(太陽はどこへ?)」がボーナス・トラックとして収録された全13曲入りでした。更に日本では、1990年3月2日(来日公演初日予定で中止になった日)にCD2枚組の「FLOWERS IN THE DIRT」Special Packageがリリースされて、本編13曲入りと、ボーナス・ディスクで、1「MESSAGE」、2「THE LONG AND WINDING ROAD」、3「LOVELIEST THING」、4「ROUGH RIDE」、5「OU EST LE SOLEIL(7''MIX)」、6「MAMA'S LITTLE GIRL」、7「SAME TIME NEXT YEAR」、8「PARTY PARTY」、9「P.S. LOVE ME DO」が収録されています。
此のアルバムからは「MY BRAVE FACE」と「THIS ONE」と「FIGURE OF EIGHT」と「PUT IT THERE」の4曲(12インチでの「OU EST LE SOLEIL」を加えれば5曲)がシングル・カットされていて、最新アルバムだったので1990年3月の初来日公演では「FIGURE OF EIGHT」と「ROUGH RIDE」と「WE GOT MARRIED」と「PUT IT THERE」と「THIS ONE」と「MY BRAVE FACE」と、アルバムの半数にも及ぶ6曲も披露しています。特に「FIGURE OF EIGHT」は、1曲目に演奏されたのです。ようやく実現したポールのライヴの1曲目だったのですから、もう冷静な評価など出来るわけがないので、ソレはアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」に対しても同じで、初めて観たポールが6曲も披露したので盤石な地位を得てしまったアルバムなのです。其の辺の当時の状況を加味しないと、何故にアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」が過大評価されるのかが理解できないでしょう。松村雄策さんは当時、スティーヴィー・ワンダーとの共演曲「EBONY AND IVORY」も、マイケル・ジャクソンとの共作共演曲「SAY SAY SAY」も、エルヴィス・コステロとの共作共演曲「YOU WANT HER TOO」も「要らない」と書いていました。そこまで極端な事は云いませんけれど、ポールとコステロの共作曲が全て傑作だとは云えないと思います。
さて、1989年11月13日に、アルバム「FLOWERS IN THE DIRT」からの第3弾シングルとして「FIGURE OF EIGHT」がMPL/パーロフォンからリリースされたのですが、コレがマタ、マニア泣かせのトンデモ・シングルでした。まずは、7インチ・シングルのA面の「FIGURE OF EIGHT」は、アルバムからのシングル・カットではなく、シングル用にレコーディングし直した別ヴァージョンの7インチ編集ヴァージョンです。B面の「OU EST LE SOLEIL」も、シングル用の別ミックスです。12インチは3種類あって、「FIGURE OF EIGHT」のシングル・ヴァージョンの「フル・レングス」に「THIS ONE」の「クラブ・ラヴジョイ・ミックス」を収録した一つ目と、「FIGURE OF EIGHT」のシングル・ヴァージョンの「フル・レングス」に「OU EST LE SOLEIL」の12インチ・ミックスと「タブ・ダブ・ミックス」を収録した二つ目と、「FIGURE OF EIGHT」のシングル・ヴァージョンの「フル・レングス」に「OU EST LE SOLEIL」の7インチ・ミックスを片面に収録して片面はエッチングした三つ目があります。更にCDシングルも2種あって、「FIGURE OF EIGHT」のシングル・ヴァージョンと「THE LONG AND WINDING ROAD」のヴィデオ・ヴァージョンと「LOVELIEST THING」の3曲入りと、「FIGURE OF EIGHT」のシングル・ヴァージョンのフル・レングスと「ROUGH RIDE」のヴィデオ・ヴァージョンと「OU EST LE SOLEIL」の7インチ・ミックス入りがあります。もうね、そんじょそこらのアイドル・グループでも太刀打ちできない別ヴァージョンの嵐でした。
CDシングルは同内容のプラケース入りとデジパック仕様の2種があるので、合計7種類も出ていて、6種類が別内容となっているのです。日本では此のシングルは出ていなくて、代わりに前述の「FLOWERS IN THE DIRT」Special Packageが出ていて、そちらでシングル「FIGURE OF EIGHT」とシングル「PUT IT THERE」に収録されていたアルバム未収録曲や別ヴァージョンを、全てではありませんが聴く事が出来ます。個人的にもアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」からはCDで買う様になっていたのですが、記憶は定かではありませんが「通常盤CD」と「Special Package」の2度買いさせられて通常盤を売ったと思います。そんなのは些細な事で、初来日公演に向けて興奮していたのです。1993年の「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」には此のシングル・カップリング曲からは「LOVELIEST THING」しか入っていないし、2017年の「アーカイヴ・コレクション」はポールとコステロの共作曲デモ音源しか入っていないので、「Special Package」は便利です。ソレでしか聴けないのは「MESSAGE」と、ズッコケ丸出しな「P.S. LOVE ME DO」のスタジオ・ヴァージョンだけなんですけれどね。沢山出した「FIGURE OF EIGHT」は、全英42位・全米92位と大爆死していて、だからアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」はそんなに凄いアルバムではないのですよ。「THE 7‘’ SINGLES BOX」では48枚目で、オーストラリア盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)