1987年11月2日(LP&CD)(英国・MPL/パーロフォン)、同年11月11日(CD)同年12月1日(LP)(米国・MPL/キャピトル)、同年11月16日(LP&CD)(日本・MPL/オデオン)に、ポール・マッカートニーはベスト盤「ALL THE BEST!」をリリースしました。英国盤と日本盤のLPは2枚組全20曲入りで、米国盤のLPは2枚組で全17曲入りでした。英国盤(日本盤)CDは、1「JET」(1973)、2「BAND ON THE RUN」(1973)、3「COMING UP」(1980)、4「EBONY AND IVORY」(1982)、5「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID(あの娘におせっかい)」(1975)、6「NO MORE LONELY NIGHTS(ひとりぼっちのロンリー・ナイト)」(1984)、7「SILLY LOVE SONGS(心のラヴ・ソング)」(1976)、8「LET ’EM IN(幸せのノック)」(1976)、9「C MOON」(1972)、10「PIPES OF PEACE」(1983)、11「LIVE AND LET DIE(007 / 死ぬのは奴らだ)」(1973)、12「ANOTHER DAY」(1971)、13「ONCE UPON A LONG AGO」(1987)、14「SAY SAY SAY」(1983)、15「MY LOVE」(1973)、16「WE ALL STAND TOGETHER」(1984)、17「MULL OF KINTYRE(夢の旅人)」(1977)の、全17曲入りで、アナログ盤からカットされたのは「MAYBE I'M AMAZED」(1970)と「WITH A LITTLE LUCK(しあわせの予感)」(1978)と「GOOD NIGHT TONIGHT」(1979)の3曲です。
米国盤だと選曲も曲順も違っていて、アナログ盤から「MAYBE I'M AMAZED」と「MULL OF KINTYRE」と「PIPES OF PEACE」と「WE ALL STAND TOGETHER」と「ONCE UPON A LONG AGO」の5曲をカットして、「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」と「JUNIOR'S FARM」を足して、1「BAND ON THE RUN」(1973)、2「JET」(1973)、3「EBONY AND IVORY」(1982)、4「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID」(1975)、5「NO MORE LONELY NIGHTS」(1984)、6「SILLY LOVE SONGS」(1976)、7「LET ’EM IN」(1976)、8「SAY SAY SAY」(1983)、9「LIVE AND LET DIE」(1973)、10「ANOTHER DAY」(1971)、11「C MOON」(1972)、12「JUNIOR'S FARM」(1974)、13「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」(1971)、14「COMING UP(LIVE VERSION)」(1980)、15「GOOD NIGHT TONIGHT」(1979)、16「WITH A LITTLE LUCK(DJ EDIT)」(1978)、17「MY LOVE」(1973)の、LPもCDも全17曲入りとなっております。つまり、米国で売れた曲を優先していて、米国ではシングルが出ていない「WE ALL STAND TOGETHER」や、此の時の新曲で英国ではシングル・カットされた「ONCE UPON A LONG AGO」は入っていないし、英国では首位!だった「MULL OF KINTYRE」や「PIPES OF PEACE」も入っていません。
CDは日本盤と米国盤の両方を持っていますが、良く聴くのは米国盤で、やはり最初の「BAND ON THE RUN」と「JET」はオリジナル・アルバムの順番で聴きたいし、英国盤(日本盤)でカットされた「WITH A LITTLE LUCK」や「GOOD NIGHT TONIGHT」や、元々入っていなかった「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」と「JUNIOR'S FARM」も聴けるし、ジョン・レノンも絶賛した「COMING UP」もライヴ・ヴァージョンの方が好きです。コレまでポールには1978年リリースのベスト盤「WINGS GREATEST」全12曲入りがあって、ほとんどの曲が重複していますし、前のベスト盤はウイングス名義だったのにソロやポール&リンダ名義の曲も入っていて、今度はポール名義なのにウイングス名義の曲も多く選曲されていて、如何にも天然バカボンのポールらしいベスト盤です。英国では1987年11月16日に、新曲である「ONCE UPON A LONG AGO / BACK ON MY FEET」がシングル・カットされていて、全英10位と久しぶりのトップ10ヒットになっていますが、前述の通り米国ではそもそもベスト盤「ALL THE BEST!」にも未収録だったので、シングルも出ていません。故に、米国では1993年の「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」の一環でリイシューされたアルバム「PRESS TO PLAY」に、「ONCE UPON A LONG AGO(LONG VERSION)」がボーナス・トラックとして収録されるまで聴けなかった曲です。B面の「BACK ON MY FEET」も、「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」のアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」にボーナス・トラックとして収録されました。アルバム「FLOWERS IN THE DIRT」の「アーカイヴ・コレクション」には、アルバム未収録シングル曲は収録されていないので、要注意です。
さて、此のシングル「ONCE UPON A LONG AGO」は、英国では7インチ盤と12インチ盤2種とCDシングルが出ています。日本では、7インチ盤のみのリリースです。ポールの単独作でA面の「ONCE UPON A LONG AGO」は7インチ盤とCDシングルが「SINGLE VERSION」で、12インチ盤が「LONG VERSION」と「EXTENDED VERSION」と3ヴァージョンあります。ポールとエルヴィス・コステロの初リリース共作曲であるB面の「BACK ON MY FEET」は、全て同じヴァージョンで収録されていて、12インチ盤には更に「MIDNIGHT SPECIAL」と「DON'T GET AROUND ANYMORE」が収録されたものと、「LAWDY MISS CLAWDY」と「KANSAS CITY」が収録されたものがあって、これらの4曲は1988年に旧ソ連で限定発売(1991年に全世界リリース)されたロックンロールのカヴァー・アルバム「CHOBA B CCCP」用の音源です。CDシングルは「ONCE UPON A LONG AGO(SINGLE VERSION)」と「BACK ON MY FEET」と「DON'T GET AROUND ANYMORE」と「KANSAS CITY」の4曲入りで、つまりは4種で全て収録内容が異なっています。A面の「ONCE UPON A LONG AGO」はポールらしい名バラードで、英国でヒットしたのも頷ける曲です。7インチ盤のジャケットもベスト盤「ALL THE BEST!」に合わせていて、イイ感じです。ところが、米国ではベスト盤にも入っていなくてシングルも出ていなくて、ベスト盤は全英2位なのに全米62位と大爆死しちゃったんですよ。
問題のB面の「BACK ON MY FEET」は、前述の通りエルヴィス・コステロとの初リリース共作曲ですけれど、此の時点でポールとコステロの共作を称賛した評論家は、ほとんどいなかったと記憶しています。何だか凄い事になっているぞ、と評論家が騒ぎだしたのは、1989年2月14日リリースのエルヴィス・コステロのアルバム「SPIKE」からのシングル・カットで全米19位のヒット曲となった「VERONICA」からで、要するにバカな評論家はポールのシングルB面曲であった「BACK ON MY FEET」なんか聴いていなくて、コステロが「VERONICA」を歌ったので初めてポールとコステロの共作曲を絶賛する様になったのですよ。此の7インチ盤「ONCE UPON A LONG AGO / BACK ON MY FEET」は、どちらもフィル・ラモーンのプロデュースなので、1987年リリース予定だったポールの未発表アルバム「RETURN TO PEPPERLAND」絡みの楽曲です。そして、何とミックスは、サー・ジョージ・マーティンが担当しています。ポールの流れとしては、1986年リリースのアルバム「PRESS TO PLAY」から次の1989年リリースのアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」まで空白がある様に云われていますが、ソレはオリジナル・ソロ・アルバムに限った話で、1987年にはこうしてベスト盤を出してシングルのB面にはポールとコステロの共作曲を入れていたし、同年にはアルバム「RETURN TO PEPPERLAND」も制作していたし、1988年にはカヴァー・アルバム「CHOBA B CCCP」を出しているんですよ。ブートレグ9枚組の「THE 7‘’ SINGLES」では此のシングルで5枚目が終わって、「THE 7‘’ SINGLES BOX」では45枚目で、英国盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)