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2024年05月06日

「ポールの道」#362「THE 7‘’ SINGLES BOX」#38「NO MORE LONELY NIGHTS(BALLAD) / NO MORE LONELY NIGHTS(PLAYOUT VERSION)」

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ポール・マッカートニーは、1984年10月22日に同名映画のサントラ盤「GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET(ヤァ!ブロード・ストリート)」をMPL/パーロフォンからリリースしました。プロデュースは1982年リリースの前々作アルバム「TUG OF WAR」と1983年リリースの前作アルバム「PIPES OF PEACE」と同じく、3作連続でサー・ジョージ・マーティンです。レコーディングは1982年11月から1983年7月で、前作アルバム「PIPES OF PEACE」と被っています。サントラ盤CDの内容は、1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(バラード編)」、2「GOOD DAY SUNSHINE / CORRIDOR MUSIC」、3「YESTERDAY」、4「HERE, THERE, AND EVERYWHERE」、5「WANDERLUST」、6「BALLROOM DANCING」、7「SILLY LOVE SONGS(心のラヴ・ソング) / REPRISE」、8「NOT SUCH A BAD BOY(悲しいバッド・ボーイ)」、9「SO BAD」、10「NO VALUES / NO MORE LONELY NIGHTS(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(バラード/リプライズ))」、11「FOR NO ONE」、12「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM(エリナーの夢)」、13「THE LONG AND WINDING ROAD」、14「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(プレイアウト編))」、15「GOODNIGHT PRINCESS」の全15曲入りで、1993年の「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」では更に、16「NO MORE LONELY NIGHTS(Extended Version)」と、17「NO MORE LONELY NIGHTS(Special Dance Mix)」も加えた全17曲入りです。

アナログ盤だと、「SO BAD」と「GOODNIGHT PRINCESS」2曲が収録されておらず、「GOOD DAY SUNSHINE / CORRIDOR MUSIC」と「WANDERLUST」と「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM」と「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)」の4曲が短縮版になっています。前々作「TUG OF WAR」と前作「PIPES OF PEACE」もCD化は早かったのですが、此のサントラ盤からはLPとCDが同日発売されていて、すっかりCD仕様となりました。新曲は「NO MORE LONELY NIGHTS(2ヴァージョン)」と「NOT SUCH A BAD BOY」と「NO VALUES」の3曲のみで、他はビートルズやウイングスやソロのセルフ・カヴァーで、特にビートルズ・ナンバーが「GOOD DAY SUNSHINE」と「YESTERDAY」と「HERE, THERE, AND EVERYWHERE」と「FOR NO ONE」と「ELEANOR RIGBY」と「THE LONG AND WINDING ROAD」と6曲も再演されていて、ソノ内の4曲はアルバム「REVOLVER」からとなっていて、ソノ理由は「ジョンに褒められたから」でしょう。サックス入りで安っぽくなった「THE LONG AND WINDING ROAD」や、夢オチの映画は盛大にズッコケましたが、サントラ盤の方は全英首位!全米21位と、英国では文句なしで、米国では落ち込んでいます。映画では口パクを嫌ったポールの意向で、ほとんどが生演奏で生歌です。

ポールが此の映画を自ら脚本も手掛けて制作したのは、時代が「MTV」全盛期だったからでしょうし、陳腐なストーリー展開を無視して豪華絢爛なMV集としてならば魅力的です。ビートルズ時代にポールの発案で制作した1967年のTV映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」のポール版みたいな映画で、映像作品は酷評されたのに劇中音楽は絶賛されたのも同じです。アルバムのレコーディング・メンバーも、ポール&リンダ・マッカートニーの他に、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア(ギター)、元ビートルズのリンゴ・スター(ドラムス)、10ccのエリック・スチュワート(ギター、バッキング・ヴォーカル)、元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ(ベース、キーボード)、デイヴ・エドモンズ(ギター)、クリス・スペディング(ギター)、TOTOのスティーヴ・ルカサー(ギター)、TOTOのジェフ・ポーカロ(ドラムス)などが参加しています。盟友リンゴは兎も角、3作連続参加となったエリック・スチュワートは、1983年リリースのアルバム「WINDOWS IN THE JUNGLE(都市探検)」で10ccを一旦は解散しているので、ポールの次作アルバムで1986年リリースの「PRESS TO PLAY」での本格的な共作共演へ向けて身を綺麗にした様にも思えます。

此のサントラ盤からは「NO MORE LONELY NIGHTS(BALLAD) / NO MORE LONELY NIGHTS(PLAYOUT VERSION)」が1984年9月24日に先行シングルとしてリリースされていて、通常の7インチ以外に2種の12インチ・シングルも出ています。通常の7インチは「NO MORE LONELY NIGHTS」のバラードとプレイ・アウトで、最初の12インチは「NO MORE LONELY NIGHTS」のエクステンデッド・ヴァージョンがA面でB面は「SILLY LOVE SONGS」と「NO MORE LONELY NIGHTS」のバラードで、ピクチャー・レコードも出ていて、第2版の7インチは「NO MORE LONELY NIGHTS」のバラードとスペシャル・ダンス・ミックスで、第2版の12インチはA面に「NO MORE LONELY NIGHTS」のエクステンデッド・プレイアウト・ヴァージョンが収録されています。英国盤だけでピクチャー盤も加えれば5種類のシングルがあって、しかも品番が同じです。音源的には「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」で、ほとんど聴けます。シングルのレコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(ヴォーカル、ピアノ)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、エリック・スチュワート(バッキング・ヴォーカル)、デヴィッド・ギルモア(ギター)、ハービー・フラワーズ(ベース)、スチュアート・エリオット(ドラムス)、アン・ダッドリー(シンセサイザー)です。

此の初版シングル両面は、2001年5月にリリースされたポールのCD2枚組40曲入り(日本盤は41曲入り)のベスト盤「WINGSPAN」に、どちらもCD1「HITS」とCD2「HISTORY」の最後に収録されています。日本盤のCD1にはボーナス・トラックで「出ておいでよ、お嬢さん(EAT AT HOME)」が加わっているのですけれど、本編としては2枚共「NO MORE LONELY NIGHTS」で〆ているわけです。誰もが疑問に思われるでしょうけれど、「WINGSPAN」と云うベスト盤は、ウイングスではない楽曲も多く選曲されています。そして、何故かスティーヴィー・ワンダーとの「EBONY AND IVORY」と、マイケル・ジャクソンとの「SAY SAY SAY」は、全米首位!だったのに入っていません。つまりは1970年から1984年までの楽曲からウイングスだけではなく、ソロ名義やポール&リンダ名義の曲も多く選曲されているのに、タイトルは「WINGSPAN」で、ブックレットには歴代の「第1期ウイングス」から「第7期ウイングス」までのメンバー遍歴が写真入りで載っているのです。其の辺の大雑把なところは、流石は天下無敵のサー・ポール・マッカートニーです。全英2位・全米6位とヒットした此のシングルは「THE 7'' SINGLES BOX」では38枚目で、英国盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする