
1978年3月にリリースしたポール・マッカートニーが率いるウイングスの6作目のスタジオ・アルバム「LONDON TOWN」では、5人組だった「第5期ウイングス」と3人だけになった「第6期ウイングス」と二人だけで仕上げた「第6.5期ウイングス」が混在していました。ポールは、契約満了となる同1978年11月22日にはビートルズ解散後では初のベスト盤「WINGS GREATEST」をパーロフォン(英国)・キャピトル(米国)からリリースするのですが、英国5位は良いとしても、米国では29位と低迷してしまいます。此の「WINGS GREATEST」と云うベスト盤は、ポールは2枚組の「HOT HITS - KOLD KUTZ」として、ベスト盤1枚と未発表曲集1枚を予定していたのですが、レコード会社の反対によってベスト盤1枚のみのリリースとなってしまったレコードで、タイトルが「WINGS GREATEST」なのに、A面1曲目はポールのソロ名義のシングル「ANOTHER DAY」だし、B面1曲目はポール&リンダ・マッカートニー名義の「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」が収録されています。ジャケット写真は、4千ポンドも掛けてアルプスから運んできた雪の上に銅像を置いて撮影と云う、訳が分からないお金を掛けています。
ソレで、英国ではEMI・パーロフォンとの契約をつづけますが、米国では1979年からコロムビアへと移籍します。1978年後半には、アルバム「LONDON TOWN」からの第2弾シングル・カット「I'VE HAD ENOUGH」と第3弾シングル・カット「LONDON TOWN」は余り売れず、ベスト盤でお茶を濁しておりましたが、産休だったリンダが戻って来ても、ポール&リンダとデニー・レインの3人組「第6期ウイングス」では、やはりライヴ活動が出来ません。ソコで、1978年2月には新ドラマーのスティーヴ・ホリーを、同年5月にはリード・ギタリストのローレンス・ジューバーを正式にウイングスのメンバーとして加入させて、ウイングス史上最後となる「第7期ウイングス」として再始動したのでした。5人組となった「第7期ウイングス」は、1978年6月から翌1979年2月にかけて、断続的に7作目で結果的にはウイングスとしての最後のスタジオ・アルバムとなる「BACK TO THE EGG」のレコーディングをつづけてゆきます。
そんな中から先行シングルとして、1979年3月23日に「GOODNIGHT TONIGHT / DAYTIME NIGHTTIME SUFFERING」をリリースしました。此のシングルのA面「GOODNIGHT TONIGHT」は、7インチ盤(4分18秒)と12インチ盤(7分25秒)があって、ウイングス(ポール)が初めてリリースした12インチ・シングルです。レコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(リード・ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル、ベース、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、シンセサイザー、ドラムス、タンバリン、パーカッション、ボコーダー)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、デニー・レイン(バッキング・ヴォーカル、エレクトリック・ギター)、ローレンス・ジューバー(バッキング・ヴォーカル、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター)、スティーヴ・ホリー(バッキング・ヴォーカル、クレイ・ハンド・ドラムス、パーカッション)の、「第7期ウイングス」です。と云うか、ほとんどがポールによるソロに近い編成です。
初の12インチ・シングルでロング・ヴァージョンもリリースしたのは、此の楽曲が当時流行していた「ディスコ調」でもあったからなのですが、単なるディスコではないのが、流石はポール・マッカートニーです。詞はポールが大好きなエッチな内容ですけれど、スパニッシュ・ギター風なイントロから強烈なディスコ・ビートに乗せて、ポールが弾くリード・ベースがブンブンとうねる様に引っ張ってゆきます。此の「GOODNIGHT TONIGHT」は、全英5位・全米5位と大ヒットしていますが、ウイングス名義のスタジオ・レコーディングでは最後の大ヒット曲となってしまいました。当初はA面と考えていたB面の「DAYTIME NIGHTTIME SUFFERING」は、ポールのお気に入りの曲で「レコーディング・セッション」のインタビューでも言及していましたし、2001年のベスト盤「WINGSPAN」にも収録されていました。両面共にポールの単独作で、オリジナル・アルバムには未収録です。後に別々のCDのボーナス・トラックに加えられたので、両方が収録されているのは前述のベスト盤「WINGSPAN」だけです。「GOODNIGHT TONIGHT」のロング・ヴァージョンは、配信のみで公式盤では未CD化だと思います。「THE 7‘’ SINGLES BOX」には25枚目で、フランス盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)