ポール・マッカートニーが率いるウイングスは、1975年5月30日(英国・MPL/パーロフォン)・同年5月27日(MPL/キャピトル)にリリースされた4作目のアルバム「VENUS AND MARS」から、再び「ポール・マッカートニー&ウイングス」から「ウイングス」へと再改名しました。前作である1973年12月リリースのアルバム「BAND ON THE RUN」が売れに売れて、レーベルもアップルから離れた事で、ポールの意見が通ったのでしょう。でもね、日本では相変わらず「ポール・マッカートニー&ウイングス」だったのですよ。アルバム「VENUS AND MARS」からの先行シングル「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID(あの娘におせっかい)」も全英6位・全米首位!・日本首位!とバカ売れして、1975年10月4日(米国)・同年10月18日(英国)・同年11月5日(日本)に、第2弾シングルとして「LETTING GO(ワインカラーの少女) / YOU GAVE ME THE ANSWER(やさしいアンサー)」をリリースするのですが、全英41位・全米39位とイマイチな成績となっています。
まあ、全米ではアルバム「VENUS AND MARS」が予約だけで200万枚も売れたので、みんな既にアルバムを買っていたのでしょう。A面の「LETTING GO」のレコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(リード & バッキング・ヴォーカル、ベースギター、ストリングス・アレンジメント、エレクトリック・ギター、エレクトロニックピアノ)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、デニー・レイン(バッキング・ヴォーカル)、ジミー・マカロック(エレクトリック・ギター)、ジェフ・ブリトン(ドラムス)の「第4期ウイングス」に、トニー・ドーシーがストリングス・アレンジメントを担当していて、クライド・カー(トランペット)、ジョン・ロンゴ(トランペット)、マイケル・ピアース(アルトサックス)、アルビン・トーマス(アルトサックス)、カール・ブルアン(バリトンサックス)が参加していて、ホーン隊がカッコイイ曲ですが、ウイングスの演奏は「ポール、ジミー、ジェフ」の3ピースです。
つまり、A面の「LETTING GO」は、1974年11月にレコーディングされた「第4期ウイングス」による楽曲なのですが、此のシングル・ヴァージョンはアルバム・ヴァージョンよりも1分短い別ミックスで、2014年リリースのアルバム「VENUS AND MARS」の「アーカイヴ・コレクション」で初CD化されるまではシングル盤でしか聴けなかったのです。前作シングルの「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID」もシングル・ヴァージョンはアルバムとは違っていたし、先を急ぐと次作シングルとなる「VENUS AND MARS / ROCK SHOW」もシングル・ヴァージョンはアルバム・ヴァージョンとは違っています。ポールはシングルとアルバムは別で、ファンに2度買いはさせたくないと考えていて、ソレはビートルズ時代からウイングスを経て現在のソロまで一貫しています。故にシングル80枚組の箱が成立するし、こうしてシングル・ヴァージョンに関する文章も書けるわけですなあ。
シングルは余り売れなかった「LETTING GO」ですが、ホーン隊も加わってのライヴでも映える楽曲で、個人的にはかなり好きな曲のひとつです。邦題の「ワインカラーの少女」は原題とは違っていて、まあ、原曲の歌詞は例によってエッチな内容です。邦題と云えば、B面の「YOU GAVE ME THE ANSWER」は、アルバムでは「幸せのアンサー」で、此のシングルでは「やさしいアンサー」と改題されています。こちらはポールがお得意なジャジーでヴォードヴィル調の曲で、レコーディングは1975年1月からのニューオリンズで、ドラマーがジョー・イングリッシュに代わった「第5期ウイングス」ですが、こちらも、管弦楽団をゲストに迎えていて、ウイングスは「ポール、ジミー、ジョー」の3ピースでのベーシック・トラックです。リンダは兎も角、デニー・レインの扱いが雑になってまいりました。両面共に作詞作曲は「ポール&リンダ」と云う事になっていて、「THE 7‘’ SINGLES BOX」では16枚目で、ドイツ盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)