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2024年04月13日

「ポールの道」#339「THE 7‘’ SINGLES BOX」#15「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID / LOVE IN SONG」



ジョン・レノンとポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンとリンゴ・スターが組んでいたバンド「ザ・ビートルズ」は、1962年から1970年までの実質8年弱しか活動していなくて、それでも同一メンバーで英国でのオリジナル・アルバムを12作も遺していて、シングルやEPのみの楽曲も含めて「213曲」もの公式レコーディング曲があるのです。今更そんな事を云うのは、ビートルズが解散後にポールが結成した「ウイングス」の異常性を知って頂く為です。1971年に結成して1981年に自然消滅したウイングスと云う名のバンドは、実質的には1971年リリースのアルバム「WILD LIFE」から1979年リリースのアルバム「BACK TO THE EGG」までの8年間しか活動していないのですが、ビートルズがジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人で固定されていたのに、ウイングスは第1期から第7期まであってですね、簡単に云ってしまうと、オリジナル・スタジオ・アルバムが7枚で、それぞれが別のメンバーでのレコーディングなのです。つまり、ウイングスと云うバンドは、同一メンバーではアルバムを1枚ずつしか制作出来なかったバンドなのです。

以前にも書きましたが、ソレが天然バカボンであるポール・マッカートニーと云うミュージシャンの性であって、そんなトンデモ野郎と10作以上も同一メンバーでアルバムを作ったジョンとジョージとリンゴは、それだけでも凄い奴らだったわけですなあ。さて、1974年にナッシュビルでレコーディングしたシングル「JUNIOR'S FARM」で始動した「第4期ウイングス」は、続いて同年11月からアルバム「VENUS AND MARS」のレコーディングをアビイ・ロード・スタジオで開始したのですが、またしてもバンマスであるポールの思い付きで翌1975年1月からニューオリンズでのレコーディングに突入します。ところが、入ったばかりだったドラマーのジェフ・ブリトンが「空手映画俳優になる!」との理由で脱退してしまい、早くも「第4期ウイングス」は崩壊して、急遽新聞広告で募集した新ドラマーのジョー・イングリッシュを加入させて「第5期ウイングス」となってしまったのです。

故に、1975年にリリースされたウイングスの4作目のアルバム「VENUS AND MARS」は、まだジェフ・ブリトンがいた「第4期ウイングス」とジョー・イングリッシュ加入後の「第5期ウイングス」が混在したアルバムになっているのです。アルバム「VENUS AND MARS」から先行シングルとなった「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID(あの娘におせっかい) / LOVE IN SONG(歌に愛をこめて)」は、1975年5月16日(英国・米国)・6月20日(日本)にパーロフォン/キャピトルからリリースされましたが、A面の「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID」が「第5期ウイングス」で、B面の「LOVE IN SONG」が「第4期ウイングス」で、これぞウイングスと云う無茶苦茶なメンバー構成となっております。ちなみに、両面共に作詞作曲は「ポール&リンダ・マッカートニー」名義となっているのですが、もうそんな事よりもウイングスの目まぐるしいメンバー・チェンジの方に目が行ってしまいます。特筆すべきなのは、英米ではバンド名が「ポール・マッカートニー&ウイングス」から「ウイングス」に戻った事でしょうか。しかし、日本では相変わらず「ポール・マッカートニー&ウイングス」でした。

全英6位・全米首位!・日本首位!の大傑作「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID(あの娘におせっかい)」のレコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(リード & バッキング・ヴォーカル、ベースギター、アコースティック・ギター 、エレクトリック・ギター、クラビネット、エレクトロニックピアノ、モーグ・シンセサイザー )、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、デニー・レイン(バッキング・ヴォーカル、エレクトリック・ギター、ボンゴ)、ジミー・マカロック(エレクトリック・ギター)、ジョー・イングリッシュ(ドラムス、パーカッション)の「第5期ウイングス」で、シド・シャープ・ストリングス(チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン)、ゲイル・レヴァント(ハープ)、デイヴ・メイソン(エレクトリック・ギター)、トム・スコット(サクソフォーン)、トニー・ドーシー(ストリングス・アレンジメント)と、ゲストも豪華です。

此の曲は、アルバムではイントロでポールがレオ・ノセンテッリ(ミーターズのギタリスト)のモノマネで語るセリフが入っていて、最後は次の「TREAT HER GENTLY / LONELY OLD PEOPLE」とメドレーになっているのですが、シングルではセリフはなしで、エンディングもフェイドアウトする別ミックスとなっております。デイヴ・メイソンのギターやトム・スコットのサックス(試し吹きを採用)は、1975年1月から2月のニューオリンズ録音をイマイチだと思ったポールが依頼して、3月にロスアンゼルスでダビングしています。前述の通り、日本でも大ヒットしていて、毎日ラジオでかかっていました。B面の「LOVE IN SONG」は、1974年11月のロンドンでのレコーディングなので、ポール&リンダに、デニー・レイン、ジミー・マカロック、そしてジェフ・ブリトンの「第4期ウイングス」で、アルバム「VENUS AND MARS」の最初のレコーディング曲でした。こちらも、シングルはアルバムとは別ミックスです。いち早くアップルから離れた此のシングルは、「THE 7‘’ SINGLES BOX」には15枚目で、オーストラリア盤のピクチャー・スリーヴ(英・米・日も共通)で復刻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする