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2024年04月08日

「ポールの道」#244「THE 7‘’ SINGLES BOX」#10「HELEN WHEELS / COUNTRY DREAMER」

バンド・オン・ザ・ラン


1973年5月4日(英国)・同年4月30日(米国)・同年6月20日(日本)にアップルからリリースされたポール・マッカートニー&ウイングスの2作目のアルバム「RED ROSE SPEEDWAY」は、先行シングル「MY LOVE」の効果もあり、全英5位・全米首位!と大ヒットしました。ところが、ポールは早くも次のアルバムのレコーディングを開始しようとして、なんと、ナイジェリアのラゴスでのレコーディングを考えてしまいます。ところが、ポールがラゴス行きを考えた頃に、リード・ギタリストのヘンリー・マカロックはポールと口論になってスタジオから出てゆき、2度と戻って来ませんでした。まるでビートルズの「THE GET BACK SESSIONS」でのジョージ・ハリスン脱退の様で、ポールは何も学んでいません。そして、ドラマーのデニー・シーウェルもアフリカには行きたくないと云い、「第2期ウイングス」は脆くも崩れて、ポール&リンダとデニー・レインの3人になってしまったのです。しかし、ポールはソノ3人だけで「ポール・マッカートニー&ウイングス」を名乗り「第3期ウイングス」としてラゴスでのレコーディングを敢行して、ソレがアルバム「BAND ON THE RUN」となるのでした。

1973年8月から10月にかけて行われたアルバム「BAND ON THE RUN」のセッションから、同年10月26日(英国)・同年11月12日(米国)・同年12月20日(日本)に先行シングルとしてアップルからリリースされたのが「HELEN WHEELS(愛しのヘレン)/ COUNTRY DREAMER(カントリー・ドリーマー)」です。A面の「HELEN WHEELS」がアルバム「BAND ON THE RUN」のセッションからで、B面の「COUNTRY DREAMER」は前作アルバム「RED ROSE SPEEDWAY」の2枚組案から弾かれたアウトテイクです。ポールとしては、コレも両面共にアルバムには未収録の予定でしたが、米国では「HELEN WHEELS」を強引にアルバム「BAND ON THE RUN」に収録しています。「HELEN WHEELS」は、全英12位・全米10位で、其の後に爆発的な大ヒットとなるアルバム「BAND ON THE RUN」絡みの曲としては低い成績でした。ポールの愛車・ヘレンを歌った此の曲は、リンダのお気に入りだったからシングルにしたらしく、基本的には1コードのみで成り立っているブギ調の曲にドライヴの様子が歌われています。作詞作曲は、例によって「ポール&リンダ・マッカートニー」です。ちなみに、シングル80枚組を9枚組CDにしたブートレグでは、此のシングルから2枚目となっています。

A面の「HELEN WHEELS」のレコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(リード・ヴォーカル、リードギター、ベースギター、ドラムス)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル、キーボード)、デニー・レイン(バッキング・ヴォーカル、ギター)の3人による「第3期ウイングス」で、アルバム「BAND ON THE RUN」同様にポールのドラムスとデニー・レインのギターから始めて、音を重ねてレコーディングした楽曲です。ギタリストを引き抜かれそうになった事もあるカーペンターズのリチャード・カーペンターが、当時のインタビューで「HELEN WHEELS」も聴きたくて米盤を買ったけれど、カッティングが悪くて失敗したと語っていて、そう云う話は初めてだったので、そんなに違うものなのかと思いました。B面の「COUNTRY DREAMER」はアルバム「RED ROSE SPEEDWAY」のセッション音源なので、ポール・マッカートニー(リード・ヴォーカル、アコースティック・ギター、ピアノ、パーカッション)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、デニー・レイン(ベースギター、バッキング・ヴォーカル)、ヘンリー・マカロック(スライドギター)、デニー・シーウェル(ドラムス)の「第2期ウイングス」による演奏で、「第2期ウイングス」としては最後の公式盤レコーディング曲となっております。

ソノ「COUNTRY DREAMER」は、ウイングス盤がリリースされる前に日本の「ブラウン・ライス」と云うグループがデビュー・シングルとして1973年9月に英語版を米国で、同年12月には阿久悠さんの日本語詞で日本でリリースされていて、ポールが書き下ろしたと云われていました。しかし、アルバム「RED ROSE SPEEDWAY」のセッション音源なので、ウイングスは1972年には既にレコーディングしていたので、ポールが書き下ろしたと云うのは些か怪しい話です。タイトル通りにカントリー調の楽曲で、これまた如何にも「B面曲」なのが、ウイングス流です。両面共に、英国や日本ではアルバム未収録曲でしたが、現在ではアルバム「BAND ON THE RUN」の「アーカイヴ・コレクション」などで聴けますし、記憶も新しい今年(2024年)にリリースされたアルバム「BAND ON THE RUN」の50周年記念盤には、米国盤仕様なので「HELEN WHEELS」が本編に加わっています。あたくしが最初に買ったのは米国盤だったのですが、其の後のリイシューではずっと外されていたので、今では「HELEN WHEELS」が収録されている方が違和感があります。「THE 7‘’ SINGLES BOX」には10枚目で、スペイン盤のピクチャー・スリーヴ付きで復刻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする