1971年2月19日にリリースしたシングル「ANOTHER DAY」の大ヒットを受けて、ポール・マッカートニーは1971年5月21日にポール&リンダ・マッカートニー名義のアルバム「RAM」をアップル/EMIからリリースしました。全英首位・全米で2位まで上がったアルバム「RAM」は、先行シングル「ANOTHER DAY / OH WOMAN, OH WHY」は未収録で、ポールはアルバムのトータルな構成を考慮してシングル・カットする予定はありませんでした。しかしながら、米国キャピトルの要請もあって、1971年8月2日に「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY / TOO MANY PEOPLE」をリリースする事となりました。結果的にA面の「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY(アンクル・アルバート〜ハルセイ提督)」は米国で首位を獲得して、アルバム「RAM」もバカな評論家の酷評とは反してロングセラーとなったのです。現在ではポールの最高傑作とまで云われるアルバム「RAM」は、リリース当時には信じられない様な低評価で、リンゴ・スターにまでバカにされていたのです。「ローリング・ストーン」誌は「変質した60年代ロックが生んだ、これまでで最低のアルバム」などと酷評したのに、現在ではチャッカリと「歴代最高のアルバム500選」に選んでいるのです。
さて、そう云う流れで「THE 7'' SINGLES」の2枚目は「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY / TOO MANY PEOPLE」なのですが、コレがまた、当時のプロモーション盤を復刻したもので、両面共にモノラル・ヴァージョンでの収録となっております。ピクチャー・スリーヴはなくて、アップルの黒い内袋に入っています。アルバム「RAM」のモノラル・ミックス盤は、現在では2012年にリリースされた「アーカイヴ・コレクション」に収録されたので全編を聴く事が出来ますが、ラジオでのオンエア用にステレオ・ミックスとは別にモノラル・ミックスされているので、多くのミックス違いが楽しめます。作詞作曲は、A面の「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」がポール&リンダ・マッカートニー作で、B面の「TOO MANY PEOPLE」がポールの単独作と云う事になっていて、アルバムではA面1曲目だった「TOO MANY PEOPLE」は、ジョン・レノンに対して歌った「SONG WAR」のひとつです。
レコーディング・メンバーは両面共に、ポール・マッカートニー(リード・ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル、アコースティック・ギター、ベースギター、ピアノ)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、ヒュー・マクラッケン(アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター)、デニー・シーウェル(ドラムス、パーカッション、シェーカー、カウベル)で、A面ではサー・ジョージ・マーティンが編曲・指揮してニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラがストリングスを担当していて、マーヴィン・スタム(フリューゲルホルン)、メル・デイヴィス(ブラス)、レイ・クリサラ(ブラス)、スヌーキー・ヤング(ブラス)、デヴィッド・ナディエン(ヴァイオリン)、ポール・ビーバー(シンセサイザー)も参加しています。A面の2曲をメドレーにした楽曲は、アルバム「RAM」のA面の核となっていて、サー・ジョージ・マーティンがオーケストラの編曲をしているので、云ってみればビートルズのアルバム「ABBEY ROAD」の続編なのです。
そんな中でも、ひとつのハイライトである「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」を、米国キャピトルが惜しげもなくシングル・カットしたのですから、ポールとしては次の「SMILE AWAY」も含めて3曲でのメドレーとして配置したので、面白くなかったかもしれませんが、結果オーライでビートルズ解散後の初の全米首位を獲得したので、文句も云えませんわなあ。前述の通り、此の曲は「ポール&リンダ・マッカートニー」名義の曲なので、ポールだけではなくリンダも全米首位なんですよ。先を急ぐと、其の後に全米首位を獲得する曲は、全てがポールの単独名義ではありません。サー・ジョージ・マーティン節が爆裂したオーケストラに効果音入りの「UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY」は、後にウイングス名義のベスト盤「WINGS GREATEST」や、ソロ名義の「ALL THE BEST!」の米国盤や、何だかもう分からない名義の「WINGSPAN」や、益々分からない名義の「PURE McCARTNEY」と云ったベスト盤の常連曲となります。
(小島イコ)