
トリビュート盤も、ポール・マッカートニー、ジョン・レノンと来たので、今回はジョージ・ハリスンのカヴァー集を紹介しましょう。ジョージのトリビュート盤と云えば、やはり、以前に紹介した2002年11月29日にロイヤル・アルバート・ホールにて行われた追悼コンサート「CONCERT FOR GEORGE」を収録した2003年リリースのCDとDVD(2012年にBD化)があって、オリヴィアさんとダーニの公認だし、弟分だったエリック・クラプトンが仕切って、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ビリー・プレストン、ジェフ・リン、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、などなど、錚々たる面々がジョージの曲をカヴァーしているので、まあ、決定盤でしょう。それで、同じ2003年にKOCHからリリースされた「SONGS FROM THE MATERIAL WORLD - A Tribute to George Harrison」を取り上げてみます。
内容は、1「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」トッド・ラングレン、2「DEVIL'S RADIO」マスターズ・オブ・リアリティー、3「I, ME, MINE」マーク・フォード、4「GIVE ME LOVE(GIVE ME PEACE ON EARTH)」デイヴ・デイヴィス(キンクス)、5「HERE COMES THE SUN」ジョン・エントウィッスル(THE WHO)、6「WITHIN YOU, WITHOUT YOU」ビッグ・ヘッド・トッド&ザ・モンスターズ、7「SAVOY TRUFFLE」ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツ、8「I WANT TO TELL YOU」スミザリーンズ、9「OLD BROWN SHOE」レスリー・ウエスト、10「TAXMAN」ビル・ワイマンズ・リズム・キングス(元・ローリング・ストーンズ)、11「IT'S ALL TOO MUCH」ウェイン・クレイマー(元・MC5)、12「ISN'T IT A PITY」ジェイ・ベネット、エドワード・バーク(元・ウィルコ)の、全12曲入りです。
所謂ひとつの追悼盤なのですが、THE WHOのジョン・エントウィッスルがコレに参加した直後に急死(ホテルにコール・ガールを二人呼んでドラッグでキメてヤッていて死亡)しています。トッド・ラングレンの「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は、ベースとドラム以外は全てトッドで、お得意の「完全コピー」に近い出来栄えです。ビートルズのオリジナルでのエリック・クラプトンによるギターも完コピしていて、オリジナルではフェイドアウトするところをドラマティックに盛り上げていて、まあ、トッドは、以前にも完コピしたり、ラトルズみたいなアルバムを出したり、リンゴのオールスター・バンドに参加したり、トリビュート・バンドにも参加しているので、ビートルズが大好きなんでしょう。ソレで、生前のジョン・レノンと喧嘩(トッドが曲で攻撃したのに、ジョンはサラリとかわした)した筋金入りです。
トッドの様に1960年代からジョージやビートルズと関わりがある面々を見ると、キンクスのデイヴ・デイヴィスや、THE WHOのジョン・エントウィッスルや、元・ローリング・ストーンズのビル・ワイマンの様に、主役ではないサイドマンの参加が目立ちます。キース・リチャーズも「立場が同じだったから、俺とジョージはすぐに仲良くなった」と云っていましたが、それぞれ「レノン=マッカートニー」の陰に隠れていたジョージに対して、他人事ではないシンパシーを感じていたのでしょう。ビートルズ・ナンバーが9曲で、ソロが3曲と、ビートルズ時代の曲が圧倒的に多いものの、その内容は「I, ME, MINE」や「WITHIN YOU, WITHOUT YOU」や「SAVOY TRUFFLE」や「I WANT TO TELL YOU」や「OLD BROWN SHOE」や「TAXMAN」や「IT'S ALL TOO MUCH」と云ったレアな曲のオンパレードとなっていて、ジョージへの愛情に溢れた好カヴァー集です。
(小島イコ)