2018年9月7日に、ポール・マッカートニーは、ソロとしては17作目で、ポール&リンダやウイングスを含めて25作目のアルバム「EGYPT STATION」を、再び移籍した古巣のMPL/キャピトルからリリースしました。前作である2013年リリースのアルバム「NEW」から、実に5年ぶりとなる新作ロック・アルバムでしたが、勿論、ソノ5年間にポールは何もやっていなかったわけではありません。2014年にはアルバム「NEW」の「コレクターズ・エディション」や、配信シングル「HOPE FOR THE FUTURE」をリリースしていますし、2014年には、カニエ・ウエストと曲作共演作「ONLY ONE」を、2015年にはカニエ・ウエストとリアーナと共作共演作「FOURFIVESECONDS」を、更にカニエ・ウエストとセオフィラス・ロンドンとアラン・キングダムとの共作共演作「ALL DAY」をリリースしていて、それぞれヒットしていて、特に「FOURFIVESECONDS」は全英3位・全米4位の大ヒット曲となり、ポールはソロのライヴでも披露しています。2016年には2枚組全39曲入りと4枚組全67曲入りのベスト盤「PURE McCARTNEY」をリリースしていて、2017年にはアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」の「アーカイヴ・コレクション」をリリースしています。何より、ポールはずっと世界ツアーも行っていました。
2017年には本隊であるビートルズのアルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」の50周年記念盤がリリースされていて、ポールも関わっているので、自身がかつて発表した大傑作アルバムに逆に刺激されて、此のアルバム「EGYPT STATION」を制作したのだそうです。内容は、1「OPENING STATION」、2「I DON'T KNOW」、3「COME ON TO ME」、4「HAPPY WITH YOU」、5「WHO CARES」、6「FUH YOU」、7「CONFIDANTE」、8「PEOPLE WANT PEACE」、9「HAND IN HAND」、10「DOMINOES」、11「BACK IN BRAZIL」、12「DO IT NOW」、13「CAESAR ROCK」、14「DESPITE REPEATED WARMINGS」、15「STATION U」、16「HUNT YOU DOWN / NACKED / C-LINK」の、全16曲入りですが、日本盤などにはボーナス・トラックとして、17「GET STARTED」、18「NOTHING FOR FREE」の2曲が加わっています。プロデュースは、ポールとグレッグ・カースティンとライアン・テダーとザック・スケルトンで、楽曲は本編の「FUH YOU」とボーナス・トラックの「NOTHING FOR FREE」がポールとライアン・テダーの共作で、他は全てポールのオリジナルです。
演奏は、ポールが、リード・ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル、アコースティック・ギター、キーボード、ベース、パーカッション、ドラムス、エレクトリック・ギター、ハーモニカ、テープ・ループ、と相変わらずのマルチ・プレイヤーぶりを発揮していて、ツアー・バンドなどのチカラも借りていますが、基本的にはポールのワンマン・レコーディングが元になっています。ジャケットの絵はポールが1988年に描いたもので、紙ジャケットでCDサイズに折りたたんであって、蛇腹になっているのを広げると横幅が6倍サイズで長い絵の全体が観れる様になっています。76歳となったポールは流石に声の衰えが感じられますし、前作アルバム「NEW」から5年のインターバルがあった為に、グッと声が出なくなってしまったとも思えます。が、しかし、前述の様にビートルズのアルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」に影響を受けたとポールが公言した通りに、トータル・アルバムとしての完成度はとても高いアルバムで、ポールの新作が求められていた事も、全米首位!・全英3位・日本6位と云う成績にも表れています。日本の6位と云うのはオリコン総合チャートで、オリコン洋楽チャートでは首位!でした。
アルバム「NEW」からの2013年、2014年(ポールの急病で中止)、2015年、2017年、2018年と、コノ頃のポールは何度も来日公演もしてくれました。ところが、ところがですよ、2019年5月17日になって「エクスプロラーズ・エディション」がリリースされたのです。CD2枚組で、CD1はアルバム「EGYPT STATION」全16曲入りで、CD2が、1「GET STARTED」、2「NOTHING FOR FREE」、3「FRANK SINATRA'S PARTY」、4「SIXTYSECOND STREET」、5「WHO CARES(Full Length)」、6「GET ENOUGH」、7「COME ON TO ME(Live At Abbey Road Studios)、8「FUH YOU(Live At The Cavern Club)」、9「CONFIDANTE(Live at LIPA)、10「WHO CARES(Live At Grand Central Station)」の、全10曲入りなのです。ジャケットも黄色と青空が基調ではなく、赤く夕暮れを思わせる絵に変更されています。実は、2019年5月10日には鞄入りの「トラベラーズ・エディション・ボックス・セット」と云う名の「LP3枚組」に「1CD」に「1カセットテープ」に「1USB」からなる高額商品(後のナイアガラの箱の原型か?)も出ていて、ポールとしてはソレの普及盤として「エクスプロラーズ・エディション」もリリースしたのでしょう。しかしながら、結局はファンが2度買い3度買いしなければならないのです。ポールはこう云う事を、よくやります。
(小島イコ)