2017年9月15日に、リンゴ・スターは19作目(リンゴ的には17作目)のソロ・スタジオ・アルバム「GIVE MORE LOVE」を、ユニバーサル・ミュージックからリリースしました。内容は、通常盤が、1「WE’RE ON THE ROAD AGAIN」、2「LAUGHABLE」、3「SHOW ME THE WAY」、4「SPEED OF SOUND」、5「STANDING STILL」、6「KING OF THE KINGDOM」、7「ELECTRICITY」、8「SO WRONG FOR SO LONG」、9「SHAKE IT UP」、10「GIVE MORE LOVE」の、全10曲入りで、38分16秒です。そして「デラックス・エディション」には、11「BACK OFF BOOGALOO」(1972)、12「DON'T PASS ME BY」(ビートルズ 1968)、13「YOU CAN'T FIGHT LIGHTNING」(1981)、14「PHOTOGRAPH」(1973)の、旧作4曲の再演ヴァージョンがボーナス・トラックとして加わった52分45秒となっております。「BACK OFF BOOGALOO」は2度目の再演だし、「YOU CAN'T FIGHT LIGHTNING」は、元々はタイトル曲になり損ねた「STOP AND SMELL THE ROSES」の時のボツ曲でした。「SHOW ME THE WAY」はアルバムに参加しているピーター・フランプトンの大ヒット曲とは同名異曲だし、「SPEED OF SOUND」もウイングスとは何も関係がない楽曲です。
盟友・サー・ポール・マッカートニーが「WE’RE ON THE ROAD AGAIN」でベースとバッキング・ヴォーカルで、「SHOW ME THE WAY」でベースで参加している他には、お馴染みの義弟・ジョー・ウォルシュ、デイヴ・スチュワート、スティーヴ・ルカサー、ピーター・フランプトン、エドガー・ウィンター、ティモシー・B・シュミット、ジェフ・リン、ヴァン・ダイク・パークス、リチャード・マークスなど、当時の第12期オールスター・バンドの面々が、リンゴと共作して演奏にも参加していて、ほとんどがロサンゼルスのリンゴ所有のゲストハウスのスタジオでレコーディングされていて、プロデュースはリンゴ自身が手掛けています。ボーナス・トラックの内「DON'T PASS ME BY」と「PHOTOGRAPH」はヴァンダヴィアーと、「YOU CAN'T FIGHT LIGHTNING」はアルバータ・クロスと、それぞれ共演していて、「BACK OFF BOOGALOO」にはジェフ・リンとジョー・ウォルシュがオリジナル・デモにギターをダビングしていて、単なる再演ではない前向きなセルフ・カヴァーとなっております。しかしながら、いつもの事ですが、ジャケットはもう少し何とかならなかったのでしょうか。それから、此のアルバムからは4曲もシングル・カットされていますが、そんなにニーズはあるのでしょうか。
本隊であるビートルズのリリースを気にしながら、新作アルバムを制作してもバッティングを避けながらリリースしているポールとは違って、リンゴは呑気にマイ・ペースで新作を出して「懐メロ・ショー」のオールスター・バンドでのライヴが出来るのですから、気楽なもんだし、やはり「売り」となるポールが参加するのも毎度お馴染みになっております。2017年と云うと、本隊であるビートルズのアルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」の50周年記念盤が出ていて、それから2024年の現在まで、ほぼ毎年ビートルズのリイシュー盤がリリースされていて、ソレを避けながら新作アルバムをリリースするのは、どんなに「アーカイヴ・コレクション」で旧作のリマスター盤を出したり、クラシック・アルバムやジャズ・スタンダード・カヴァー・アルバムなどを挟んでも、もはや不可能なのです。故に、ポールは2013年リリースのアルバム「NEW」の次の新作ロック・アルバムは5年後の2018年リリースの「EGYPT STATION」まで待たなければなかったし、コロナ禍でロックダウン中に自宅スタジオで一人でレコーディングした2020年の「McCARTNEY V」をリリースしたりと、大いに気を遣っているのです。何故かと云うとですね、リンゴのソロ・アルバムは本隊であるビートルズのアルバムみたいに売れないから邪魔しないけれど、ポールの新作は売れるから邪魔なのです。
(小島イコ)