2009年9月9日にビートルズの全アルバムがリマスターされて、大きな話題となった頃、ポール・マッカートニーはツアーを続けていました。それで、2009年7月17日、18日、21日に行われたニューヨークのシティ・フィールド公演を収めたCD2枚+DVD1枚のライヴ盤「GOOD EVENING NEW YORK CITY」通常盤と、ソレにもう1枚DVDを加えた「デラックス・エディション」を、2009年11月17日にMPL/ヒア・ミュージックからリリースしました。ニューヨーク・メッツの本拠地となったシティ・フィールドで公演をしたのはポールが初めてで、1965年にビートルズがライヴをやったシェイ・スタジアムに替わる球場として建設されていて、シェイ・スタジアムでの最後の公演は2008年7月17日と18日にビリー・ジョエルが行っていて、7月18日にはゲストでポールも出演しているので、此の公演にはビリー・ジョエルがゲスト出演しています。ポールと一緒にいると、只のファンになっちゃっているビリー・ジョエルが観れます。
内容は、CD1が、1「DRIVE MY CAR」、2「JET」、3「ONLY MAMA KNOWS」、4「FLAMING PIE」、5「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」、6「LET ME ROLL IT」、7「HIGHWAY」、8「THE LONG AND WINDING ROAD」、9「MY LOVE」、10「BLACKBIRD」、11「HERE TODAY」、12「DANCE TONIGHT」、13「CALICO SKIES」、14「MRS VANDEBILT」、15「ELEANOR RIGBY」、16「SING THE CHANGES」、17「BAND ON THE RUN」で、CD2が、1「BACK IN THE U.S.S.R.」、2「I'M DOWN」、3「SOMETHING」、4「I'VE GOT A FEELING」、5「PAPERBACK WRITER」、6「A DAY IN THE LIFE / GIVE PEACE A CHANCE」、7「LET IT BE」、8「LIVE AND LET DIE」、9「HEY JUDE」、10「DAY TRIPPER」、11「LADY MADONNA」、12「I SAW HER STANDING THERE」、13「YESTERDAY」、14「HELTER SKELTER」、15「GET BACK」、16「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND / THE END」の、メドレーも分ければ全35曲入りです。
DVDには其の全35曲の全てが映像版で収録されていて、デラックス・エディションにはもう1枚DVDが付いていて、米CBSテレビのトーク番組「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」用に行ったエド・サリヴァン・シアターでの2009年7月15日のライヴから、1「GET BACK」、2「SING THE CHANGES」、3「COMING UP」、4「BAND ON THE RUN」、5「LET ME ROLL IT」、6「HELTER SKELTER」、7「BACK IN THE U.S.S.R.」と、8「オーディエンス・ドキュメンタリー」と、9「I'M DOWN」のフル・ヴァージョン(本編では1965年のビートルズによるライヴ映像とシンクロさせている)を収録しています。本編はビートルズ・ナンバーがジョージ・ハリスン作の「SOMETHING」も加えて21曲!、ウイングスが6曲、ポールのソロが5曲、「THE FIREMAN」が2曲、プラスティック・オノ・バンドのカヴァーが1曲と、ビートルズ・ナンバーの大盤振る舞いとなっております。其の辺は、ビートルズのリマスター盤のリリースと足並みを揃えているのでしょう。ポールもウイングス時代から数えると6作目のライヴ盤ですが、いつにも増してビートルズ・ナンバーが多いのも特徴です。6作とは云え、リンゴ・スターは12作もライヴ盤を乱発しているのですから、ポールの実績からしたならば少ないのです。
でもですね、2009年9月9日のビートルズのリマスター盤のリリースから僅か2か月後にライヴ盤とは云え、ここまでビートルズ・ナンバーが満載の「新作アルバム」をリリース出来たのは、当時のポールが「EMI」から離れて「ヒア・ミュージック」所属となっていたからでもあるのでしょう。もう「ビートルズで盛り上がっている時に、ポールのソロなんていらないんだよ」と云う人が周りにはいなくなったのです。いや、ポールは逆に「ビートルズのプロモーション活動」で、こんなにも定番曲満載のライヴをやっているとも云えます。それで、バリバリの現役で自分が書いたビートルズ・ナンバーの普遍性をライヴ盤で証明しているのです。基本的にはポールが書いたビートルズ・ナンバーを演奏していますが、クレジットは全てが「レノン=マッカートニー」と大人の対応になっているし、ジョージの「SOMETHING」や、ジョンの「DAY TRIPPER」と「GIVE PEACE A CHANCE」も取り上げていて、特に「DAY TRIPPER」はカッコイイったらありゃしません。60代後半で70歳近いお爺さんが演奏して歌っているとは思えない此の時のライヴは、ヴォーカリストとしてのポールを記録した最後のライヴ作品だったと思います。全英28位・全米16位と、ライヴ盤としては充分なヒット作です。
(小島イコ)