2007年に、44年間も在籍していた「EMI」から「スターバックス・エンターテイメント」と「コンコード・ミュージック・グループ」を資本とする「ヒア・ミュージック」へ移籍したポール・マッカートニーは、同年6月4日(米国・英国)・6月6日(日本)に、ウイングスも含めた22作目のスタジオ・アルバム「MEMORY ALMOST FULL(追憶の彼方に〜メモリー・オールモスト・フル)」をMPL/ヒア・ミュージックからリリースしました。プロデュースは前々作「DRIVING RAIN」でも組んだデヴィッド・カーンで、ツアー・バンドと組んだ楽曲と、ポールのワンマン・レコーディングを合わせた構成にしていて、つまりは前々作「DRIVING RAIN」と前作「CHAOS AND CREATION IN THE BACKYARD」を合わせた様なアルバムを意図して制作されています。当時のポールは再婚した悪妻・ヘザー・ミルズとの離婚で揉めていたので、タイトルの「MEMORY ALMOST FULL」が「FOR MY SOULMATE L.L.M.(我が魂の伴侶・リンダ・ルイーズ・マッカートニーに捧ぐ)」のアナグラムではないかと話題になりました。
内容は、1「DANCE TONIGHT」、2「EVER PRESENT PAST」、3「SEE YOUR SUNSHINE」、4「ONLY MAMA KNOWS」、5「YOU TELL ME」、6「MY BELLAMY」、7「GRATITUDE」、8「VINTAGE CLOTHES」、9「THAT WAS ME」、10「FEET IN THE CLOUDS」、11「HOUSE OF WAX」、12「THE END OF THE END」、13「NOD YOUR HEAD」の、全13曲入りで、日本盤には、14「WHY SO BLUE」がボーナス・トラックとして収録された全14曲入りです。ところが、同時に縦長ジャケットでCD2枚組の限定盤もリリースされていて、そちらはCD1が本編13曲入りで、CD2が、1「IN PRIVATE」、2「WHY SO BLUE」、3「222」の3曲に、4「Audio commentary: Paul talks about the music of Memory Almost Full」と題されたポールの25分位のインタビューが収録されています。軽快なヒット曲である「DANCE TONIGHT」や、絶頂期のウイングスみたいな「ONLY MAMA KNOWS」や、後半のお得意のメドレー形式など、ポールらしさが爆裂している名盤だと思います。
更に、2007年11月6日になって、ピンク・ジャケットのCDとDVDの2枚組「デラックス・エディション」もリリースされていて、CDには本編13曲に限定盤でのアルバム未収録3曲を加えた全16曲入りで、DVDには2007年6月7日のロンドンのジ・エレクトリック・ボールルームでのライヴから、1「DRIVE MY CAR」、2「DANCE TONIGHT」、3「HOUSE OF WAX」、4「NOD YOUR HEAD」、5「ONLY MAMA KNOWS」の5曲と、「DANCE TONIGHT」と「EVER PRESENT PAST」のMV2曲を加えた7曲が収録されています。そして、配信限定で「DANCE TONIGHT」のアコースティック・ヴァージョンもリリースされました。シングル・カットは第1弾が「DANCE TONIGHT」で、米国では配信限定で、英国では両面が同じ「DANCE TONIGHT」で、第2弾「EVER PRESENT PAST」には、DVDでのライヴ音源から「ONLY MAMA KNOWS」と「DANCE TONIGHT」の3曲入りと、同じくDVDのライヴ音源から「HOUSE OF WAX」が収録されたものがあります。
そして、2007年11月13日にはライヴ盤の「AMOEBA'S SECRET」が12インチ限定でリリースされていて、こちらは2007年6月27日にハリウッドのアメーバ・ミュージック・ホールでのシークレット・ライヴから、1「DRIVE MY CAR」、2「C MOON」、3「THAT WAS ME」、4「I SAW HER STANDING THERE」の4曲入りで、2009年1月27日になってからCDと配信でも買える様になりましたが、たったの4曲では何とも困ったちゃんです。コレがブートレグだと、1「DRIVE MY CAR」、2「ONLY MAMA KNOWS」、3「DANCE TONIGHT」、4「C MOON」、5「THAT WAS ME」、6「BLACKBIRD」、7「HERE TODAY」、8「BACK IN THE U.S.S.R.」、9「NOD YOUR HEAD」、10「HOUSE OF WAX」、11「GET BACK」、12「HEY JUDE」、13「LADY MADONNA」、14「I SAW HER STANDING THERE」と全14曲入りになっています。
それで、2010年1月17日に其の全14曲入りでのライヴ・アルバム「LIVE IN LOS ANGELES」が、更に2019年7月12日になってから全21曲入り(上記14曲に「THE LONG AND WINDING ROAD」、「I'LL FOLLOW THE SUN」、「CALICO SKIES」、「I'VE GOT A FEELING」、「MATCHBOX」、「BABY FACE」、「LET IT BE」の7曲を追加)のライヴ・アルバム「AMOEBA GIG」が、公式盤が出ています。アルバム「MEMORY ALMOST FULL」は、スターバックスの店頭プロモーションもあって、全英5位・全米3位とヒットしていますが、前述の通り販売形態が色々とあり、2度買い3度買いさせられました。ポールは、こう云う事を、よくやります。
(小島イコ)