2006年11月15日(日本)・11月20日(英国)・11月21日(米国)に、ビートルズ名義のアルバム「LOVE」が、アップルからリリースされました。コレはですね、生前にジョージ・ハリスンの提案で始まった企画で、シルク・ドゥ・ソレイユの公演「LOVE」用に、サー・ジョージ・マーティンと息子のジャイルズ・マーティンがプロデュースした音源をCD化した作品です。
内容は、1「BECAUSE」、2「GET BACK」、3「GLASS ONION」、4「ELEANOR RIGBY JULIA(TRANSITION)」、5「I AM THE WALRUS」、6「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、7「DRIVE MY CAR / THE WORD / WHAT YOU'RE DOING」、8「GNIK NUS」、9「SOMETHING BLUE JAY WAY(TRANSITION)」、10「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE! / I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY) / HELTER SKELTER」、11「HELP!」、12「BLACKBIRD / YESTERDAY」、13「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、14「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」、15「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、16「OCTOPUS'S GARDEN」、17「LADY MADONNA」、18「HERE COMES THE SUN THE INNER LIGHT(TRANSITION)」、19「COME TOGETHER / DEAR PRUDENCE / CRY BABY CRY(TRANSITION)」、20「REVOLUTION」、21「BACK IN THE U.S.S.R.」、22「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、23「A DAY IN THE LIFE」、24「HEY JUDE」、25「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND(REPRISE)」、26「ALL YOU NEED IS LOVE」の、全26曲入りです。
サラッと曲目だけを見ると、ビートルズの既発曲を並べただけと思われますが、実際には公式213曲から130曲もの音源をリミックスしていて、所謂ひとつのマッシュアップした音源なのです。最初はジャイルズ・マーティンが「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」(「TOMORROW NEVER KNOWS」のベーシック・トラックに「WITHIN YOU WITHOUT YOU」の歌を重ねた音源)を制作して、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターに聴かせて絶賛されて、ヨーコさんとオリヴィアさんの許可も得て、全編を制作しました。2016年に亡くなったサー・ジョージ・マーティンにとっては遺作となりましたが、既にサー・ジョージ・マーティンは1998年のアルバム「IN MY LIFE」で引退を表明していて、2005年リリースのポール・マッカートニーのソロ・アルバム「CHAOS AND CREATION IN THE BACKYARD」のプロデュースを辞退していました。故に、コレは息子のジャイルズを後継者とする為に、例外的に共同プロデュースしていて、云わば、ビートルズ音源の番人の継承式と云ったところでしょう。
お馴染みの楽曲が、緻密にリミックスされていて、前述の「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」の様に基本的には二つの別の曲を融合させた楽曲や、「GNIK NUS」の様に「SUN KING」のヴォーカルを逆回転させた楽曲や、「GET BACK」の様にイントロは「A HARD DAY'S NIGHT」で始まり、「THE END」のドラムとギター、「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND(REPRISE)」のパーカッション、「A DAY IN THE LIFE」のオーケストラなどが加えられた複合技の楽曲など、元ネタ探しでも楽しめるマッシュアップ盤となっております。更に、後半部分がモノラル・ミックス時にBBCで放送されていた「リア王」をそのまんま挿入していて、ステレオ・ミックスでも後半はモノラル・ミックスしか存在しなかった「I AM THE WALRUS」が、全編に渡ってステレオ・ミックスされていたりして、つまりはミックス前の音源まで遡ってリミックスし直しているのです。
CDは78分46秒も詰め込んであり、DVDでは「REVOLUTION」と「BACK IN THE U.S.S.R.」が長く収録されて80分34秒となり、配信のみで「THE FOOL ON THE HILL」と「GIRL」も加えた全28曲で86分38秒のヴァージョンが聴けます。アルバムは、全英3位・全米4位・日本3位と大ヒットしましたが、「コレはビートルズの作品ではないのではないか?」との声もありました。そもそもシルク・ドゥ・ソレイユの公演「LOVE」の為に作った劇中音楽なのに、ビートルズをリミックスした音源のみが発売されて、肝心の「LOVE」の公演が映像作品化されなかったのも変な話ではありました。個人的には購入して最初に聴いた時には面白かったものの、何度か聴いて元ネタ探しなどが終わってしまってからは全く聴く事はなくなってしまいました。マーティン親子が涙ぐましいリミックスをしているのは労作だなと思いますが、まあ、すぐに飽きちゃったんですよ。其の辺が、オリジナルのビートルズ公式音源が未だに飽きないのとは違っています。
(小島イコ)