2005年9月30日に、ジョン・レノンのベスト・アルバム「WORKING CLASS HERO - THE DEFINITIVE LENNON(決定盤ジョン・レノン 〜ワーキング・クラス・ヒーロー)」が、パーロフォン(英国)・キャピトル(米国)からリリースされました。
CD2枚組の内容は、CD1が、1「(JUST LIKE)STARTING OVER」(1980)、2「IMAGINE」(1971)、3「WATCHING THE WHEELS」(1980)、4「JEALOUS GUY」(1971)、5「INSTANT KARMA!(WE ALL SHINE ON)」(1970)、6「STAND BY ME」(1975)、7「WORKING CLASS HERO」(1970)、8「POWER TO THE PEOPLE」(1971)、9「OH MY LOVE」(1971)、10「OH! YOKO」(1971)、11「NOBODY LOVES YOU(WHEN YOU DOWN AND OUT)」(1974)、12「NOBODY TOLD ME」(1980, 1984)、13「BLESS YOU」(1974)、14「COME TOGETHER(LIVE)」(1972, 1986)、15「NEW YORK CITY」(1972)、16「I'M STEPPING OUT」(1980, 1984)、17「YOU ARE HERE」(1973)、18「BORROWED TIME」(1980, 1984)、19「HAPPY XMAS(WAR IS OVER)」(1971)、の全19曲入りです。
CD2は、1「WOMAN」(1980)、2「MIND GAMES」(1973)、3「OUT THE BLUE」(1973)、4「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」(1974)、5「LOVE」(1970)、6「MOTHER」(1970)、7「BEAUTIFUL BOY(DARLING BOY)」(1980)、8「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD」(1972)、9「GOD」(1970)、10「SCARED」(1974)、11「#9 DREAM」(1974)、12「I'M LOSING YOU」(1980, 1998)、13「ISOLATION」(1970)、14「COLD TURKEY」(1969)、15「INTUITION」(1973)、16「GIMME SOME TRUTH」(1971)、17「GIVE PEACE A CHANCE」(1969)、18「REAL LOVE」(1979, 1980, 1998)、19「GROW OLD WITH ME」(1980, 1984, 1998)の、全19曲入りで、2枚組の合計38曲入りです。
1970年のアルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」から5曲、1971年のアルバム「IMAGINE」から5曲、1972年のアルバム「SOMETIME IN NEW YORK CITY」から2曲、1973年のアルバム「MIND GAMES」から4曲、1974年のアルバム「WALLS AND BRIDGES」から5曲、1975年のアルバム「ROCK'N'ROLL」から1曲、1980年のアルバム「DOUBLE FANTASY」から4曲、1984年のアルバム「MILK AND HONEY」から3曲、1986年のアルバム「LIVE IN NEW YORK CITY」から1曲、1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」から3曲、シングルのみの楽曲を5曲で、シングル・カット曲も含めて英米でのシングル曲は全て収録していて、一見して偏りがなく選曲されています。が、邦題に反してコレが「決定盤」とならなかったのは、音源が2000年代に入ってから行われたリミックスだった事と、曲順が年代順ではなかった事が原因です。
ジョンのベスト盤はコレが6作目で、生前にジョン自身が編集した1975年リリースの「SHAVED FISH」と、死後の1982年リリース(CD化は1989年)の「THE JOHN LENNON COLLECTION」と、サントラ盤でビートルズも含めた準ベスト盤と云える1988年リリースの「IMAGINE」と、1990年リリースのCD4枚組の箱「LENNON」と、1997年リリースの「LENNON LEGEND」が既にありました。特に箱で4枚組の「LENNON」は73曲入りで、決定盤と謳うのならば既に其の箱があったわけです。そもそもジョンのソロ・アルバムは「ジョンの魂」と「IMAGINE」と「MIND GAMES」と「WALLS AND BRIDGES」と「ROCK'N'ROLL」の5作しかなく、カヴァー集の「ROCK'N'ROLL」を除けばオリジナル・ソロ・アルバムは4作しかありません。ソレにヨーコさんとの共作が「SOMETIME IN NEW YORK CITY」と「DOUBLE FANTASY」の2作しかなく、死後に出た「MILK AND HONEY」を加えても、全部で8作しかないのです。
それらにライヴ盤を加えても10作なわけで、ヨーコさんとの共作は当然ながら半分はヨーコさんが書いて歌っている楽曲なわけで、ソロ楽曲は100曲足らずと云っても良いわけです。其の中からの選曲ですから、箱の「LENNON」全73曲には、アルバム「ジョンの魂」から全11曲全て、アルバム「IMAGINE」から全10曲中9曲、アルバム「SOMETIME IN NEW YORK CITY」からジョンがソロで歌った全3曲全て、アルバム「MIND GAMES」から全12曲中5曲(コレだけ少ない)、アルバム「WALLS AND BRIDGES」から全12曲中9曲、アルバム「ROCK'N'ROLL」から全13曲中6曲(コレはカヴァー集だから)、アルバム「DOUBLE FANTASY」とアルバム「MILK AND HONEY」からはジョンが歌った全13曲全てが収録されていて、ライヴ音源も含めたほぼ全曲集に近いカタチだったのです。前にも書きましたが、似た様なベスト盤を何度もリリースする位だったなら、箱の「LENNON」をリマスターすれば済む話なのです。此の全38曲では、無理に2枚組分も選ばず1枚で20曲位にした方が良かったし、何とも中途半端です。
ソレからですね、実はジョンのベスト盤は、取り上げているもの以外にも公式盤でリリースされています。1998年には日本限定で「ザ・グレイテスト」と云う名の、一見してパチモンみたいなベスト盤が出ていて、前年である1997年に「LENNON LEGEND」が出たばかりでジャケットの写真も流用しているのですが、青い安っぽい装飾で台無しで、ポールも赤い装飾で出ています。2002年には「INSTANT KARMA:ALL-TIME GREATEST HITS」と云う3枚組全35曲入りがコストコ限定発売されていて、ヒット曲集とカヴァー曲集とライヴ集です。此の「決定盤」が出た2005年には、ジョンとヨーコさんの合同ベスト盤「PEACE, LOVE & TRUTH」が「CCCD」でオーストラリアやアジアで限定発売されて、2007年には何故かポールが移籍したヒア・ミュージックから「REMEMBER」が出ていて、スターバックスで限定発売されていて、苦肉の策で「JOHN LENNON ANTHOLOGY」からも選曲しています。ジョンは40歳の若さで夭折してしまったし、5年間も引退状態だったのでソロ活動は5年位で、ソロの楽曲は100曲もないわけで、何度もベスト盤を出していてもネタがないのです。
更に曲順ですけれど、年代順ではなくバラバラにしちゃっているので、聴いていて違和感があると云うよりも、BGMみたいに聴き流せる曲順になっちゃっています。ジョンはポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンやリンゴ・スターと同じで、確かにビートルズなので、どんな曲順にしても違和感がなく聴けてしまうのですけれど、ジョンの場合は私小説的な楽曲がほとんどなので、年代順でアルバムを聴いてこその感動があると思うんですよ。ミレニアム仕様のリミックスなので、益々其の時代性は薄れていて、まあ、エバーグリーンと云ったならばコレでも良いのでしょうけれど、例えば、何度も云っていますけれど、アルバム「DOUBLE FANTASY」は通して聴け!とおっしゃる評論家の方々は、ジョンの曲だけを切り抜いて、しかもアルバムとは別の曲順で他のアルバムからの曲とごちゃ混ぜにされたコレを聴いて、何と反論するのでしょうか。些かジャケットも怖いコレは決定盤にはなれなかったわけで、僅か5年後には新たなるベスト盤がリリースされるのでした。
(小島イコ)