1987年に5年ぶりのアルバム「CLOUD NINE」をリリースして見事に復活し大ヒットさせたジョージ・ハリスンは、同アルバムから第1弾シングル「GOT MY MIND SET ON YOU」を全米首位・全英2位として、B面には未発表だったアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」で差し替えられた4曲の内の1曲「LAY HIS HEAD」を収録しています。第2弾シングル「WHEN WE WAS FAB」(全米23位・全英25位)のB面も、アルバム未収録の「ZIG ZAG」でした。そして、第3弾シングル「THIS IS LOVE」のB面は、結果的にはアルバムからの「BREATH AWAY FROM HEAVEN」となりましたが、ジョージは大ヒットした余裕からか、当初はとんでもないB面曲をレコーディングしました。其のシングルB面曲として予定されていたのは「HANDLE WITH CARE」で、シングルB面曲なのに、ジョージ・ハリスンとジェフ・リンに加えて、ロイ・オービソンとボブ・ディランとトム・ペティによるレコーディングをして、結局は5人でバンドを結成して、シングルだけではなくアルバムを制作してしまったのです。しかも、それぞれが、ネルソン・ウィルベリー(ジョージ・ハリスン)、オーティス・ウィルベリー(ジェフ・リン)、ラッキー・ウィルベリー(ボブ・ディラン)、レフティ・ウィルベリー(ロイ・オービソン)、チャーリー・T・ジュニア(トム・ペティ)と偽名を使って、バンド名も「トラヴェリング・ウィルベリーズ」として、1988年10月18日にアルバム「TRAVELING WILBURYS VOLUME 1」をワーナーからリリースしてしまったのです。そもそもシングルB面曲の為に集まったにしては豪華過ぎる面々で、ソノ「HANDLE WITH CARE」はトラヴェリング・ウィルベリーズのシングルとしてA面でリリースされて、覆面バンドなのに「正体バレバレ」なミュージック・ヴィデオの効果もあって、全英21位・全米45位とヒットしました。
内容は、1「HANDLE WITH CARE」、2「DIRTY WORLD」、3「RATTLED」、4「LAST NIGHT」、5「NOT ALONE ANY MORE」、6「CONGRATULATIONS」、7「HEADING FOR THE LIGHT」、8「MARGARITA」、9「TWEETER AND MONKEY MAN」、10「END OF THE LINE」の全10曲入りで、「HANDLE WITH CARE」と「END OF THE LINE」と「HEADING FOR THE LIGHT」がシングルになっていて、現行のCDでは未発表だった「MAXINE」と「LIKE A SHIP」の2曲をボーナス・トラックに加えた全12曲入りとなって、後に詳述するアルバム「TRAVELING WILBURYS VOLUME 3」とDVDを加えた「THE TRAVELING WILBURYS COLLECTION」もリリースされています。リード・ヴォーカルを担当している人が中心になって書いたのでしょうから、ネルソンことジョージが歌っている「HANDLE WITH CARE」と「HEADING FOR THE LIGHT」と「END OF THE LINE」の3曲はネルソン(ジョージ)が曲作りでも主導権を握って参加しているのでしょう。「DIRTY WORLD」と「CONGRATULATIONS」と「TWEETER AND MONKEY MAN」はラッキー(ディラン)で、「MARGARITA」はラッキー(ディラン)とオーティス(リン)とチャーリー(ペティ)で、「RATTLED」はオーティス(リン)で、「LAST NIGHT」はチャーリー(ペティ)とレフティ(オービソン)で、「NOT ALONE ANY MORE」はレフティ(オービソン)が歌っていて、レフティはどう聴いてもロイ・オービソンだし、ラッキーもボブ・ディランだとすぐに分かるので、「ジャイアント・マシーン」が「正体バレバレのマスクマン」だった様なものです。アルバムは、全英16位・全米3位とヒットしています。
そして、11月29日はジョージ・ハリスンの命日です。ビートルズの新曲「NOW AND THEN」でギターを弾いているジョージを観ると、22年も前に亡くなったとは思えません。ジョン・レノンのアルバムは聴く時には身構えてしまうのですが、ジョージのアルバムは今でも普通に聴いているんですよ。
(小島イコ)