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2023年11月26日

「ポールの道」#204「THE BEATLES’ CD」

ザ・ビートルズ CDボックス (16枚組セット) CDシングルコレクション コンパクト・ディスク・EP・ボックス・セット


1987年にビートルズは、またしてもトンデモナイ事をやってのけました。1987年2月26日にアルバム「PLEASE PLEASE ME」とアルバム「WITH THE BEATLES」とアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」とアルバム「BEATLES FOR SALE」が、同年4月30日にアルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」とアルバム「REVOLVER」が、同年6月1日にはアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」が、同年8月24日にはアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」とアルバム「YELLOW SUBMARINE」が、同年9月21日には米国編集盤アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」が、同年10月19日にはアルバム「ABBEY ROAD」とアルバム「LET IT BE」が、そして翌1988年3月8日には編集盤アルバム「PAST MASTERS VOLUME ONE」と「PAST MASTERS VOLUME TWO」が、初CD化されたのです。此の英国オリジナル・アルバム12作13枚に、米国編集盤1作1枚と、それらに未収録の楽曲を集めた「PAST MASTERS」2枚の16枚で、ビートルズが公式リリースした213曲がCDで全て揃うのです。が、しかし、サー・ジョージ・マーティンが初期のアルバム「PLEASE PLEASE ME」とアルバム「WITH THE BEATLES」とアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」とアルバム「BEATLES FOR SALE」はモノラルで、アルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」はリミックスしたステレオで、ソレ以後のアルバム「REVOLVER」とアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」と「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」とアルバム「YELLOW SUBMARINE」と米国編集盤アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」とアルバム「ABBEY ROAD」とアルバム「LET IT BE」はステレオでの全世界統一規格としてしまったのです。

シングル盤やEPでしか聴けなかった曲をまとめた編集盤アルバム「PAST MASTERS」の2枚は、モノラルとステレオが混在する内容となり、「LOVE ME DO」の別テイクと、「ACROSS THE UNIVERSE」と「GET BACK」と「LET IT BE」の3曲は別ミックスが聴けますが、公式213曲に4曲を加えた217テイクに統一されて、他のミックス違いなどはなかった事にされたのでした。それでも、ビートルズのCD化は大事件であって、何が凄かったのかと云いますとですね、世の中をレコード盤からCDに変えてしまったのです。日本では1982年からCDが出ていて、大瀧師匠は初CD作20作の内2作も自作アルバムだったので、リマスター作業に悪戦苦闘していたのですが、それでもレコード店にはアナログ盤とカセットテープとCDが混在していました。ところが、ビートルズがCD化されたら、あっと云う間にアナログ盤が店頭から消えてしまい、レコード会社もCDしか発売しなくなって、レコード針の会社が倒産する事態となったのです。2023年の現在では、アナログ盤を見直すと云うか、若い音楽ファンがアナログ盤を買う様になったし、配信の影響もあってCDも売れなくなっておりますが、1987年(アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」のタイトル曲で“It was 20 years ago today”と歌っているので、ソレに合わせたリリースだった)の世界では、ビートルズによってアナログ盤は滅ぼされて、一気に「CDの世界」となったのでした。現在では「もはや、CDの時代も終わった」とも云われておりますが、ビートルズの新作がCD化されずに配信のみとなったならば、ソノ時こそ「CD時代の終焉」となるでしょう。

ソレで、ビートルズの音源は世界統一規格となったのですが、そうなるとアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」まではモノラル盤とステレオ盤が両方出ていてミックス違いも数多くあって、シングル盤も「GET BACK / DON'T LET ME DOWN」まではモノラル盤が主流だったわけで、例えば「THIS BOY」と「YES IT IS」は編集盤「PAST MASTERS」で初めてステレオが公式リリースされたのですが、今度はシングルB面だったのでモノラル音源だった方がレアになったりしたのです。英国盤だけでもミックス違いが多いのに、米国盤では勝手に疑似ステレオにしたりエコーをかけ捲ったりもしていて、世界各国盤で聴けたミックス違いはCDでは聴けない事態となりました。するとですね、CD化が終わった翌年の1989年には英国オリジナル・シングルをまとめてCD化した箱が、1992年にはEP盤をまとめた箱がリリースされて、シングルは基本的にモノラルなので、アルバム「HELP!」以降の曲がモノラルでも聴ける様になりましてですね、EPの方には「MAGICAL MYSTERY TOUR」の英国オリジナルEPがモノラルとステレオの両方が収録されて、1993年に「赤盤」と「青盤」が初CD化されたら、今度は初期音源が初ステレオCD化されちゃって、全世界統一規格とは何だったのか、となるわけです。ソレは兎も角といたしまして、1987年にビートルズが初CD化された事によって恩恵を受けたのは、他ならぬ、ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンとリンゴ・スターの「元・ビートルズ」でしょう。ポールは1980年代中期には「低迷している」と云われていたし、ジョージは「引退状態」だったし、リンゴは「アル中」だったわけで、ソレが3人共に復活するのです。ジョン・レノンが生きていたならば、CDの登場で出てきた高音質ブートレグに飛びついて喜んだでしょうね。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする