1984年10月22日に、ポール・マッカートニーは同名映画のサントラ盤「GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET(ヤア!ブロード・ストリート)」を、MPL/パーロフォン(英国)、MPL/コロムビア(米国)からリリースしました。ポールが脚本を書いて主演した映画は、夢オチのストーリーが陳腐すぎてコケましたが、MTV時代を象徴する映像は、かつてのビートルズの「MAGICAL MYSTERY TOUR」の様な「MV集」として観れば、なかなかどうして、楽しめます。前々作アルバム「TUG OF WAR」と前作アルバム「PIPES OF PEACE」に続いて、サー・ジョージ・マーティンがプロデュースして、ジェフ・エメリックがエンジニアを担当したサントラ盤の方は、全英首位で全米21位とヒットしています。米国での売り上げが徐々に落ちていったのは気になりますが、ビートルズ時代の曲も多くセルフ・カヴァーした内容は、大いに話題になったものです。此のアルバム辺りから、CDも同時発売される様になって、CDの内容は、1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(バラード編)」、2「GOOD DAY SUNSHINE / CORRIDOR MUSIC」、3「YESTERDAY」、4「HERE, THERE, AND EVERYWHERE」、5「WANDERLUST」、6「BALLROOM DANCING」、7「SILLY LOVE SONGS(心のラヴ・ソング) / REPRISE」、8「NOT SUCH A BAD BOY(悲しいバッド・ボーイ)」、9「SO BAD」、10「NO VALUES / NO MORE LONELY NIGHTS(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(バラード/リプライズ))」、11「FOR NO ONE」、12「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM(エリナーの夢)」、13「THE LONG AND WINDING ROAD」、14「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(プレイアウト編))」、15「GOODNIGHT PRINCESS」の全15曲入りで、1993年の「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」では更に、16「NO MORE LONELY NIGHTS(Extended Version)」と、17「NO MORE LONELY NIGHTS(Special Dance Mix)」も加えた全17曲入りです。
コレがアナログ盤だと、「SO BAD」と「GOODNIGHT PRINCESS」2曲が収録されておらず、「GOOD DAY SUNSHINE / CORRIDOR MUSIC」と「WANDERLUST」と「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM」と「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)」の4曲が短縮版になっていますので、もう完全にCDフォーマットを意識したアルバムになっています。演奏には、ポール&リンダ・マッカートニーの他に、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア(ギター)、リンゴ・スター(ドラムス)、エリック・スチュワート(ギター、バッキング・ヴォーカル)、元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ(ベース、キーボード)、デイヴ・エドモンズ(ギター)、クリス・スペディング(ギター)、TOTOのスティーヴ・ルカサー(ギター)、TOTOのジェフ・ポーカロ(ドラムス)などが参加しています。新曲は「NO MORE LONELY NIGHTS」と「NOT SUCH A BAD BOY」と「NO VALUES」の3曲のみで、他はビートルズやウイングスやソロからの再演です。ソノ内にビートルズ・ナンバーが6曲もあって、ウイングスのツアーでも演奏していた「YESTERDAY」と「THE LONG AND WINDING ROAD」は定番ですが、他の4曲「GOOD DAY SUNSHINE」と「HERE, THERE, AND EVERYWHERE」と「ELEANOR RIGBY」と「FOR NO ONE」はアルバム「REVOLVER」からの選曲となっていて、ポールは「ジョンと一緒にホテルで“REVOLVER”を聴いた時に、ジョンは『自分の曲よりもポールの曲が好き』と云ってくれた」なんて自慢話もしているので、自信作なのでしょう。しかしながら、「THE LONG AND WINDING ROAD」にサックスを加えたAORアレンジは酷い出来栄えで、コレじゃあ、フィル・スペクター版を貶す事はできないでしょう。コケた映画のリード曲である「NO MORE LONELY NIGHTS」は、掛け値なしの名曲ですし、リンゴ・スターが頑なにビートルズ・ナンバーではドラムを叩かなかったりする場面なんかは、現在では考えられない事ですが、1980年代にはビートルズの話題はNGだったりしたんですよ。ソレにしても「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」って邦題は「危険がアブナイ」ですなあ。
(小島イコ)