あまりにも衝撃的だったジョン・レノンの死から約3年後の1984年1月19日(米国)、同年1月25日(日本)、同年1月27日(英国)に、ジョン・レノンとヨーコさんの連名のアルバム「MILK AND HONEY」が、ポリドールからリリースされました。内容は、A面が、1「I'M STEPPING OUT」、2「SLEEPLESS NIGHT」、3「I DON'T WANNA FACE IT」、4「DON'T BE SCARED」、5「NOBODY TOLD ME」、6「O' SANITY」で、B面が、1「BORROWED TIME」、2「YOUR HANDS」、3「(FORGIVE ME)MY LITTLE FLOWER PRINCESS」、4「LET ME COUNT THE WAYS」、5「GROW OLD WITH ME」、6「YOU'RE THE ONE」の、全12曲入りです。前作アルバム「DOUBLE FANTASY」と同様にジョンの曲とヨーコさんの曲が交互に収録されていて、ジャケット写真も篠山紀信さんによる前作ジャケットの別カットが使われています。しかしながら、ジョンは1980年12月8日に射殺されてしまったので、ジョンが書いて演奏して歌っている「I'M STEPPING OUT」と「I DON'T WANNA FACE IT」と「NOBODY TOLD ME」と「BORROWED TIME」と「(FORGIVE ME)MY LITTLE FLOWER PRINCESS」と「GROW OLD WITH ME」の6曲は、アルバム「DOUBLE FANTASY」のセッションでのリハーサル音源5曲とホーム・デモ音源1曲で、ヨーコさんの曲はジョンの曲への返歌となってはいるものの、アルバム「DOUBLE FANTASY」用のアウトテイク2曲とホーム・デモ風な音源1曲と此のアルバムの為に書かれた楽曲3曲です。アルバム「DOUBLE FANTASY」は通して聴け!とエラソーに云っていた評論家さんたちでも、こっちはヨーコさんが後出しジャンケンで作ったわけで、通して聴かなきゃダメ!なんて云えないでしょう。
そもそもジョンの楽曲6曲は未完成のリハーサルやデモなんですから、コレをオリジナル・アルバムのひとつとして扱っている事自体が変なのです。そして、前作同様にヨーコさんとの合作になっているのも、あくまでもヨーコさんの意思であって、ジョンが意図していたかどうかは分からないし、ジョンが生きていたならば、この様なリハーサル音源やデモ音源をリリースなどしなかったであろう事は確実です。此のアルバムが出てから既に紹介している1986年リリースの「LIVE IN NEW YORK CITY」と「MENLOVE AVE.」、更にはラジオ番組「LOST LENNON TAPES」から1998年リリースの箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」と云った「未発表音源」がぞくぞくと登場するわけですが、コレもそっちの範疇ではないのでしょうか。確かに「ジョンの新曲」であって、シングル・カットされた「NOBODY TOLD ME」は全米5位・全英6位とヒットして、「BORROWED TIME」も全英32位、「I'M STEPPING OUT」も全米55位・全英88位と、現役バリバリの様な成績で、アルバムも全英首位・全米11位と売れました。それでも、此のアルバムに収録されたジョンの曲は全て未完成状態であって、繰り返しますがジョンが生きていたならば発表されなかった音源です。それにしても良い曲ばかりで、リハーサルやデモならではのジョンのカウントとか演奏を指示する様子なども聴けて、ファンにとっては堪らない未完成音源が並んではおりますし、自宅デモ音源の「GROW OLD WITH ME」には泣かされます。「僕と一緒に歳をとってくれ」と歌うジョン・レノンが既に亡くなっていて、それ故にホーム・デモ音源しか発表できなかったと云う、あまりにも残酷過ぎる結末でした。そして、其のホーム・デモを元にして、後に「FREE AS A BIRD」と「REAL LOVE」が、更には2023年の現在に大ヒット中の「NOW AND THEN」が制作される摩訶不思議な展開となるのでした。
(小島イコ)