1983年10月にリリースされたポール・マッカートニーのアルバム「PIPES OF PEACE」は、1984年には初CD化されていて、1993年8月9日に「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」の一環としてリマスターがCD化されて、本編全11曲にボーナス・トラックとして「TWICE IN A LIFE TIME」と「WE ALL STAND TOGETHER」と「SIMPLE AS THAT」の3曲が加わっています。「TWICE IN A LIFE TIME」は1985年公開の同名映画のテーマ曲で映画のエンディングに使われていて、コノ時が初CD化です。「WE ALL STAND TOGETHER」は、1984年にリリースされたアニメ「ルパートとカエルの歌」の主題歌で、レコーディングはアルバム「TUG OF WAR」よりも前で、コノ曲でポールは久しぶりにサー・ジョージ・マーティンにプロデュースを任せて、ソノ流れでアルバム「TUG OF WAR」やアルバム「PIPES OF PEACE」へと繋がりました。「SIMPLE AS THAT」は1986年にアンチ・ヘロインのチャリティー盤「LIVE IN WORLD」へポールが提供した曲です。そして、2015年10月2日に「アーカイヴ・コレクション」として、前作アルバム「TUG OF WAR」と同時にMPLからリリースされました。2CDの「Special Editon」と、2CDにDVDと本が2冊の箱「Deluxe Edition」が出ていて、日本では2CDを「デラックス・エディション」で、箱を「スーパー・デラックス・エディション」とされています。2CDの内容はどちらも同じで、CD1にはアルバム「PIPES OF PEACE」全11曲の2015年最新リマスターが収録されていて、CD2はボーナス・オーディオとなっています。
CD2の内容は、1「AVERAGE PERSON」DEMO、2「KEEP UNDER COVER」DEMO、3「SWEETEST LITTLE SHOW」DEMO、4「IT'S NOT ON」DEMO、5「SIMPLE AS THAT」DEMO、6「SAY SAY SAY」2015 REMIX、7「ODE TO A KOALA BEAR(コアラへの詩)」、8「TWICE IN A LIFE TIME」、9「CHRISTIAN BOP」の、全9曲入りです。「AVERAGE PERSON」と「KEEP UNDER COVER」と「SWEETEST LITTLE SHOW」の3曲のデモ音源は、ブートレグの「RUDE STUDIO DEMO 1980」や「TUG OF WAR DEMO TRACKS」にも収録されていた音源で、1980年にレコーディングされたものです。しかし、ソノ後の「IT'S NOT ON」は初出音源で、何やらポールが色々な声で歌っている不気味な曲です。「SIMPLE AS THAT」は、前述のチャリティー盤へ提供した曲ですが、メロディーが全く違う「別の曲」です。「SAY SAY SAY」2015 REMIXは、新たに制作された新リミックス音源で、インストゥルメンタル版にボツにしたヴォーカルを乗せています。「ODE TO A KOALA BEAR」は、ソノ元のシングル「SAY SAY SAY」のB面曲で佳曲ですが、初CD化です。「TWICE IN A LIFE TIME」は、前述の映画のテーマ曲で、「CHRISTIAN BOP」は、1987年にフィル・ラモーンのプロデュースでレコーディングしてアルバム丸ごとボツになった時のインストゥルメンタル曲です。DVDには「PIPES OF PEACE」と「SO BAD」と「SAY SAY SAY」のミュージック・ヴィデオと、「HEY HEY」に乗せてのセッション映像(ポールが撮影しているからポールが映っていない)と、レコーディング風景と、「THE MAN」に乗せてポール宅に遊びに来たマイケル・ジャクソンと一緒に乗馬を楽しむ映像が収録されています。
ポールが二役で軍人を演じた「PIPES OF PEACE」と、マイケルと一緒の「SAY SAY SAY」のMVは、どちらも短編映画並みのお金を掛けたであろう出来栄えで有名ですが、ソレで低予算になったのかシンプル過ぎる「SO BAD」のMVですけれど、個人的には素朴過ぎる「SO BAD」のMVが最も好きです。天下無敵のサー・ポール・マッカートニーは、わざわざ他人を演じる必要などなくて、普通に演奏して歌っているだけで良いのです。「SO BAD」のMVにはリンゴ・スターとエリック・スチュワートも出ていて、リンダ・マッカートニーを加えた4人での演奏風景なので、嫌でも「ビートルズ」を連想させます。まあ、二人は本物なのですから、ポールも狙って撮ったのでしょう。そして、ソコに入っていても引けを取らない「エリック・スチュワートがイイ感じ」なのです。箱には例によって本が2冊付いていて、1万5千円でした。音源に関しては、2CDも箱も同じなので、音源だけで良ければ2CDで充分でしょう。さて、お馴染みの「MOONCHILD RECORDS」からの2枚組で千円ブートレグ「PIPES OF PEACE & MORE」にも触れておきましょう。CD1はアルバム「PIPES OF PEACE」本編全11曲に加えて、シングルB面の「ODE TO A KOALA BEAR」、マイケルとのデュエット曲「THE GIRL IS MINE」、「TWICE IN A LIFE TIME」に続いて、デモ音源が加わって23曲入りで、公式盤には未収録のデモ音源(「WE ALL STAND TOGETHER」、「BOIL CRISIS」など)も聴けます。CD2は、デモ音源と「SAY SAY SAY」のヴァージョン違いや、「PIPES OF PEACE」のシングル・ヴァージョンや、「THE GIRL IS MINE」のヴァージョン違いなどの全19曲入りで、合計42曲入りです。マイケル・ジャクソンのCDは買っていないので「THE GIRL IS MINE」が5ヴァージョンも聴けるのは便利(但し、ポールのヴォーカルをラップに変えたヴァージョンは要らない)ですけれど、余り評価していない「SAY SAY SAY」を10ヴァージョンも聴かされるのは食傷気味ですなあ。
(小島イコ)