新装盤の「赤盤」と「青盤」がリリースされたので、ブートレグにも触れておきましょう。「赤盤」と「青盤」は、そもそもブートレグの「ΑΩ」が売れたので、ソノ対抗策として公式リリースされたので、ジャケットのデザインなどは他のブートレグにパクられる事も多いのです。例えば「THE GET BACK SESSIONS」のアップル・スタジオでの音源をまとめた「THE BEATLES / THE RED APPLE(JANUARY 21st-27th, 1969)」と「THE BEATLES / THE BLUE APPLE(JANUARY 28th-31st, 1969)」と云う2枚組2セットとか、ポール・マッカートニーがライヴで披露したビートルズ・ナンバーだけをまとめた「PAUL McCARTNEY PLAY THE BEATLES RED EDITION」と「PAUL McCARTNEY PLAY THE BEATLES BULE EDITION」と云う2枚組2セットなどがありましてですね、「THE GET BACK SESSIONS」の方はジャケットのデザインをマネしているだけですが、ポールのライヴの方はビートルズのリリース順にライヴ音源をまとめているので、ポールによるひとり「赤盤」と「青盤」になっています。そして、「赤盤」と「青盤」をベースにしたブートレグもあって、ソレが「ALTERNATE ALBUM EXPANDED EDITIONS」と「ULTIMATE VIDEO COLLECTION」です。それぞれが、CD2枚組2セットと、DVD2枚組2セットとなっていて、デザインも元ネタの「赤盤」と「青盤」と同じ(写真が微妙に違う)なので、うっかりして公式盤と間違えて買っちゃいそうです。ところで、今回リリースされた「赤盤」と「青盤」は、旧盤と全く同じデザインなので、初心者は収録曲とかしっかりと確認しないと、間違って旧盤を買わされてしまいそうですよね。それから、デミックスによるリミックス盤なので、旧盤のリマスターとは明らかに違っているわけで、これからはリミックス盤がスタンダードになるのでしょうか。
さて、まずは「SUPERSTOCK」からの「THE BEATLES / 1962-1966」「THE BEATLES / 1967-1970」ALTERNATE ALBUM EXPANDED EDITIONSですが、コレがなかなか凝った内容です。リリースが2021年なので、何やら今回の2023年盤の公式リリースを見越していたかの様な感じです。まずは「赤盤」は、CD1に旧「赤盤」の全26曲がそのまんま収録されていて、昔から「赤盤はCD1枚に収まるだろう」を実践しています。しかしながら、ソノ実体は、全てが公式盤とは別テイクや別ミックスとなっていて、例えば「SHE LOVES YOU」はステレオになっていて、ソレだけでひっくり返ったのですが、今回の公式盤ではデミックスによってブートレグ以上のステレオになっていたので、コレマタひっくり返りました。「ALL MY LOVING」はイントロのハイハット入りだったり、「CAN'T BUY ME LOVE」はアウト・テイクだったり、「AND I LOVE HER」はシングル・ヴォーカルだったり、全てが公式盤とは違っています。そして、CD2は「PAST MASTERS STEREO REMIX」となっていて、英国盤のシングル「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」から「PAPERBACK WRITER / RAIN」までのAB面に、EP盤「LONG TALL SALLY」の4曲、ドイツ語盤2曲、「BAD BOY」、更に「YESTERDAY」の全32曲入りで、計58曲入りです。新装盤の「赤盤」は全38曲入りなので、20曲も多くて、CDだったらコレだけ入るんですよ。勿論、シングルA面曲はダブってはいますが、全て別ミックスで、特に2枚目は1962年から1966年までのシングル全曲集なわけで、なかなか、どうして、聴きごたえ充分です。コレを聴くと、新装盤の「赤盤」には、もっとシングルのB面曲も収録して欲しかったと思うし、ライヴの最後の定番曲だった「LONG TALL SALLY」と「I'M DOWN」とか、革新的な「RAIN」とか、何で収録されていないのでしょうね、となりますわなあ。
「青盤」の方は、CD1とCD2に旧盤の全28曲がそのまんまの順番で収録されていますが、全てが別テイクや別ミックスです。「GET BACK」と「DON'T LET ME DOWN」はルーフトップでのライヴ音源で、まあ公式の配信音源から持って来たのでしょうけれど、クリアな音源で感動的です。CD1には「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUBER)」のステレオ完全版と、「CHRISTMAS TIME(IS HERE AGAIN)」と「THE INNER LIGHT」と「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」と「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」が加わった全19曲入りで、CD2には「GET BACK」と「DON'T LET ME DOWN」と「LET IT BE」のシングル・ヴァージョンと「ACROSS THE UNIVERSE」のバード・ヴァージョンと「FREE AS A BIRD」と「REAL LOVE」が加わった全20曲入りで、合計39曲入りです。新装盤の「青盤」は全37曲入りなので、こちらは収録曲数だけ見れば大差ありません。しかし「WITHIN YOU WITHOUT YOU」を入れるなら同じインド志向でも「THE INNER LIGHT」の方が良かったとか、今回の目玉である「NOW AND THEN」が入っているのに同じ手法だった「FREE AS A BIRD」と「REAL LOVE」はどうして入っていないんだろう、とか、やっぱりビートルズはふざけたバンドなのだから「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUBER)」も入れて欲しかったなあ、とか、なりますわなあ。そもそも、ビートルズのベスト盤を作ると云う事自体が「無理難題」なわけでして、どうしたって抜けが出てしまいますので、ビートルズは黙ってステレオ盤の箱とモノラル盤の箱を買えば良いのです。今回の新装盤の「赤盤」と「青盤」の売りは、新曲「NOW AND THEN」と、デミックスによってステレオ化されたリミックス音源が聴ける事なのです。
映像作品のブートレグでは「Sgt.」から2015年に出た「THE BEATLES / 1962-1966」「THE BEATLES / 1967-1970」ULTIMATE VIDEO COLLECTIONが、それぞれ2枚組2セットで、納得がゆく内容です。2015年には公式で「1+」がリリースされていて、ソレはベスト盤「1」のリミックスCDに、DVDもしくはBDの2枚組で、1枚目が「1」の全27曲のMVが、2枚目にはソレ以外の全23曲のMVが、合計50曲のMVが美しい映像に生まれ変わって収録されていました。当然ながらブートレグはソノ上を行かないと相手にされません。ソコで、「赤盤」の方は、DVD1に旧「赤盤」の全26曲のMVに加えて21曲が加えられて、全47曲入りとなり、「ORIGINALS」と云う21曲には、あるだけのMVを全部入れています。故に「PAPERBACK WRITER」と「RAIN」などは何パターンも収録されています。DVD2は63曲ものヴァージョン違いの映像が収録されていて、「赤盤」だけで110曲も入っています。「青盤」もDVD1には旧「青盤」の全28曲と「ORIGINALS」の9曲の全37曲入りで、DVD2には44曲の別ヴァージョン入りの、合計72曲入りで、両方合わせると全182曲もの映像を観る事が出来るのです。公式の「1+」は50曲ですから、3倍以上収録されているわけです。コレはですね、公式の「1+」を持っていて、ソレでももっと観たいとなったなら、オススメしますけれど、公式盤の「1+」でも全部観るのに3時間以上掛かって、ブートレグの方は「赤盤」だけで5時間位で、「青盤」も4時間半位で、合計9時間半位掛かります。そして、おそらく今回の新装盤「赤盤」と「青盤」に対して、ブートレグ業者が黙っているわけがなく、新たなる音源集や映像集が出るであろう事は確実です。まあ、2023年の現在でも、ソレだけ「ビートルズは売れる」のです。
(小島イコ)