ジョン・レノンとも、ポール・マッカートニーとも、共演した事がある稀有なミュージシャンであるスティーヴィー・ワンダーは、デビューしたのは1962年で、ビートルズと同期です。しかしながら、スティーヴィー・ワンダーはデビューした時にはまだ12歳でした。ジョン・レノンやリンゴ・スターよりも10歳も若いのです。近年はアルバムをリリースしてはいませんが、1960年代から1990年代にはコンスタントに新作を発表していて、全米トップ10ヒット曲は30曲にも及び、グラミー賞も22部門で最多受賞するなど、偉大なミュージシャンで、今なお現役です。そんなスティーヴィー・ワンダーは、モータウン一筋でやってきたものの、何しろ子どもだったので、21歳になるまではモータウンから売り上げの3%しかもらえていなかったとも云われています。10代だった1960年代にも多くの名曲を残していますが、本領発揮したのは1970年代からです。21歳になったスティーヴィーは、セルフ・プロデュースする事をモータウンに認めさせて、1972年のアルバム「TAKING BOOK」から、1973年のアルバム「INNERVISIONS」ときて、1974年のアルバム「FULFILINGNESS' FIRST FINALE」までの3部作を、更には1976年には2枚組の大作アルバム「SONG IN THE KEY OF LIFE」と、立て続けに傑作アルバムを発表しました。1975年にアルバム「STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARS」でグラミー賞を受賞したポール・サイモンが受賞スピーチで「何より、今年アルバムを発表しなかったスティーヴィー・ワンダーに感謝します」と云ったのは有名な話です。個人的にもコノ1972年から1976年にかけてリリースされた4作5枚が好きなのですが、ソレを全て収録した箱が「STEVIE WONDER CLASSIC ALBUM SELECTION(1972-1976)」です。
箱のデザインは些か頂けないものの、中味は2000年にリマスターされたデジパック仕様の4作5枚が全て収録されていて、スティーヴィーの楽曲は、特に1970年代は「アルバムで聴く」のが良いので、色々と出ているベスト盤を買うよりも、ある意味で全盛期だった1972年から1976年までのアルバムがコレで手に入るので、新品は廃盤でしょうけれど、中古盤ならば驚く程に安値で入手可能です。アルバム「TAKING BOOK」には「YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE」や「SUPERSTITION」と云った大ヒット曲が収録されていますが、ジェフ・ベックと共演している「LOOKING FOR ANOTHER PURE LOVE」なども収録されていますし、アルバム「INNERVISIONS」にも「LIVING FOR THE CITY」や「HIGHER GROUND」や「DON'T YOU WORRY ’BOUT A THING」や「HE'S MISSTRA KNOW-IT-ALL」が、アルバム「FULFILINGNESS' FIRST FINALE」には「YOU HAVEN'T DONE NOTHING」や「BOOGIE ON REGGAE WOMAN」が、アルバム「SONG IN THE KEY OF LIFE」にも「I WISH」や「SIR DUKE」や「ISN'T SHE LOVELY」や「ANOTHER STAR」や「AS」と云った大ヒット曲が目白押しで、驚異的なのは他の楽曲も全て捨て曲なしの名曲ばかりなのです。アルバム「INNERVISIONS」に至っては、後述するベスト盤に全9曲中8曲が選曲されているので、そもそも1枚や2枚のベスト盤では収まり切れないヒット曲を連発しているミュージシャンですから、特にコノ1970年代に関してはオリジナル・アルバムで聴いてこそ素晴らしさが存分に味わえます。ベスト盤で聴くならば、1982年の2枚組「STEVIE WONDER’S ORIGINAL MUSIQUARIUM T」が此の辺を押さえて、全16曲入りで新曲が4曲収録されていました。
1996年には「STEVIE WONDER ~ SONG REVIE A GREATEST HITS COLLECTION」がリリースされて、CD1枚の全21曲入りとCD2枚組の全31曲入りのオール・タイム・ベスト盤で、曲数が違うだけではなく選曲も全く異なっています。ポール・マッカートニーと共演した「EBONY AND IVORY」が両方に収録されていて、コノ曲がスティーヴィーのベスト盤に収録されているのは珍しいです。しかしながら、1枚や2枚で収まり切れる様なキャリアではないので、ベスト盤ならば1999年にリリースされたCD4枚組の「STEVIE WONDER AT THE CLOSE OF A CENTURY」全70曲入りがオススメです。CD1は1963年の初ヒット曲「FINGERTIPS」に始まり「UPTIGHT(EVERYTHING'S ALRIGHT)」、「A PLACE IN THE SUN」、「FOR ONCE IN MY LIFE」、「MY CHERIE AMOUR」、「SIGNED, SEALED, DELIVERED I'M YOURS」、などから1972年の「I LOVE EVERY LITTLE THING ABOUT YOU」までの23曲が、CD2には1972年から1974年までの3部作アルバム「TAKING BOOK」と「INNERVISIONS」と「FULFILINGNESS' FIRST FINALE」から17曲で、前述した通りアルバム「INNERVISIONS」は全9曲中8曲も収録されていて、CD3は1976年のアルバム「SONG IN THE KEY OF LIFE」から1980年のアルバム「HOTTER THAN JULY」までの16曲で、CD4には1982年のベスト盤「STEVIE WONDER’S ORIGINAL MUSIQUARIUM T」の新曲が4曲中3曲(「THAT GIRL」、「RIBBON IN THE SKY」、「DO I DO」)に始まって、1980年代の大ヒット曲「I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU」や「OVERJOYED」や「PART-TIME LOVER」、更に1990年代の「FOR YOUR LOVE」、そして最後は1997年のベビーフェイスとの共演曲「HOW COME, HOW LONG」で〆る14曲で、計70曲入りでございます。こちらも廃盤でしょうけれど、中古盤では2千円位で買えると思います。
(小島イコ)