さて、世紀の名盤と云われるビートルズの「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、2017年5月27日に「50周年記念盤」が全世界同時にアップルから発売されました。1CD、2CD、2LP、6枚組スーパー・デラックス・エディションの4形態で、全てに共通しているCD1(LP1)は、プロデューサーのジャイルズ・マーティンがステレオ・リミックスした全13曲で、コレにはやはり色々と批判的な意見もありますが、あたくしはオリジナルがあるのでリミックスもあっても良いと思います。ジャイルズ・マーティンはサー・ジョージ・マーティンの息子であって、ビートルズに関しては生まれた瞬間から身近な存在であって、2004年の「LOVE」でのマッシュアップや、2015年の「1+」でのリミックスや、2016年の「LIVE AT HOLLYWOOD BOWL」のリミックス、更には2013年のポールのソロアルバム「NEW」にもプロデューサーとして参加していて、父親の後を継いで愛情を込めた仕事をしていると思います。それで、2枚組のCD2(LP2)は、アルバム全13曲のアウトテイクをアルバムの曲順に並べて、最後に「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と「PENNY LANE」のアウトテイクとステレオ・リミックスを加えた全18曲入りで、「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」に関しては「1+」でのリミックスが収録されています。そして、あたくしも含めて多くのファンが購入したであろう「6枚組スーパー・デラックス・エディション」ですが、CD2とCD3には「コンプリート・アーリー・テイク集」としてレコーディング順にそれぞれ18曲と15曲の合計33曲が収録されていて、勿論「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と「PENNY LANE」のアウトテイクとステレオ・リミックスも含まれています。
そして、CD4にはオリジナルマスターのモノ・ミックス全13曲に「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と「PENNY LANE」に加えて「A DAY IN THE LIFE」と「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」と「SHE'S LEAVING HOME」の未発表モノ・ミックスと「PENNY LANE」のプロモ・モノ・ミックスの合計19曲が収録されています。更にDVDとBDもあって、それぞれにアルバム全13曲と「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と「PENNY LANE」を加えた全15曲の「5.1サラウンド・オーディオ・ミックス」と「ハイレゾ音源」に加えて、「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と「PENNY LANE」と「A DAY IN THE LIFE」のプロモーション・フィルムと、1992年に放送された「THE MAKING OF SGT. PEPPER'S」が収録されています。プロモーション・フィルムに関しては3曲共に2015年の「1+」にも収録されているのですが、やはり3曲つづけて観てこそだと思うので再収録でも嬉しいのですよ。流石に最初の箱でしたので、気合が入っていて、価格的にも2万円を切っていたのですけれど、コレがまたダンダンダンと中味が薄くなって価格が高くなって2022年の「REVOLVER」辺りになると4CDにEP版CDだけで、BDはなしで、つまりは「5.1サラウンド・オーディオ・ミックス」と「ハイレゾ音源」なしで2万円超えなんですよね。2CDや2LPのアルバムの曲順でのアウトテイクよりも、やはり6枚組でのレコーディング順で並べた方が、圧倒的に聴いていて面白いです。ちなみに此のリイシュー盤は49年125日ぶりに英国では首位になっていて「同一アーティストかつ同名アルバムの首位返り咲き」の新記録となりますが、2019年に記録を塗り替えられていて、ソノ49年252日ぶりに首位になったのが、ビートルズの「ABBEY ROAD」です。
レコーディングはジョンの「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」で始まり、つづいてポールの「WHEN I'M SIXTY-FOUR」と「PENNY LANE」が、次にジョンの「A DAY IN THE LIFE」が取り上げられて、中間部にポールの別の曲がピタリとハマって、「STRAWBERRY FIELDS FOREVER / PENNY LANE」が先行シングルとなり、アルバムのテーマが揺らいだトコロでポールが「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」を書いて「架空のバンドの架空のライヴ」と云う案が出て、ジョンの「GOOD MORNING GOOD MORNING」がロックンロールらしいヴァージョンで始まり、ポールの「FIXING A HOLE」から、ジョンの「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE !」、ポールの「LOVELY RITA」、ジョンの「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、ポールの「GETTING BETTER」、そしてジョージの「WITHIN YOU WITHOUT YOU」を挟み、主メロがポールでコーラスがジョンの「SHE'S LEAVING HOME」、レノン=マッカートニー作でリンゴの歌「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、最後に「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND (Reprise)」となります。こうして聴くと、ジョンとポールはそれぞれが書いた曲を代わる代わるにレコーディングしていたわけで、それほどポール色が強かったわけではないのに、完成したアルバムだと「ポールの平均点以下の曲が多いな」と思えるのです。ジョンは「ポールがドンドン曲を書くから、追いつかなくなった」と云っていましたが、そうしたのは実はジョンだと思えます。ジョンはツアー中はポールと相部屋で、完成した「REVOLVER」を二人で聴いて「俺は自分が書いた曲よりも、君(ポール)が書いた曲が好き」と云ってしまったのですよ。そりゃあ、ハリキルでしょう。此の話は「SHE'S LEAVING HOME」の編曲を別の仕事で出来なかったサー・ジョージ・マーティンが死ぬまで恨み節した様に、ポールもずっと自慢しています。
(小島イコ)