1967年6月1日にEMIパーロフォンからリリースされたビートルズの英国では8作目のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、何やら「ロックの金字塔」とか「ロック史上初のトータル・アルバム」などと持ち上げられていますが、近年のファンの間では「RUBBER SOUL」や「REVOLVER」の方がそれぞれの楽曲も良いしバンドとしてのグルーヴ感も上じゃないかとか、「ABBEY ROAD」の方が完成度が高いんじゃないかとか、「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」の多様性が優っているんじゃないかとか、色々な意見がある様です。確かに個々の楽曲単位だと、ポールが書いた曲がやたらに多くて、キレがない楽曲も含まれているし、ポールの案で架空のバンドの架空のライヴを演出したアルバムには、実はトータルなテーマなどないのです。それでも「ロックの金字塔」とされるのはですね、そんなお気楽なトータル性ですらも当時には前例がほとんどなくて、つまりはアルバム単位で聴かせると云う発想自体がここから始まっていて、ジャケットのインパクトも実に大仰で名盤風だし、裏ジャケットには歌詞を掲載されている事なども画期的だったからなのでしょう。そもそもは少年時代をテーマにしようと云う案から、ジョンが「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」を映画「HOW I WON THE WAR」の撮影現場だったスペインで書いて、ソノ曲からレコーディングが始まり、ポールの「WHEN I'M SIXTY-FOUR」と「PENNY LANE」とつづき、ジョンの「A DAY IN THE LIFE」の中間部がまだない状態まで行った辺りで、シングルとして「STRAWBERRY FIELDS FOREVER / PENNY LANE」が先出しとなってしまい、アルバムの目玉となるべき2曲が未収録となってしまいました。それでも「レノン=マッカートニー」が12曲で、ジョージ・ハリスンが1曲の全13曲入りで、アルバムは全てオリジナルの新曲となっております。
内容は、A面が、1「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、2「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、3「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、4「GETTING BETTER」、5「FIXING A HOLE」、6「SHE'S LEAVING HOME」、7「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE !」で、B面が、1「WITHIN YOU WITHOUT YOU」、2「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、3「LOVELY RITA」、4「GOOD MORNING GOOD MORNING」、5「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND (Reprise)」、6「A DAY IN THE LIFE」で、ジョージの曲はインド風味丸出しの「WITHIN YOU WITHOUT YOU」だけです。他の12曲は「レノン=マッカートニー」名義ですが、ジョンが書いたのは「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」と「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE !」と「GOOD MORNING GOOD MORNING」が単独で、「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」と「SHE'S LEAVING HOME」と「A DAY IN THE LIFE」の半分の4曲半で、残りの7曲半はポールが書いています。「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」と「SHE'S LEAVING HOME」に関しても基本的にはポールの曲ですし、架空のバンドの架空のライヴと云うテーマもポールの発案ですし、全体的にベースの音がデカくて目立っているのも、後でポールがダビングしたからです。故に、此のアルバムは、ポールとプロデューサーのサー・ジョージ・マーティンとエンジニアのジェフ・エメリックによる作品だとまで云われるわけで、ジョンはソノ大仰さを良く思っていなかったし、ジョージも1曲しか曲が取り上げてもらえずに不満だったし、リンゴにまで「ホワイト・アルバムの方が好き」なんて云われておりました。確かに些か過剰なアレンジで、ジョンの「GOOD MORNING GOOD MORNING」なんかはブラスをダビングする前のバンド演奏のみの方がカッコ良かったりもします。しかしながら、最初のCD化も50周年記念盤も此のアルバムを起点としていますし、やはりアルバムをトータルなカタチにした名盤なのです。
(小島イコ)