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2023年06月17日

「ポールの道」#042「REVOLVER」

リボルバー


ビートルズは1966年8月5日に、EMIパーロフォンから7作目のアルバム「REVOLVER」をリリースしました。前々年(1964年)は「A HARD DAY'S NIGHT」を、前年(1965年)には「HELP !」と主演映画を公開して、1966年もマネジャーであるブライアン・エプスタインはやる気マンマンで脚本の映画化権まで押さえたものの、ビートルズは拒否したので、3か月の長期休暇を取り、自ずと曲を書く時間も充分で、レコーディングも1966年4月6日から6月21日にかけて2か月半掛けられました。最初にレコーディングしたのが「TOMORROW NEVER KNOWS」ですから、もう完全にそれまでとは違う方向性となっていました。アルバム14曲とシングル2曲の16曲がレコーディングされて、まずは先行シングルとして「PAPERBACK WRITER / RAIN」が英国では同年6月10日(米国では5月30日)にリリースされて、アルバムには未収録です。しかしながら、アルバムと同日に「ELEANOR RIGBY / YELLOW SUBMARINE」がシングル・カットされています。コレはですね、もう1966年には新曲をリリースする気がビートルズにはなかったからでしょう。アルバムの内容を語る前に、やはりジャケットに言及しなければなりません。当初はロバート・フリーマンが撮影した写真を円形に回転した様にコラージュした案だったものの、ジョンの依頼でハンブルグからの友人であるクラウス・フォアマンによるイラストとコラージュが採用されました。クラウスはビートルズを頼って英国に移住して、マンフレッド・マンでベースを弾いていたのですが、元々は美術系なのでジョンが気を遣ってくれたとクラウスは云っていて、コレでグラミー賞の最優秀カヴァーを受賞しています。コレもタイトルしか載っていなくて「THE BEATLES」はありません。クラウスはベーシストとしても、後にジョンの「ジョンの魂」や、ジョージの「ALL THINGS MUST PASS」や、リンゴの「RINGO」を始めとして、ビートルズ解散後のソロアルバムでも大活躍して、一時はポールの代わりにクラウスを入れて再結成するなどと云う噂まで出ました。実際にリンゴにジョンが書いた1973年の「I’M THE GREATEST」では、ジョン、ジョージ、リンゴ、クラウス、ビリー・プレストンと云う編成が聴けます。

さて、アルバム「REVOLVER」は、全14曲で、レノン=マッカートニーが11曲で、ジョージ・ハリスンが3曲です。初めてジョージの曲が3曲収録されましたが、実はもう此の辺から曲が貯まってしまい、ソロ第1作が3枚組になる伏線となっています。A面は、1「TAXMAN」はジョージ作ですが、インド風のリードギターはポールが弾いています。2「ELEANOR RIGBY」はポールが中心に書いた曲で、弦楽八重奏をバックにしていて、ビートルズは演奏に加わっていません。3「I’M ONLY SLEEPING」はジョン作で、ジョージが弾く逆回転ギターも印象的なサイケな曲です。4「LOVE YOU TO」はジョージ作で、インド音楽に強い影響を受けた、所謂ひとつの「ラガー・ロック」の始祖です。5「HERE THERE AND EVERYWHERE」はポール作で、ビーチ・ボーイズの「GOD ONLY KNOWS」に影響を受けたと云うコーラスが粋な、ロマンティックな名曲です。6「YELLOW SUBMARINE」は、ジョンとポールの合作で、リンゴの歌です。7「SHE SAID SHE SAID」はジョン作のサイケ曲ですが、途中でポールが帰ってしまったのでベースはジョージとも云われていたものの、ベーシックトラックでポールが弾いているみたいです。個人的には「HERE THERE AND EVERYWHERE」はポールの、「SHE SAID SHE SAID」はジョンの、コノ時期の最高傑作だと思います。B面は、1「GOOD DAY SUNSHINE」はポール作で、ラヴィン・スプーンフルが元ネタと云う陽気な曲です。2「AND YOUR BIRD CAN SING」はジョン作で、コノ時期には珍しいポップでカラフルな「レノン節」が聴けます。3「FOR NO ONE」はポール作で、これまた美しい曲です。4「DOCTOR ROBERT」はジョン作ですがミドルエイトはポールも手伝っている感じで、ドラッグ・ソングです。5「I WANT TO TELL YOU」はジョージ作で、1991年の来日公演で1曲目でした。6「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」はポール作で、ブラス・ロックの先駆けです。そして、7「TOMORROW NEVER KNOWS」は、ジョン作ですが、テープループなどのアレンジではポールの貢献も大きい曲で、サンプリングなんて概念がなかった当時の斬新過ぎる曲です。ちなみに、曲名は英文法を無視した「リンゴ語」です。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| FAB4 | 更新情報をチェックする