1965年12月3日にEMIパーロフォンからリリースされたビートルズの英国では6作目のアルバム「RUBBER SOUL」ですが、同年12月6日に米国のキャピトルからリリースされた同名タイトル作は、なな、なんと9作目でありましてですね、ヴィー・ジェイからのデビュー盤とユナイテッド・アーティスツからの「A HARD DAY'S NIGHT」のサントラ盤も加えたならば、驚くなかれ公式盤で11作目なのです。ジャケットもタイトル文字の色が違うだけなのに、内容は英国盤から「DRIVE MY CAR」「NOWHERE MAN」「WHAT GOES ON」「IF I NEEDED SOMEONE」の4曲をカットして、英国では前作の「HELP !」から「I’VE JUST SEEN A FACE」と「IT'S ONLY LOVE」を加えた全12曲入りです。A面が、1「I’VE JUST SEEN A FACE」、2「NORWEGIAN WOOD (This Bird Has Flown)」、3「YOU WON'T SEE ME」、4「THINK FOR YOURSELF」、5「THE WORD」、6「MICHELLE」で、B面が、1「IT'S ONLY LOVE」、2「GIRL」、3「I'M LOOKING THROUGH YOU」、4「IN MY LIFE」、5「WAIT」、6「RUN FOR YOUR LIFE」と云う、スカスカな内容で、特にレコードでは重要なA面1曲目とB面1曲目が「HELP !」からの曲なので、全くもってビートルズが「RUBBER SOUL」に込めた想いなど無視した内容に改ざんされています。米国のファンは、1987年に全世界統一規格CD化されるまで22年間「RUBBER SOUL」はこんな紛い物を聴かされていたわけですよ。ところが、ところがですよ、其の中にはビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンも含まれていてですね、ブライアンは此の米国盤を聴いて衝撃を受けて、ならば負けじと「PET SOUNDS」を制作するのですから、もしも米国でも英国と同じ仕様だったなら、世紀の名作「PET SOUNDS」は違った内容になったかもしれません。
此のスットコドッコイな米国盤「RUBBER SOUL」は、当然の如く英国と同内容だった日本ではリリースされず、輸入盤でしか買えなかったのですけれど、2006年の「THE CAPITOL ALBUMS VOL. 2」にモノラルとステレオのオリジナルが2in1で収録されました。ところが、ところがですよ、なんと、初回プレス盤でのモノラルが「ステレオをモノラルにしただけ」と云う致命的なミスをしてしまったのです。元々がいい加減な選曲なので、キャピトルはテキトーにやらかしたのでしょう。何故にそれが発覚したかと云うとですね、米国キャピトル盤の「MICHELLE」のモノラルはエンディングが長くて、「THE WORD」と「I'M LOOKING THROUGH YOU」のステレオも別ミックスだから、聴けばすぐに分かるのです。特に「I'M LOOKING THROUGH YOU」のステレオは出だしでギターを2回間違えるので、それがモノラルでも間違えていたなら、其の盤は不良品です。そして、2014年の「THE U.S. BOX」では、2009年リマスターに差し替えられています。さてさて、英国盤オリジナル仕様の「RUBBER SOUL」は、1987年のCD化の際にサー・ジョージ・マーティンが前作「HELP !」と共にリミックスしていて、2009年リマスターでもソレが採用されていますが、2009年の「THE BEATLES IN MONO」でモノラルとオリジナル・ステレオが2in1で収録されました。2009年には海外で「THE BEATLES ROCK BAND」と云うゲームソフトが発売されて、まあ、ビートルズのオリジナル楽曲をギターやベースや歌などで一緒にプレイ出来るゲームなのですが、つまりは勝手にリミックスする事も可能なわけでして、ブートレグ業者はソレを元にした音源をリリースしています。あたくしも5枚組の「COMPLETE ROCK BAND COLLECTION」を持っていて、ソレに「RUBBER SOUL」も収録されています。イントロ前に会話があったり、エンディングが完奏されたりしていて、ゲームはやらないから音だけ聴ければいいのならば、ソレで充分でしょう。
(小島イコ)