
ビートルズは、先を急ぐと1966年8月29日に行ったサンフランシスコのキャンドル・スティック・パーク公演を最後にライヴ活動を休止します。そして、レコーディング活動のみのバンドとして生まれ変わるのですが、前述の通りに前年である1965年の夏にはもうツアーに飽き飽きしていて、「RUBBER SOUL」から「REVOLVER」へと続くライヴ休止前の段階で、既にレコーディングへのめり込んでゆくのです。マネジャーであるブライアン・エプスタインは、何せマネジャーとしては素人だったので、ライヴのブッキング位しかやる事がなくて、レコーディングに打ち込みたいビートルズの意思とは別に、ドンドンとツアーのスケジュールを詰め込んでしまい、結局はビートルズは完全にライヴを止めると云う選択肢しかなくなってしまいます。さて、そんなビートルズのライヴは、以前に紹介した「THE BEATLES LIVE AT HOLLYWOOD BOWL」しか公式盤ではリリースされていませんが、アレを聴いてもっとビートルズのライヴを浴びる程に聴きたくなった方々には、ハーフオフィシャル盤で出ている「THE BEATLES ROCK'N'ROLL MUSIC LIVE&RARE 1962-1966」がオススメです。内容は、既にビートルズのライヴ音源のブートレグを聴いている方々にとっては耳馴染みの音源ばかりを集めておりますが、何せ、CD10枚組で260トラックも詰め込んで、今Amazonで見ても新品がたったの2千5百円余りなんですから、1曲10円以下とコスパは最高ですし、紙ジャケ10枚はそれぞれ違ったモノクロの写真が使われているし、箱もコンパクトで場所もとらないし、もしもまだビートルズのライヴ音源を聴いていないのであれば、色々とブートレグに手を出して火傷する前に、まずはコレでお試しするのが良策かと存じます。
1枚目は1962年で、デッカ・オーディションから10曲と、トニー・シェリダン関連が13曲の全23曲入りで、トニー・シェリダンを13曲も入れるなら、デッカ・オーディション全15曲にしろと云いたくもなりますし、トニーとの共演は1961年なんですけどね。2枚目は1962年のBBC音源を中心にキャバーンのライヴも交えた全18曲入りで、3枚目は1963年のアルバム「PLEASE PLEASE ME」とシングル「FROM ME TO YOU」とアルバム「WITH THE BEATLES」のセッションから全26曲入りで、まあ、耳タコ音源ではあります。4枚目と5枚目は1963年のBBC音源で、それぞれ全29曲と全23曲入りで、以前に紹介したBBC音源の11枚組とかを持っていたらいらないです。6枚目になって、ようやく観客入りのライヴ音源となって、1964年のパリ公演やロンドン公演やメルボルン公演から全31曲入りで、7枚目も1964年のブラックプール公演とフィラデルフィア公演とインディアナポリス公演から全31曲入りで、此の辺がライヴ・バンドとしてはノリノリの時期です。8枚目は1965年のパリ公演からたっぷりと24曲入りで、9枚目も1965年のロンドン公演とブラックプール公演とヒューストン公演から全22曲入りですが、もう此の辺になると徐々にライヴをやっている意味を考えだした時期ではあります。そして、10枚目は1966年のドイツ公演と東京での武道館公演から全33曲入りで、武道館は6月30日の夜と7月1日の昼が完全収録されています。武道館公演だけを考えても、それだけの単品を買う位なら此の箱を買った方が良いでしょう。此の箱に収録されているのは、スタジオでのアウトテイクや、BBC音源や、ライヴ音源もテレビやラジオで流す為にレコーディングされていたものが多いので、音質の面でもかなり安心出来ます。アレがない、コレがないと云われるヘヴィ・ブートレグ愛好家ではなければ、十二分に楽しめる10枚組260トラックです。
(小島イコ)