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2023年06月08日

「ポールの道」#033「THE ROLLING STONES SINGLES COLLECTION THE LONDON YEARS」



前回にビーチ・ボーイズを取り上げて「ローリング・ストーンズはビートルズのライバルではなく、舎弟」と書いたので、ソレを分かり易くする為に時間を前後させてビートルズとローリング・ストーンズの関係を残された音源で辿ってみます。1960年代のそれらを聴くにはCD3枚組のベスト盤「THE ROLLING STONES SINGLES COLLECTION THE LONDON YEARS」が便利です。前回も触れた通り、ローリング・ストーンズのマネジャーでプロデューサーであったアンドリュー・ルーグ・オールダムは、ビートルズのマネジャーであるブライアン・エプスタインの部下でビートルズの宣伝担当だったのですが、まだ10代で独立してローリング・ストーンズのマネジャーとなって、まあ、つまりは、柳の下の泥鰌を狙って、自分もエプスタインみたいになりたかったのです。そして、ジョージ・ハリスンがデッカに紹介したのですが、其の相手と云うのがビートルズをオーディションで落とした張本人のディック・ロウでありましてですね、ロウはジョージに「君たちをオーディションで落として以来、会社に居づらくなっちゃったよ」と愚痴をこぼしたら、優しいジョージは「だったら、ローリング・ストーンズと契約すれば?」とアドバイスしたって話なのです。それで契約したんですけれど、困った事に当時のローリング・ストーンズはブライアン・ジョーンズがリーダーで、黒人リズム&ブルースのカヴァーばかりやっていたわけです。それじゃあ、金にならないので、ロウはオールダムにどうにかしろと頼んで、実際にジョンとポールを連れて来て、ローリング・ストーンズの目の前で「I WANNA BE YOUR MAN」を書かせて提供してもらって、ソレがヒットしたので、ミックとキースにも「レノン=マッカートニーみたいにオリジナル曲を書け!」と命じてですね、なんとまあ、曲が出来るまでキッチンに二人を閉じ込めてしまったのです。ソレで出来たのが「AS TEARS GO BY」と云う、涙なしには語れない様な実話なのでした。

ジョンは「ローリング・ストーンズは、俺たちの後追いばかりやっている」と豪語するなど、完全に上から目線であって、実際に1967年位までは、ローリング・ストーンズに限らず英国のバンドは勿論、米国ではビートルズに対抗しようとオーディションでメンバーを選んで職業作家の曲をスタジオ・ミュージシャンに演奏させて歌だけ歌わせたモンキーズなんかも出て来るわけですよ。1966年のビートルズの「YELLOW SUBMARINE」にはブライアン・ジョーンズがマリアンヌ・フェイスフルも連れてコーラスで参加していて、1967年には全世界同時衛星中継でビートルズが英国代表として「ALL YOU NEED IS LOVE」を公開レコーディングして、映像にも残っている通りにミックとキースとマリアンヌも其の場に居てコーラスで参加しているので、其のお返しとばかりにローリング・ストーンズのシングル「WE LOVE YOU」とジャケットにビートルズも載っているアルバム「Their Satanic Majesties Request」の「SING THIS ALL TOGETHER」にはジョンとポールがコーラスで参加しています。更に其の時期にレコーディングしたビートルズの「YOU KNOW MY NAME (LOOK UP THE NUMBER)」には、ブライアン・ジョーンズがサックスで参加しているのですが、発表されたのは1970年でシングル「LET IT BE」のB面で、もうブライアン・ジョーンズは亡くなっていました。1968年のローリング・ストーンズの「STREET FIGHTING MAN」には、ポールがアンサー・ソング「WHY DON'T WE DO IT IN THE ROAD ?」を書いてアルバム「THE BEATLES」に収録しています。更には1968年に撮影されたローリング・ストーンズの「ROCK AND ROLL CIRCUS」にはジョンが客演するのですが、ソレに関しては後に語ります。あたくしはブライアン・ジョーンズが在籍していた1960年代のローリング・ストーンズが好きなのですが、ブライアン・ジョーンズと云うミュージシャンは曲は書けないけれど天才で、どんな楽器でもすぐに演奏出来る人で、1966年の「PAINT IT, BLACK」ではシタールも弾いているんですけれど、ジョージ・ハリスンみたいにちゃんとラヴィ・シャンカールに弟子入りして習得したのではなく、全くの我流で弾いていて、ソレがカタチになっているのですから、本当に凄い人だったんですよ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| FAB4 | 更新情報をチェックする