さて、ここで発売順序は逆になりますが、映画「HELP !」の米国キャピトルからのサントラ盤を先に紹介します。英国での「HELP !」は1965年8月6日にリリースされましたが、米国ではサントラ盤として8月13日にリリースされています。内容は、映画で使われた「HELP !」「THE NIGHT BEFORE」「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」「I NEED YOU」「ANOTHER GIRL」「TICKET TO RIDE」「YOU’RE GOING TO LOSE THAT GIRL」(「YOU’RE GONNA LOSE THAT GIRL」と表記)の7曲がビートルズによる演奏で、他の「FROM ME TO YOU FANTASY」「IN THE TYROL」「ANOTHER HARD DAY'S NIGHT」「THE BITTER END」「THE CHASE」の5曲はケン・ソーンによるインストゥルメンタルの、全12曲入りです。前作映画「A HARD DAY'S NIGHT」のサントラ盤はユナイテッド・アーティスツから出ていましたが、ここでサントラ盤もキャピトルから出す事になったわけですが、全12曲入りとは云え、ビートルズによる演奏は7曲で、「HELP !」と「TICKET TO RIDE」は既発シングルだったので、新曲はたったの5曲です。全てオリジナルで、レノン=マッカートニーが6曲で、ジョージ・ハリスンが「I NEED YOU」の1曲ですが、レノン=マッカートニーの6曲は主にジョンが書いた「HELP !」「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」「TICKET TO RIDE」「YOU’RE GOING TO LOSE THAT GIRL」の4曲は粒ぞろいの名曲ばかりですが、主にポールが書いた「THE NIGHT BEFORE」「ANOTHER GIRL」の2曲は駄曲だと思います。英国盤だとB面に映画に使われなかった7曲が入っていて、其の中にポールが書いた「I'VE JUST SEEN A FACE」と「YESTERDAY」と云う超名曲が含まれているので誤魔化されてしまいますが、サントラ盤だけ聴くと明らかにポールの曲の出来は悪いのです。
それで前回に紹介した以外のブートレグで、「MO」の「HELP ! Special Edition」と、「MONKY CLOWN」の「EIGHT ARMS TO HOLD YOU」の2枚も紹介します。「HELP ! Special Edition」は英国盤14曲のモノラル・ミックスに、シングルB面「YES IT IS」と「I’M DOWN」にボツ曲「BAD BOY」「IF YOU’VE GOT TROUBLE」「THAT MEANS A LOT」の5曲、そしてサントラ盤からケン・ソーンの5曲、更に「THAT MEANS A LOT」と「YESTERDAY」と「HELP !」のアウトテイク、更に映画のエンディング用の「THE BARBER OF SEVILLE」の全28曲入りで、サントラ盤みたいにビートルズとケン・ソーンが混ざっていないのがイイ感じです。「EIGHT ARMS TO HOLD YOU」は「HELP !」の仮タイトルを冠していて、英国盤の14曲を別ミックスで並べて、シングルB面とボツ曲の5曲も別ミックスで入れて、「(なんちゃって)ジェームス・ボンドのテーマ」入りの「HELP !」とケン・ソーンの5曲をモノラル・ミックスで入れた全25曲入りです。こちらも映画用のインストが別になっているし、英国盤のオリジナルに慣れている者にとっては納得の曲順となっています。ケン・ソーンが此のサントラ盤で起用されたのは、監督のリチャード・レスターとサー・ジョージ・マーティンが喧嘩して、それで代わったケン・ソーンがシタールを使ったので、ジョージ・ハリスンが興味を持ち取り入れる事になったらしいのです。しかしながら、サー・ジョージ・マーティンはとっくの昔にピーター・セラーズのレコーディングでシタールを使っていたので、ケン・ソーンのお手柄とも云えない気はします。サントラ盤の「HELP !」は2006年の「THE CAPITOL ALBUMS VOL. 2」にモノラルとステレオのオリジナルが2in1で収録されましたが、2014年の「THE U.S. BOX」では2009年リマスターに差し替えられています。
(小島イコ)