ビートルズはレコード・デビュー前の1962年2月にBBCのオーディションに合格して、1962年3月7日放送から1965年6月7日放送まで、BBCラジオで92曲270テイク以上にも及ぶスタジオ・ライヴ音源を残しました。其の膨大な音源は、当然の如くブートレグ業者の餌食となり、一時期は新聞広告まで掲載されて多数のブートレグを生む事となりました。アップルが動いたのは1994年11月30日の事で、まずはCDでは2枚組の「LIVE AT THE BBC」をリリースしました。そして、シングルのカップリングには本編に未収録の3曲も加えて、更に1995年11月21日にリリースされた「Anthology 1」にも数曲を加えたのですが、其の時に一時的に「LIVE AT THE BBC」を廃盤にすると云う愚挙もやらかしてしまいます。そして、2013年11月11日になってようやく第2弾の「ON AIR - LIVE AT THE BBC Volume 2」をCD2枚組でリリースして、12月11日には2作をまとめたCD4枚組の「LIVE AT THE BBC THE COLLECTION」をリリースしました。しかしながら、たったのCD4枚では、ビートルズが実際に演奏した全楽曲をコンパイルするには、到底足りないのです。故に、ブートレグはその他の音源もかき集めて其れまでも其の後もリリースし捲ったわけです。あたくしが持っているのは「sgt.」の「POP GO THE BEATLES COMPLETE BBC MASTERS VOL.1」と「FROM US TO YOU COMPLETE BBC MASTERS VOL.2」です。「POP GO THE BEATLES COMPLETE BBC MASTERS VOL.1」はCD6枚組で、「FROM US TO YOU COMPLETE BBC MASTERS VOL.2」はCD5枚組で、合わせてCD11枚組で、1962年3月7日から1965年6月7日までの現存する全てのBBCでのスタジオ・ライヴに加えて、レア・テイクまで残っている音源は全て網羅していると思います。
公式盤はCD4枚組で、ブートレグはCD11枚組なんですから、ブートレグは倍どころか3倍近いボリュームがあります。ビートルズが演奏しているのならば何でも全部聴きたい方は、他のレーベルからも同じ様なBBC集大成音源集が出ているので、それらを購入して浴びる程BBC音源を聴いて下さい。そうでない方は、公式盤の4枚組で充分に楽しめますから、何せ元々がラジオ番組用で、ビートルズとしても1回ラジオで流れたら消えてなくなると思っていた音源ですし、モノラルだし、音も悪いので無理して聴く必要はありません。しかしながら、たった1回放送されておしまいのはずだった音源なのに、1発録音であるにも関わらず、ビートルズの演奏技術は高くて、更に公式盤では正式にはレコーディングしていない楽曲も数多く演奏しているので、そこは天下無敵のビートルズがたっぷりと聴けます。特に公式盤ではオミットされたカヴァー曲が多く含まれていて、1962年から1965年前半までと云う時期的な事もあり、兎に角、ジョン・レノンが凄い事になっております。当時は20代前半だったジョンが、正に「歌う為に生まれて来た」と云える熱唱を聴かせてくれます。お得意のロックンロールばかりではなく、ポップスも、バラードも、ガールズ・グループの曲まで、どれもが素晴らしい出来栄えで、天下無敵のビートルズを引っ張る天下御免のジョン・レノン様を堪能出来ます。ビートルズに限らず、当時のグループはBBCで生演奏するのが当たり前で、音源集も出ていますが、コレはですね、当時の英国のミュージック・ユニオンが番組でレコードを流すのを規制していた為で、みんな生演奏するしかなかったからなのですが、お陰でこうしてBBC音源が数多く残されたわけです。
さて、コレを書いたのは6月3日なのですが、シンシア・ワイルが亡くなりました。夫のバリー・マンと共に数多くの名曲を生み出した、偉大な作詞家です。実はビートルズがカヴァーした楽曲もあって、スター・クラブ音源ではアーサー・アレキサンダーが歌った「WHERE HAVE YOU BEEN(ALL MY LIFE)」をジョンのヴォーカルで聴けます。其の曲は大瀧師匠が「恋するカレン」のサビで引用していますので、ソレで「ナイアガラ考」と「ポールの道」は繋がっているのでした。ご冥福をお祈りいたします。
(小島イコ)