大瀧師匠は2013年12月30日に急死してしまいましたが、既に「EACH TIME 30th Anniversary Edition」はリマスター作業を終えており、生前の意志通りに2014年3月21日にリリースされました。其の内容はと云うと、まずは本編11曲がまたしても曲順が変更されております。1「夏のペーパーバック」、2「Bachelor Girl」、3「木の葉のスケッチ」、4「魔法の瞳」、5「銀色のジェット」、6「1969年のドラッグレース」、7「ガラス壜の中の船」、8「ペパーミント・ブルー」、9「恋のナックルボール」、10「レイクサイド ストーリー」、11「フィヨルドの少女」となりましてですね、2枚目は全11曲の純カラオケ音源です。なのですがですよ、これまた歌入りの1枚目と純カラオケの2枚目では別ヴァージョンの曲があったりして、かなりややこしい事となっております。純カラオケを聴くと、如何に大瀧師匠が緻密に音を重ねていたかが分かりますし、松本隆さんの「中年の悲哀ラヴストーリー」みたいな歌詞を大瀧師匠が情感を込めて歌っている後ろで鳴っているのは、実は非常にコミカルな音楽だったとも種明かしされているのでした。「ロンバケ」の箱に収録されていた「ロンバケ」のカラオケで外国人シンガーが歌っている音源とか、ロニー・スペクターやダーレン・ラヴなどによるカヴァーを聴くと、凄く違和感があります。
やはりソコは、大瀧師匠が鼻歌みたいにクルーナーで歌っていないと、何か全然違うんですよ。1992年に発売された「CANARY ISLANDS」と云う不可思議なカヴァー集があって、ソレでロニー・スペクターやダーレン・ラヴがカヴァーしているんですけれど、一寸考えるとフィル・スペクター直系の方々が大瀧師匠の楽曲をカヴァーしているんだから、そりゃあ、もう、ピッタリと来るかと云えば、そんな事はなくて、ただただ「違う」としか云えない出来栄えなんですよ。当時流行っていたブラコンみたいなアレンジが酷いって事もあるんですけれど、やっぱり、アノ大瀧師匠の声でないと決まらないわけですよ。故に、大瀧師匠の作品と云うのは、フィル・スペクターは勿論、多くの先達の遺産の上に成り立ってはいるものの、実はソコには大いなるオリジナリティーがドンと構えていたわけなのです。それにしても、何故、大瀧師匠は亡くなるまで何度も「EACH TIME」を作り変えていたのでしょうか。「レイクサイド ストーリー」の大エンディングに関しては、其の後に「フィヨルドの少女」を入れたからと分かりますが、そもそも何故「夏のペーパーバック」を最初に持って行ったのでしょうか。「夏のペーパーバック」は、実はエンディングから始まっている曲なので、やはりコレで最後のアルバムと決めていたのでしょうか。其の辺の謎は来年の「EACH TIME VOX」で全てが明かされるのでしょうか。いや、もう、大瀧師匠はいないのだから、全ては後付けなので、最早、永遠の謎です。
(小島イコ)