大瀧師匠の生前最後のオリジナル・アルバム「EACH TIME」は、当初は1983年7月28日の大瀧師匠のお誕生日にリリース予定が、毎度お馴染みの延期となり、1984年3月21日にリリースされました。これまた厄介な代物でして、発売後にはリイシューされる度に内容が変更されてゆきます。まずはオリジナルは全9曲で、A面1曲目「魔法の瞳」2曲目「夏のペーパーバック」3曲目「木の葉のスケッチ」4曲目「恋のナックルボール」5曲目「銀色のジェット」で、B面1曲目「1969年のドラッグレース」2曲目「ガラス壜の中の船」3曲目「ペパーミント・ブルー」4曲目「レイクサイド ストーリー」です。此のアルバムからは1曲もシングルカットされず、プロモ盤で「ペパーミント・ブルー」が出ただけで、最後の「レイクサイド ストーリー」は最後にエンディング入りの「大エンディング・バージョン」となっております。同年4月1日には「EACH TIME SINGLE VOX」が12インチアナログ5枚組でリリースされて、「魔法の瞳」「夏のペーパーバック」「木の葉のスケッチ」「恋のナックルボール」「1969年のドラッグレース」「レイクサイド ストーリー」と6曲が別ヴァージョンに差し替えられて、「ペパーミント・ブルー」のカラオケも収録されました。此の辺から「大エンディング・バージョン」は聴けなくなります。同年6月1日にはオリジナルが初CD化され、1985年11月1日には当初はアルバム未収録だった「フィヨルドの少女」と「Bachelor Girl」がシングルとしてリリースされて、1986年6月1日には其の2曲を加えてオリジナルの曲順も変えた「Complete EACH TIME」がアナログで、更にCDは「EACH TIME SINGLE VOX」のヴァージョンに2曲を加えたカタチでリリースされました。
1989年6月1日には「魔法の瞳」と「ガラス壜の中の船」の代わりに「フィヨルドの少女」と「Bachelor Girl」を収録したリマスターCDがリリースされて、1991年3月21日にはオリジナルの曲順に戻した全9曲入りの選書盤CDがリリースされますが、「レイクサイド ストーリー」は大エンディングなしのヴァージョンとなりました。其の後は2004年3月21日に「EACH TIME 20th Annniversary Edition」が、更に2014年3月21日に「EACH TIME 30th Anniversary Edition」がリリースされますが、其の辺は次回で書きます。2015年3月21日には、以前紹介した「NIAGARA CD BOOK II」にオリジナル全9曲の「EACH TIME」(「レイクサイド ストーリー」は大エンディング・バージョン)と「Complete EACH TIME SINGLE VOX」(オリジナルに「バチェラー・ガール」と其のインスト、「フィヨルドの少女」とインスト「哀愁のフィヨルドの少女」を追加したCD)が収録されています。ハテサテ、前述の通り、リイシューする度に内容が変わってしまうアルバムは、当初は「ロンバケ2」だから「バケツ」と呼んでレコーディングしたなどとも云っておりましたが、「ロンバケ」や「トライアングル2」での大瀧師匠サイドとは大きく路線が変更されています。まずは、全作詞を松本隆さんが担当していて、此の全曲が松本さんの詞と云うのは、実はコレが最初で最後です。更に、大瀧師匠のアルバムで唯一チャートで1位を獲得したアルバムで、売り上げ的には「ロンバケ」の200万枚には及ばないものの、60万枚も売れました。「ロンバケ」の場合は、じわじわとロングセラーとなった事と、前にも書きましたが寺尾聰さんの「Reflections」が12週連続1位で1981年だけで160万枚も売れちゃったからなんですよ。「Reflections」では松本さんも詞を書いているし、全曲アレンジは井上鑑さんなんですよ。まあ、それじゃ仕方ないですよね。
(小島イコ)