1983年8月5日に先行シングル「夏に恋する女たち」(B面は「レシピー」)をリリースしたター坊こと大貫妙子さんは、ソレをA面1曲目にした7作目のアルバム「SIGNIFIE」を同年10月21日にDear Heart ⁄ RVCからリリースします。此のアルバムはチャート6位まで上がって、ター坊の最大のヒットとなりました。全10曲は全てター坊の作詞作曲で、アレンジは、A面1曲目「夏に恋する女たち」と2曲目「幻惑」と4曲目「PATIO〈中庭〉」とB面1曲目「テディ・ベア」と2曲目「RECIPE〈調理法〉」の5曲が教授こと坂本龍一さんで、A面3曲目「SIGNE〈記号〉」と5曲目「ルクレツィア」とB面4曲目「SIESTA〈ひるね〉」と5曲目「エル・トゥルマニエ〈虹の神〉」の4曲が清水信之さんで、B面3曲目「アーニャ」が鈴木慶一さんです。「夏に恋する女たち」は田村正和さんが主演した同名ドラマの主題歌で、毎回タイトルバックに流れて、「作詞・作曲・歌:大貫妙子、編曲:坂本龍一、音楽:伊藤銀次」とクレジットが出たので、其れだけで感動してしまいました。アルバムも売れたので、ラジオ番組で盟友であるタツローこと山下達郎さんが「遂にター坊のアルバムもトップ10に入る様になった」と喜んでいました。
其れで、此の時期には元SUGAR BABEの二人でコラボ企画もあって、ラジオ番組でレコードの制作過程を聴かせると云う、タツローが作編曲して、ター坊が作詞して歌った「魔法を教えて」を、まっさらな状態から作ってレコーディングし完成させるなんて事もやっていました。結局は其の楽曲は翌1984年にタツローが「THE THEME FROM BIG WAVE」として自ら歌っています。先を急ぐと1986年のタツローのアルバム「POCKET MUSIC」に収録されている「十字路」は、当初はゲスト・ヴォーカルとしてター坊に依頼してスケジュールが合わずに竹内まりやさんに変更されています。そんなこんなでなかなか再共演とは行かなかったものの、1994年に「SONGS」がリイシューされて行われた「TATSURO YAMASHITA Sings SUGAR BABE」でター坊もゲスト出演して遂に実現したわけです。話を「SIGNIFIE」に戻すと、此のアルバムには「ルクレツィア」「アーニャ」「エル・トゥルマニエ〈虹の神〉」と3曲もインストゥルメンタル楽曲が収録されていて、コレは後に映画音楽を担当する様になる前振りとなっておりますが、実はター坊の楽曲が初めて映画に使われたのが「RECIPE〈調理法〉」で、翌1984年公開の伊丹十三監督の「お葬式」です。
(小島イコ)