1981年10月21日にリリースされたシングル「A面で恋をして」と、1982年3月21日にリリースされたアルバム「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」の間に、1982年1月21日には元祖・ナイアガラ・トライアングルでもあったタツローこと山下達郎さんの6作目のスタジオアルバム「FOR YOU」がRCA ⁄ AIRからリリースされました。前作「RIDE ON TIME」が1位の大ヒットとなったので、タツローは好きなだけレコーディング出来たらしく、27曲もの楽曲がレコーディングされて、そこから絞り込んだ12曲(短い繋ぎのINTERLUDEが4曲あるので、実質8曲)を収録して満を持してのリリースとなり、前作同様に1位となりました。近年のシティポップ・ブームで持ち上げられて、タツローは「40年前に云ってよ」と応えておりますが、ター坊こと大貫妙子さんによる「SUNSHOWER」と全く違うのは、タツローの「FOR YOU」は発売当時にも滅茶苦茶売れたのに対して、ター坊の「SUNSHOWER」は当時は全く売れなかったのです。1977年のター坊の「SUNSHOWER」と並べるのならば、タツローも1977年の「SPACY」じゃないとおかしいわけで、確かに1970年代には、SUGAR BABEも、タツローも、ター坊も、大瀧師匠とナイアガラも、全てひっくるめて全く売れておりませんでした。でもですね、1980年代には、みんな売れたんですよ。
故に、今更1982年の「FOR YOU」を再評価と云うのは変な話でありましてですね、当時もレコードがバンバン売れたわけでして、シティポップ再評価なんて云われていなかった時には「FOR YOU」なんか300円位で叩き売りされていたんですよ。其れがですね、何だか高値が付く様になっちゃったのは、其れに関わっている業界でアレをナニしているんじゃないんですかね。其れで中古盤が高く売れてもタツローには何の得にもならないから、改めてアナログ盤をリリースするんじゃないんですかね。此のレコードと「ロンバケ」は共に「日本のポップスの金字塔」なんて云われておりますが、実はコレもジャケットは永井博さんに依頼しようと思ったら、先に「ロンバケ」が出てしまったので、鈴木英人さんになったそうで、まあ、大瀧師匠とタツローは考える事も似ているんですよね。「ロンバケ」も「FOR YOU」も、中味の音楽をジャケットで表しているわけで、当時は斬新な試みでした。此の当時のタツローは「夏だ!海だ!タツローだ!」がキャッチコピーだったわけでして、ハードロック唱法で叫ぶ「SPARKLE」とか「LOVELAND, ISLAND」なんかは、正にソレです。長年続いた吉田美奈子さんによる作詞も、此のアルバムが実質的には最後となり、次のスタジオ盤「MELODIES」からはRCA ⁄ AIRからMOON ⁄ ALFA MOONへと移籍して、収録曲「クリスマス・イブ」によってタツローは「冬の季語」となるのでした。
(小島イコ)