1978年となりまして、いよいよ後がなくなったナイアガラは、まずは6月25日に「多羅尾伴内楽團 Vol.2」を発売して、8月25日には変則的なベスト盤「DEBUT」を発売して、11月25日に「レッツ・オンド・アゲン」を発売して、結局は年4枚の契約を守れず崩壊しました。「多羅尾伴内楽團 Vol.2」に関しては2007年9月21日に「多羅尾伴内楽團 Vol.1&Vol.2 30th Anniversary Edition」がリイシューされて、「レッツ・オンド・アゲン」も1996年3月21日にリイシューされていますが、「DEBUT」は1984年4月1日に「NIAGARA BLACK VOX」に収録されて、1987年6月25日に「DEBUT SPECIAL」として初CD化されて、同日発売の「NIAGARA BLACK BOOK」にも収録されて、其れ以後は長く廃盤状態となっておりました。其れで2011年3月21日に2代目「NIAGARA CD BOOK I」に収録されて、オリジナル・フォーマットとしては初CD化でもあったので喜ばれましたが、何せ12枚組で他はバラ売りしているわけでして、初心者には敷居が高い商品ではありました。初CD化の「DEBUT SPECIAL」は、内容が全く違う構成ですし、そもそもオリジナルも単なるベスト盤ではなく、全てがリミックスやライヴ音源や再録ヴァージョンで構成されているので、そりゃあ、もう、ナイアガラーの方々は喜んで初心者は困惑するお馴染みの展開ではあります。オリジナルの「DEBUT」は、現在ではサブスクが解禁されているので、わざわざ高価な箱を買わなくとも聴けます。
其の内容は、「はっぴいえんど」から「GO! GO! NIAGARA」までの31曲から12曲を選んでもらうと云う企画なのですが、実際に其の結果通りの選曲なのかどうかは分かりません。A面1曲目「ナイアガラ・ムーン」はフィル・スペクターを意識したステレオ・リミックス、2曲目「楽しい夜更し」と3曲目「福生ストラット Part II」と4曲目「恋はメレンゲ」はモノ・リミックス、5曲目「あの娘にご用心 '78」と6曲目「ウララカ '78」は再録音、B面1曲目「趣味趣味音楽」と2曲目「ニコニコ笑って」と3曲目「空飛ぶくじら」はライヴ音源、4曲目「水彩画の町'78」と5曲目「乱れ髪 '78」と6曲目「外はいい天気だよ '78」は再録音です。最後の方が松本隆さんの作詞が多いのは、大瀧師匠としては既に「ロンバケ」の構想があって、其のアピールでもあった様です。「ロンバケ」以後に再構成された「DEBUT SPECIAL」では、もっと松本色が強くなっていて、「空色のくれよん」「田舎道」「指切り」などのライヴ音源と、「ウララカ〜はいから〜ロン・ロン〜サイダー」と「Sheila〜シャックリママさん〜Love's Made A Fool Of You」と云った自作曲やオールディーズのカヴァーのライヴ音源が加えられて、逆に「NIAGARA MOON」や「GO! GO! NIAGARA」の楽曲はオミットされております。「NIAGARA CALENDAR」や「多羅尾伴内楽團」や「DEBUT」、そして「レッツ・オンド・アゲン」には、実は「ロンバケ」に繋がる要素もたくさん含まれているのですが、表面的に聴いただけではそんなもんは感じられない路線だったわけで、と云いますか、普通の人は「ロンバケ」や「EACH TIME」だけ聴いている方が幸せだと思いますよ。
(小島イコ)