レコード盤、ひっくり返せば、B面に、で7月「泳げカナヅチ君」ですが、コレはですね、1975年に発売されて当時大流行していた「およげ!たいやきくん」のパロディで、サーフィンソングにした曲で、コーラスはJack Tones(4人共大瀧師匠の変名)で、歌っているのは、宿霧 “Borris” 十軒です。8月「真夏の昼の夢」は、これまた名曲で「ロンバケ」に収録されていても不思議ではありません。歌っているのは、パック・大滝です。後に「ロンバケ」の制作費を肩代わりしていたと云われる朝妻一郎さんは「2月と8月だけで良い」と云ったそうです。9月「名月赤坂マンション」は、クレイジーキャッツの股旅モノを意識した曲で、潰れてしまうナイアガラを歌った実録モノでもあります。和楽器も使ったノベルティ路線で、歌っているのは、 国定公園(股旅さうんど愛好会会長)です。10月「座読書」は、歌い出しが「さあさあダンスのニューモード」であって、つまりは「ロコモーション」の和訳の出だしと同じのノベルティ路線です。歌っているのは、二宮損損です。11月「想い出は霧の中」は、ジョー・ミーク路線の哀愁サウンドで、後の「さらばシベリア鉄道」に繋がる曲です。歌っているのは、我田引水 “哀愁さうんど、歌謡曲同好会会長”です。此の曲のインストゥルメンタル「霧の乙女号」は、「多羅尾伴内楽團」30周年記念盤に収録されております。
さて、ここまでの11曲は、メロディ路線とノベルティ路線がコロコロと変わるものの、まあ、そんなには「ロンバケ」を期待する方々を裏切ってはいないでしょう。問題は、最後の12月「クリスマス音頭」から「お正月」となる大団円です。「クリスマス音頭」を歌っているのは、苦労巣三太で、「お正月」を歌っているのは、坂本八とトランク短井です。クレイジーキャッツの「クレイジーのクリスマス」に影響された「クリスマス音頭」は、まずは他では考えられないクリスマス・ソングでしょう。かなりイカレテいると思える異様な盛り上がりを見せるコノ楽曲でも、大瀧師匠のお願いでタツローがストリングスアレンジを担当しているわけで、タツローは「クリスマス音頭」と「クリスマス・イブ」の両極端2曲共に関わっている正に「クリスマス男」となったわけです。余談ですが「クリスマス・イブ」が売れる前のタツローは、「夏だ!海だ!タツローだ!」と謳われていたんですよ。ナイアガラの全てをつぎ込んだ「クリスマス音頭」から除夜の鐘と共にThe Kingtonesのコーラスに乗せてアカペラで歌われる「お正月」で終わって、またA面に戻れば永遠に続くと云う大傑作である「NIAGARA CALENDAR」は、内容の素晴らしさは理解されず、全く売れず、ナイアガラはコロムビアとの契約を切られる事となるのでした。
(小島イコ)