コレを書いているのは3月20日で、遂に「大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」が届いて、早速聴いています。まずは、コレは大傑作です。こうした大瀧師匠が亡くなってから出されるモノは、詳細なデータが不可欠で、其の辺が「Happy Ending」には欠けていて、モヤモヤしたのですが、今回は湯浅学さんと安田謙一さんによる詳細なライナーノーツが付いているので、制作年月日や曲の成り立ちなどは分かります。出来れば参加ミュージシャンなども載っていると良かったのですが、何にもなかった「Happy Ending」に比べたら、よっぽどマシな事が書かれています。まずは「大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK」ですが、全11曲は試聴で明らかになった様に大瀧師匠が提供曲をセルフカヴァーしたとされている、其の実態はデモ音源やガイドヴォーカル音源なのですが、ほとんど完パケ状態のオケで大瀧師匠が歌っている楽曲が多いので、制作年が違っていて一定の音像になってはいないものの、バラバラなのに一気に聴かせてしまう力技があります。其れは何でなのかと考えたら、兎に角、大瀧師匠が乗って歌っていて、メロディ路線よりも逆に歌の上手さが際立って感じられるからでしょう。大瀧師匠がメロディ路線だけではなく、ノベルティ路線もチカラを入れていて、もしかしたらこっちの方が好きでやっていたと思える熱演が続きます。同じ様な内容でメロディ路線に絞った「DEBUT AGAIN」には照れがあったのに、こっちでの大瀧師匠はイキイキとしていて、聴いていて痛快です。
更に2枚目の「NIAGARA ONDO BOOK」は、予告では18曲でしたが、なんと、とんねるず版の「ゆうがたフレンド (USEFUL SONG)」も加えた全19曲の特盛状態での発売となりました。とんねるずとは方向性の違いでボツになったと云われており、石橋貴明さんも松本隆さんとの対談で「ロンバケ」みたいなカッコイイ曲が来ると思ったら、チントンシャンみたいな変な曲でオクラになった、と語っておりましたが、こうして聴いてみると、とんねるずの二人は結構ノリノリで歌っていたりもします。1枚目に入っている「ゆうがたフレンド (USEFUL SONG)/大滝詠一と鈴木慶一(冗談ぢゃねーやーず)」が、生前の大瀧師匠の最後の公式レコーディング曲となったわけで、これまでは竹内まりやさんとのデュエット「恋のひとこと」となっていたのが覆されたのも、洋楽のカヴァーでカッコよく終わったのではなく、こんなバカバカしい曲で終わっていたのかと、何だか嬉しくなっちゃいました。2枚目の方はレア音源満載の提供曲やプロデュース作品をかき集めたモノで、異様な熱気が伝わって来る尋常ではない世界が展開されております。1978年の「レッツ・オンド・アゲン」や、其の発展形だった1987年の「LET'S ONDO AGAIN SPECIAL」を、更に拡大した様な内容で、ハッキリ云って、聴いていて恐ろしくなる程のパワーがあります。と云う様にべた褒めしてみましたが、コレは個人の感想であって、「ロンバケ」路線が好きな方々にとっては、とんねるず同様に「方向性の違い」を強く感じるアルバムでしょう。あたくしは元々こっちも好きなので良いけれど、わざわざ違うヴァージョンに仕上げている曲も多いのは、少しだけ気にはなります。しかし、コレって売れるんでしょうか。(つづく)
(小島イコ)