ナイアガラは年間4枚3年で12枚などと云う出鱈目な契約をコロムビアと交わしていて、エレック時代の再発2枚があった1976年は2枚出せばよかったのですが、其れも1枚は「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」でオムニバス盤だったわけで、大瀧詠一師匠のソロアルバムは「GO! GO! NIAGARA」1枚だけだったのです。それで、1977年になると本格的に厳しい状況となりましてですね、まずはCM集を出して、シリア・ポールさんのアルバムを出して、次の「NIAGARA CALENDAR’78」の構想はあったものの、それでは1枚足りないので、1977年11月25日に「多羅尾伴内楽團 Vol.1」を、翌年の1978年6月25日には「多羅尾伴内楽團 Vol.2」を発売するハメとなりました。此の2枚は其の後にソニーから1984年4月1日に「NIAGARA BLACK VOX」にエコーがかかった再発盤が収録されて、1987年6月21日には2枚から選曲された1枚ものの「TARAO BANNAI SPECIAL」として初CD化されて同日発売の「NIAGARA BLACK BOOK」にも収録されたのですが、そちらは例によって吉田保さんによるリミックス盤で、「多羅尾伴内楽團 Vol.2」のオリジナルにはあった波の音は入っていません。1990年代にスリムケース廉価盤が出た時には再発されなかったので、2007年9月21日に30周年記念盤として2枚全曲にボーナストラックを4曲も加えた全28曲入りで再発されたのは一部では大いに喜ばれたのでした。オリジナルマスターなので、ちゃんと波の音も入っています。
でもですね、2on1で収まってしまう内容はと云うと、大瀧師匠も「多羅尾伴内楽團は出したくはなかった」と云っていた通り、全編が主に洋楽のカヴァーでインストゥルメンタルなのです。コレはですね、「ロンバケ」以降に聴き始めた方々にとっては「NIAGARA MOON」とか「NIAGARA CALENDAR’78」とかよりも、聴いて困惑するしかないアルバムでしょう。個別には取り上げませんが、1977年9月5日には細野さんや茂がいたティン・パン・アレーも「TIN PAN ALLEY 2」と云う2枚目をパナム/クラウンから発売していて、そっちも基本的にはインストゥルメンタルなのです。ティン・パン・アレーの方はメンバーの旧作やフォークソングをカヴァーしていて、まだ「歌のない歌謡曲」的なムードもありますが、多羅尾伴内楽團の方はマニアックな洋楽で、原曲には歌入りの作品もあって、なかなか馴染みにくい作品となっております。まあ、それでも、ナイアガラーの方々は結構コレが好きなわけでして、単なるファンであるあたくしも嫌いではありません。でもですね、やはりコレは年間4枚3年で12枚なんて無茶苦茶な契約がなければ、まずは発表される事はなかったであろう作品ではあります。日本のエレキブームはビートルズからではなくヴェンチャーズから始まったわけで、こう云う路線と云うのは一定の需要はあるとは思いますが、「ロンバケ」以降のファンにとっては「何じゃらほい」でおしまいでしょう。「大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」も、キチンと試聴してから購入する様にした方が良いですよ。
(小島イコ)