「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」に参加した後に、1976年には大瀧詠一師匠もタツローもそれぞれソロアルバムを出しました。遅れて1977年5月25日にアサイラム/ワーナーから、伊藤銀次さんのファーストソロアルバム「DEADLY DRIVE」が発売されました。銀次はココナツ・バンクが解散した後に一時的にSUGAR BABEに加入した時期もありましたが、脱退後はりりいさんのバックバンド「バイバイ・セッション・バンド」に加入して、当初はバイバイ・セッション・バンドでアルバムを出す計画が、途中から銀次のソロになったそうです。故にバックはドラムがユカリで、ベースが田中章弘さんで、パーカッションが斉藤ノブさんで、キーボードが緒方泰男さんと教授となっていて、1曲目の「風になれるなら」では詞とコーラス(Windy Chorus)をター坊が担当して、3曲目で表題曲「Deadly Drive」では村松さんが作曲とギターで参加していて、4曲目でA面最後の「こぬか雨」にもター坊がコーラスで参加しています。其の「こぬか雨」は銀次の詞と曲で収録されていますが、実はSUGAR BABEのレパートリーで、そちらでは詞をタツローが改作していますし、アレンジもかなり違います。
兎も角、元SUGAR BABEのメンバーが多く参加しているレコードなので、タツローのファーストよりはずっとSUGAR BABE風な曲もあります。まあ、解散後で最もSUGAR BABEっぽいのはター坊の「Grey Skies」ですけれど、此のレコードを聴くと「風になれるなら」と「こぬか雨」でのター坊のコーラスがとっても印象に残って、懐かしさすら感じさせられるので、SUGAR BABEにおけるター坊の声が如何に重要だったのかと、逆説的に思い知らされるのです。あたくしも主役の銀次よりもター坊のコーラスが目当てで買ったので、A面ばっかり聴いていた記憶があります。2曲目の「I'm Telling You Now(好きなんだ)」はフレディ&ザ・ドリーマーズのカヴァーなんですけれど、あたくしはオリジナルの方をタツローのラジオ番組にリクエストしてかけてもらった事があります。ところが、其の回だけ何か用事があったのか聴いていなくて、後で友人たちに「読まれたね」などと云われて知ったのでした。3曲目の表題曲はジャケットにもある様に車のドライブも表しているのでしょうけれど、銀次はプロレスファンでもあるので、プロレスの技の名前にもかけているのでしょう。ちなみに「デッドリイ・ドライブ」とは、コーナーポストから相手を投げ捨てるだけの単純明快な技です。
(小島イコ)