あまり前例のないCM曲のアルバムが結構売れた事で、後の他のミュージシャンに影響を与えたものの、「2度売りするのか」との批判もあったのが1977年のオリジナル盤でございます。前回に述べた通り、此のアルバムも内容を変えて何度もリイシューされましたが、最も馴染みやすいのは1995年のスリムケース廉価盤「NIAGARA CM SPECIAL」です。コレは1973年から1983年までの大瀧詠一師匠が制作したCM音源から41トラック、実際にはパターンを変えて1トラックにしたモノもあって51曲が矢継ぎ早に楽しめます。此のアルバムに限らず、ナイアガラの商品は1990年代に再発されたスリムケース廉価盤が最も良い出来栄えとなっている作品が多いと思います。特にコノ「NIAGARA CM SPECIAL」は、1977年の「NIAGARA CM Special Vol.1」から1983年の「NIAGARA CM SPECIAL Vol.2」までから選曲されていて、其れは1983年の「NIAGARA CM SPECIAL Special Issue」と同じなのですが、何せ1980年代に発売されたCDは軒並み廃盤ですし、そもそもCD初期の音源は音が悪いのです。此の連載では勿論オリジナルのアナログ盤や1980年代の初期型CDに関しても言及しておりますが、聴けなければ話にならないので、入手困難ではない1990年代以降の商品を扱っています。30周年記念盤に関しては「NIAGARA CM SPECIAL Vol.1 3rd Issue 30th Anniversary Edition」と云うタイトル通りに、1977年のオリジナルアナログ盤の時期に限定して未発表のデモ音源まで収録した70曲も収録されております。
幾ら曲数が多くても1曲が30秒とか1分とかなので、30周年記念盤は全部聴いても40分38秒で終わってしまいます。ちなみにスリムケース廉価盤は、35分7秒です。大瀧師匠の場合は、CMをリズムの実験の場としたり、後の楽曲の原型としたりしていて、其の全貌が分かるのはスリムケース廉価盤の方で、やはり「ロンバケ」や「EACH TIME」の原型まで聴ける方が良いわけです。だからと云って30周年記念盤が悪いかと云えば、そんな事はないわけで、アン・ルイスさんが歌った「ドレッサーIII」や幻の「サイダー79」なんかもしれっと入れているので侮れません。大瀧師匠は実際に採用されたヴァージョンだけではなく、採用されなかったボツ音源とか、採用されたけれど1回しかオンエアされなかった音源とか、デモ音源とか、全部自分でミックスして捨てずにとっておいて、それらをあるだけ収録しているので、まあ、ナイアガラーの方々にはどうぞ出た音源は全部あつめて頂くとしましてですね、まあ、あたくしの様な単なるファンは、それぞれお気に入りの盤を選んで購入するのが宜しいかと存じます。それにしてもソニーと現在のナイアガラは、何で今更「大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」なんてモンを発売するんですかね。ああ云うふざけた企画こそ、大瀧師匠が存命中にやって欲しかったんですけどね。と云いますか、アレが売れるとでも思っているんでしょうか。
(小島イコ)