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2023年03月09日

「ナイアガラ考」#47「Grey Skies」



SUGAR BABEが解散した1976年に、真っ先にソロデビューしたのはタツローではなく、ター坊こと大貫妙子さんでした。まあ、タツローは「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」にソロ名義で参加しておりましたが、其れはまだSUGAR BABEが解散する前です。1976年9月25日にクラウンから発売された「Grey Skies」こそが、SUGAR BABEが解散してから出たメンバーの初の作品です。A面1曲目「時の始まり」2曲目「約束」そして5曲目の「愛は幻」の3曲はSUGAR BABE時代のレパートリーで、タツローがアレンジして元SUGAR BABEのメンバー(タツロー、寺尾さん、ユカリ)が演奏に加わっているので、ハッキリ云ってSUGAR BABEそのものです。更に4曲目の「午后の休息」は、SUGAR BABE以前のレパートリーです。3曲目の「One’s Love」とB面の2曲目「街」は細野さんがアレンジに参加して、バックには細野さん、茂、林さんなどのティン・パン・アレーが参加しています。B面4曲目の「When I Met The Grey Sky」は矢野誠さんのアレンジで、琴が使われているプログレッシブな楽曲です。そして、その他のB面1曲目「Wander Lust」と3曲目「いつでも そばに」と5曲目でラストを飾る「Breakin' Blue」をアレンジした上に、ほとんど全曲に近く演奏にも加わっているのが、教授こと坂本龍一さんです。

「Breakin' Blue」は、シンガーソングライターであるター坊の記念すべきソロ・デビューアルバムの最後に収録されているのに、インストゥルメンタルなのです。滅茶苦茶頑張っている教授は、次作の「SUNSHOWER」では全面的にアレンジを担当して、実質的には初のプロデュース作品となります。近年のCITY POP再評価で「Grey Skies」や「SUNSHOWER」が大いに持ち上げられておりますけれど、再評価と云う事はですね、発売当時は全く売れなかったと同義なのです。そもそもタツローと2枚看板だったSUGAR BABEが売れないどころかモノを投げられる程に嫌われていたのですから、ター坊がひとりになって売れるわけがないのです。今や伝説のグループとされるSUGAR BABEも、ティン・パン・アレーもナイアガラも、1970年代には全く正当な評価を受けてはおりませんでした。現行のCDにはシングル盤のみだった「明日から、ドラマ」に加えて「約束」のデモ音源と「午后の休息」のSUGAR BABE以前のデモがボーナストラックで収録されております。1973年にレコーディングされたと云う「午后の休息」は、ター坊がまだ10代だった頃と思われますが、後の独自性は既に確立されています。「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」のタツローの曲と、このター坊の「Grey Skies」の曲を合わせると、幻のSUGAR BABEの2枚目を夢想出来ます。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| ONDO | 更新情報をチェックする