「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」は、A面の1曲目はタツローの「ドリーミング・デイ」で爽やかに始まります。此の曲は詞がター坊で曲がタツローと云う意外にも珍しい共作で、若い頃のタツローは完全にハードロック唱法です。2曲目はSUGAR BABEのレパートリーだった「パレード」で、3曲目の「遅すぎた別れ」は銀次とタツローの共作で、銀次のいやらしい語りが聴けます。「DOWN TOWN」と「遅すぎた別れ」は、ザ・キングトーンズに書いてボツになった曲なので、もしも採用されていたならば日本のポップスの流れは変わっていたかもしれません。ちなみに「クリスマス・イブ」もコノ頃に「雨は夜更け過ぎに」と云う着想があって、後に竹内まりやさんに提供してボツになった楽曲なのです。4曲目は銀次の「日射病」で、A面最後の5曲目も銀次の「ココナツ・ホリデイ'76」で、共にココナツ・バンク時代の楽曲でありましてですね、1973年9月21日のはっぴいえんど解散コンサートで披露されてライヴ音源はあったモノのスタジオでの再録音です。ひっくり返してB面の1曲目は銀次の「幸せにさよなら」で、此の曲はシングルカットされるのですが、そちらでは銀次だけではなく大瀧詠一師匠とタツローも歌っている「A面で恋をして」の元祖みたいな出来栄えです。
B面の2曲目は銀次の「新無頼横町」で、コレもココナツ・バンク時代のライヴ音源しかなかった曲のスタジオでの再録音です。3曲目は吉田美奈子さんが作詞でタツローが作曲の「フライング・キッド」ですが、美奈子の詞の一部しか歌っていない珍しい楽曲です。そして、B面の4曲目からが大瀧師匠の出番となって、「FUSSA STRUT Part-1」は「NIAGARA MOON」の収録曲の焼き直しで、インストに掛け声だけの新録ですが、細野晴臣さんと教授の初セッションだと大瀧師匠は云っていました。5曲目は「夜明け前の浜辺」で、此のアルバムでは唯一大瀧師匠の歌声が聴ける曲なのですが、これまた「NIAGARA MOON」のセッションでの「夜の散歩道」に歌を乗せたモノです。最後は「ナイアガラ音頭」で、歌っているのは布谷文夫さんですが、此のアルバムでの大瀧師匠は此の1曲にだけチカラを注いだとも云える大問題作でした。元々は最後は大瀧師匠と銀次とタツローの3人でクレイジー・キャッツの「ホンダラ行進曲」を歌って〆る予定でライヴではやったものの、ラジオ番組「ゴー!ゴー!ナイアガラ」に寄せられたリクエストに応えてコノ世紀の快作が誕生しました。アナログ盤の全体を通して大活躍しているのは、まだ芸大の大学院生だった教授です。(つづく)
(小島イコ)