本日は「日曜日も頑張ります!」と片瀬那奈ちゃんが生放送で爽やかに司会を務められる「シューイチ」がお休みなので、「よし、片瀬那奈ちゃんの可愛い後輩が主演のスーパー戦隊&仮面ライダーを見てやるか。でもCSの手塚治虫劇場も見たいのよさ」なんぞと迷っていました。ところが、今週は上手い具合に朝6時から7時半まで映画「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」を放送するので、8時からの「三つ目がとおる」&「ブラック・ジャック」とはバッティングしておらず、まるっとぜんぶ録画予約できちゃったのよさ。流石は「かたちん」こと片瀬那奈ちゃん、いつも後輩が出ている特撮や手塚アニメを潰し捲くっている罪滅ぼしを、一気にやらかして下さった。「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」は地上波初放送で、ディケイド、フォーゼ、フミカス、ゴセイレッド、と云った「カタセカイ住人」が大活躍!てか、仮面ライダーとスーパー戦隊がコラボする夢の様な映画です。いえいえ、こんなもんで驚いてはいけません。此の次には「仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z」と云う、眩暈がする様な映画が公開されたのでした。
「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」は、なな、なんと、仮面ライダーとスーパー戦隊がヒーロー同士で対決するのだけど、こんな奇怪な作品が成立するのは、「仮面ライダーシリーズ」と「スーパー戦隊シリーズ」の原作が「石森(石ノ森)章太郎先生&八手三郎(東映プロデューサーの共同ペンネーム)」であるからです。てか、いきなりだナァで「野球仮面」が出て来て、吹き出してしまったじゃまいか。コレって、チビッ子向けだけに作ってないよね?かつてのチビッ子で今やパパになった世代もターゲットにしているとしか思えませんよっ。同一作家による夢のコラボは大昔からあって、例えば水木しげる先生の「復活! 悪魔くん(鬼太郎対悪魔くん)」とか、永井豪ちゃんの「マジンガーZ対デビルマン」や「バイオレンスジャック」などが有名です。ちなみに、永井豪ちゃんは石森(石ノ森)章太郎先生の弟子です。そして、石森(石ノ森)章太郎先生の師匠は「マンガの神様」手塚治虫大先生なのよさ。こうした所謂ひとつの「スター・システム」をマンガへ導入したのは、手塚先生です。イチバン分かり易いのが「ブラック・ジャック」で、主人公は「間黒男」ですが、毎回のゲストに過去に手塚先生が創造された多くの魅力的なキャラクターが意外なカタチで登場するのが醍醐味のひとつです。
「ブラック・ジャック」を入り口として、膨大で豊潤な目くるめく「手塚ワールド」へと踏み込んで行くのも好いでしょう。但し、手塚先生の作品は基本的に「物凄く暗い」のです。主人公は、みんな重すぎる業を背負い、悩み苦しみ、ハッピーエンドには至らないのだ。何ゆえ、そこまで主人公に辛い運命を強いるのか?と、あたくしは子供の頃から不可思議でした。手塚先生は名作「きりひと讃歌」に関して「ボクがコノ作品を気に入っているのは、作中に善人がひとりも登場しないからです」とおっしゃいました。主人公である熱血漢の医師は、教授に嵌められて顔が犬みたいになる奇病にかかり、親友だと思っていた同僚に婚約者を犯され、村で知り合い病を献身的に看病してくれた妻もチンピラに犯された挙句に殺され、自分は見世物として海外へ売られ、そこで知り合いカウンセリングして心を通わせた異常性欲者であった女も事故で失い・・・と、救い様がない展開で物語は進みます。手塚先生の作品は、全部そんな悲惨で重い話ばかりなのよさ。でも、面白いんだよナァ。何度読み返しても、心が揺さぶられてしまうのよさ。
「きりひと讃歌」にしろ「奇子」にしろ、現在出ている単行本では上下巻のたったの二冊で終わってしまうのだけど、何ゆえこんなにも深いテーマを描き切ってしまえたのでありましょうかしらん。其れを「天才だから」とひとことで片付けてしまうのは、あまりにも手塚先生に対して失礼でしょう。手塚先生は単行本化する際に連載時を大きく改変してしまうのが常でしたが、「人間ども集まれ!」など雑誌掲載時と単行本を一冊で読める復刻もされています。「人間ども集まれ!」のラストは、連載当時にはコミカルで未だ救いがある感じだったのに、単行本にまとめられた時には何とも云えない虚無感がズシリと残る悲劇となりました。そして、手塚先生は「ボクは、こういうラストの方が好きです」と、ハッキリとおっしゃった。手塚先生の作品は、途轍もなく「残酷」です。可愛らしい「ピノコ」に誤魔化されてはいけません。彼女は、奇形脳腫から「ブラック・ジャック」が作り出した「改造人間」なのですよ。無免許医うんぬんかんぬんを問う以前に、「間黒男」は完全にアタマがイカレております。デタラメにも程があるのに、何故か感動させられてしまうのだよ。手塚先生は、単なる「天才」なんぞではありません。ズバリ云って、狂っています。
(小島藺子)