w & m:HARRISON
P:ジョージ・マーティン(4/16)、クリス・トーマス(4/18)
E:ケン・スコット(2/25)、フィル・マクドナルド(4/16)、ジェフ・ジャレット(4/16、18)
2E:ケン・スコット(2/25)、リチャード・ラッシュ(4/16)、ジョン・カーランダー(4/18)
録音:1969年2月25日(デモ take 1-2)、
4月16日(take 1、take 1-4、take 4 に SI 「歌、コーラス、ギター、ベース」)、
4月18日(take 4 に SI 「ハモンド・オルガン、リード・ギター」)
STEREO MIX:1969年4月16日(take 4 より 1-3)、4月18日(take 4 より 5-23)
1969年5月30日 英国シングル発売
アップル(パーロフォン) R 5786(ステレオ)
ジョージ・ハリスンが書いた楽曲で、既に1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」で取り上げられていましたが正式レコーディングには至っておりません。「THE GET BACK SESSIONS」の時期に、ジョージ・ハリスンはソングライターとして開花しており、面白いように曲が書けていました。然し、彼の楽曲が採用される事は相変わらず少なく、なな、なんと、たった一曲
「FOR YOU BLUE」しか録音されなかったのです。後に完成されたアルバム「LET IT BE」には、もう一曲
「I ME MINE」も収録されましたが、其れは映画でリハーサル場面が使われる為に、1970年1月に録音されたのでした。
「THE GET BACK SESSIONS」でジョージが披露した楽曲には、
「SOMETHING」、「LET IT DOWN」、「ALL THINGS MUST PASS」、「ISN'T IT A PITY」、「HEAR ME LOAD」、など「何ゆえボツにされたのか?」としか思えない珠玉の名曲が揃っています。でもですね、
残念乍ら、ジョージ・ハリスンと同じバンドには、ジョン・レノンとポール・マッカートニーも居たのです。ジョンやポールも多くの曲をボツにしたり先送りしていたわけでして、とっても贅沢な状況だったとも云えます。ま、当事者にとっては「もっと自分の書いた曲を発表したい!」となりますし、其の意識を最も強く持っていたのはジョージ・ハリスンだったでしょう。「ジョージの曲は、アルバムに二曲くらいで好いじゃん!」と何となく決められてしまい、小僧時代は我慢していたものの、徐々に成長したジョージは「何で、僕の曲は蔑ろにされるのだ?」と不満をつのらせます。
仕方なくジョージは、1969年2月25日の誕生日にたったひとりで、「SOMETHING」、「ALL THINGS MUST PASS」、そして「OLD BROWN SHOE」を録音しました。そして、4月16日にようやく「OLD BROWN SHOE」をビートルズとして正式レコーディングすることになったのです。ジョージが多重録音したデモの段階で、曲のアレンジもほぼ完成しています。元々「THE GET BACK SESSIONS」でリハーサルをしていたので、レコーディングはスムーズに進みました。ベーシック・トラックは、ジョージ(ヴォーカル、ギター)、ポール(ピアノ)、ジョン(ギター)、リンゴ(ドラムス)で行われ、オーヴァー・ダビングされて完成します。
4月16日に、ジョージのリード・ヴォーカルとリード・ギター、ジョンとポールのコーラス、そして、4月18日に、ジョンが自分のギターを消去して重ねたハモンド・オルガンと、ジョージがレズリー・スピーカーを通した新たなるリード・ギターを加えました。問題は、4月16日に加えたベースを弾いているのは、ポールなのか、ジョージなのか、なのだ。確かに、ジョージのデモの段階でベースのフレーズは出来上がっていて、ジョージがおそらくギターで弾いて録音しています。ゆえに、ジョージがベースを弾いたとも思われますが、目立ちたがりな感じからポールがベースとも思えます。ハモンド・オルガンに関しても、ジョン、ジョージ、ポールと諸説あり、よく分かりません。
シングルのB面となったのは、おそらくジョン・レノンの推しがあった為だと思います。事実、「THE GET BACK SESSIONS」中に、ジョンはポールに「ジョージの曲が、俺やお前が書いた曲よりも採用率が低いのはマズイだろ?」と意見していました。ま、さっさと自分が書いた
「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」を発売したくて、既にリハーサルもしていた此の曲をやっつけたのかもしれませんけどね。何せ、「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」は、1969年4月14日にポールと二人で一日で完成し、「OLD BROWN SHOE」も4月16日に一日で一旦完成まで至るのです。4月18日に追加録音したのも、ジョンとジョージの二人で行われた可能性も考えられます。てか、さっさとジョンとポールでA面をやらかしといて、翌々日にはB面を四人でガッツリやらかすって、バラバラなのかまとまっているのか、さっぱり分かりませんナァ。此の曲も当然乍ら、ステレオ・ミックスしか行われていません。
(小島藺子)