w & m:LENNON /
McCARTNEY P:ジョージ・マーティン
E:ケン・スコット
2E:ジョン・スミス
録音:1968年8月22日(take 1-5「ドラム、ギター、ベースのベーシック・トラック」)、
8月23日(take 5 に SI 「ドラム、ベース、ギター」し、編集した
take 6 に SI 「ドラム、ベース、ギター、ピアノ、歌、コーラス、手拍子」)
MONO MIX:1968年8月23日(take 6 より 1 「効果音」を挿入)
STEREO MIX:1968年10月13日(take 6 より 1 「効果音」を挿入?)
1968年11月22日 アルバム発売 (
「THE BEATLES」 A-1)
アップル(パーロフォン) PMC 7067-7068(モノ)、PCS 7067-7068(ステレオ)
ポール・マッカートニーが書いた楽曲で、ビートルズの二枚組大作「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」の冒頭を飾るストレートなロケンロール。チャック・ベリー作「BACK IN THE USA」のパロディに、ビーチ・ボーイズ風コーラスを加えた「洒落が効き過ぎ(御存知の通り、ビーチ・ボーイズの大ヒット曲「SURFIN' USA」は、チャック・ベリー作「SWEET LITTLE SIXTEEN」の改作です)」なポール節が全開です。ビートルズが1968年2月から3月までインド滞在中に書かれた曲のひとつで、同じくマハリシ・マヘシュ・ヨギの元で修行していたビーチ・ボーイズのマイク・ラヴが「俺様が共作した!」と公言しています。確かに、海賊盤などで聴けるマイク・ラヴの誕生日(3月15日)を祝ってポールが中心で即興で演奏されたといわれる曲(「Happy Birthday Mike Love〜Spiritual Regeneration」)が「BACK IN THE U.S.S.R.」の原型とも思えますし、マイク・ラヴらしき声も聴こえます。真相は、よく分かりません。
そんな事よりも、此の楽曲は、ポール、ジョン、ジョージの三人で演奏されている方が重大です。「THE BEATLES」と云うタイトルなのに、一曲目(次に詳しく語りますが二曲目も!)で、なな、なんと、ドラムを叩いているのはポール・マッカートニーなのだ。ベーシック・トラックは、ポールがドラム、ジョージがギター、ジョンがベースの三人で録音され、其の後のオーヴァー・ダビングも全て三人で行われています。リード・ギターも、当然乍らポールです。リンゴは、どーした?はい、ポールにダメ出しされて「オラ、もうこんなバンドは辞めるだっ」と脱退してしまったのです。一説には、ポールが「え〜いっ、此の下手糞野郎めぇーっ!」とリンゴを殴って泣かせてしまったとも云われております。それで、リンゴが泣いて帰ったら「いいよ、ボクが叩くのだ。ボクの方が太鼓も上手いのだ!」と言い放ち、最初にリード・ギターを弾いたジョージよりも目立つリード・ギターも重ねちゃったのよさ。おいおい、非道だぞ、ポール・マッカートニー。ちなみに、ビーチ・ボーイズもライヴで何度も披露しており、レコードでは叩いていないリンゴが客演してドラムを担当した事もあります。何だかナァ。
ジョンはそんなこたぁ慣れっこですし、そもそも「自分とポールさえいれば、ビートルズは成立する」と思っていますからね。てか、少し前なら「まあ、まあ、みんなで仲良くしようぜ」とかリーダーらしさを見せたのでしょうけど、もう此の時期には「ヨーコに溺れドラッグにも溺れ捲くりでヘナヘナ」ですから、「ジョージやリンゴなんてどーだっていいさ状態」だったのでしょう。正直、ジョンもポールにむかついていたわけですよ。でも、最早ポールがいないとビートルズを維持出来ない状態でした。ジョンも自分の曲を録音したいわけで、そうなるとドラムも叩ける(しかも、リンゴより上手い!)ポールは必要なのよさ。多重録音が可能となって、自分で曲を書いている「ジョン、ポール、ジョージ」の三人はドンドンドンガラガッタ!と自分の曲を録音したいわけです。「8トラック」の導入で、益々音を重ねる事も可能になりました。
リンゴは太鼓を叩くだけでお役御免ですから、やる事がなくてポーカーばっかしてなきゃならないのよさ。ライヴ活動もとっくに休止していましたので「飼い殺し」ですね。そりゃ、辞めたくもなります。でも、実際に辞められたら、焦ったらしいです。其れで「リンゴ脱退」は極秘とされました。そもそも「ホワイト・アルバム」は、インド滞在中に書き溜めた曲をジョージ宅で四人仲良く27曲もデモ・レコーディングした時から始まりました。でもですね、アコースティック・ギター中心の所謂ひとつのアンプラグドで行われたデモ・セッションの段階から、リンゴは居心地悪かったと思われます。「BACK IN THE U.S.S.R.」は、飛行機の効果音(モノラルとステレオでは違っている)が飛び交う最高のオープニング・ナムバーですが、何もリンゴがいない曲から始めなくたっていいのにね。ちなみに、リンゴは此の曲でのポールのドラムを絶賛しています。
(小島藺子)