w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ジェフ・エマリック
2E:リチャード・ラッシュ
録音:1967年2月8日(take 1-8 「ベーシック・トラック」)、
2月16日(take 8 に SI 「歌、ベース」、編集し、take 9-10)、
3月13日(take 10 に SI 「管楽器」)、
3月28日(take 10 に SI 「歌、リードギター、コーラス、鳴き声」、編集し、take 11)、
3月29日(take 11 に SI 「鳴き声」)
MONO MIX:1967年2月16日(take 8 より 1)、2月20日(take 10 より 1)、
4月6日(take 11 より 1-2)、4月19日(take 11 より 10-23)
STEREO MIX:1967年4月6日(take 11 より 1-5)
1967年6月1日 英国アルバム発売 (「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND」 B-4)
パーロフォン PMC 7027(モノ)、PCS 7027(ステレオ)
ジョン・レノンがコーンフレークスのCMを見て発想したと云われる作品で、元々は基本的なロケンロール。「アンソロジー2」で聴けるオーヴァー・ダビング前の状態だと印象が全く違います。ジョンは「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND」制作時に「ポールがドンドンと勝手に曲を書き捲くって進めちゃうから、兎に角、何とか曲をでっちあげないとマズイって状態だった」と語っておりましたが、此の曲なんかは其の典型でしょう。其れでも、ジョンの変拍子も厭わないヴォーカルだけで聴かせてしまう強引な力技が発揮されています。
剥き出しの状態では満足できなかったジョンは、ブラス・セッションや動物の鳴き声を加える事でお茶を濁しております。エンディングの動物の追っかけっこの最後でニワトリが鳴く声が、次の「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND(REPRISE)」の最初のギターと重なっていて効果的です。此のアイディアを実現する為に、モノ・ミックスは「14テイク」もやり直されているわけで、其れを誇らしげに語るマーティンやエマリックも含め、ビートルズはイカレポンチ状態だったとしか云えませんね。ブラス(サックスX3、トロンボーンX2、フレンチホルンX1)も、サウンズ・インクの一流プレイヤーを惜しげもなく起用した挙句、ジョンが「当たり前すぎて、つまらん!」と云い出してグチャグチャに加工されています。
間奏での強烈なリード・ギターを弾くのは、ポール・マッカートニーです。ベーシック・トラックでも、明らかにポールのベースが曲を引っ張っておりまして、此の頃にはすっかりポールが音楽面のリーダーだったと分かります。ブラスや鳴き声を加える前の状態の方がカッコイイとも思えるのですが、ジョンなりにアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND」のコンセプトを考えての判断だったのでしょう。いや、前述の通り、曲の出来に満足していなかったので誤魔化したのかもしれません。でも、エンディングで動物が食物連鎖の順で追いかけっこする効果音は、あからさまに「ペット・サウンズ」に対抗していると思われます。ブライアン・ウイルソンはひとりぼっちだから「犬が吠えて終わる」けど、ビートルズは「こんなにも沢山の動物が喚いて、まだつづくのだよ」って事でしょう。トコトン非道な連中です。
さて、約一年半ぶりに「FAB4」(ビートルズ全曲解説)を再開しますけど、一気に最後まで行けるかは分かりません。もう半分以上は進んでおりますので、気が向いた時にチョロチョロと書いてゆきます。
(小島藺子/鳴海ルナ)