未亜:銀河系那奈億人の生真面目な片瀬那奈ちゃんファンの皆さん、こんばんは!いよいよ「第壱回・片瀬那奈・怪優グランプリ」も、残すは準決勝と決勝の三試合となりましたっ。実況は姫川、解説は「疑惑のプロデューサー」と呼ばれる小島藺子さんでお送りいたしますがぁ、小島さんっ、Aブロックの準決勝が「柏木礼奈 VS 姫様」とダークホース同士の対決となったのは、意外な展開ですね!
イコ:何が「疑惑」ですか?あたくしは「カラクリ」も包み隠さずお話しているざんしょ。此のAブロック準決勝は「西豪寺エレナ VS 姫様」との筋書きだったわけですが、アクシデントで柏木選手が勝ち上がってしまいました。そうした不測の事態を想定して、手塚モモコ選手をリザーバーとして仕込んでおいたわけですよ。此処で姫様選手がエレナ選手を破るとの波乱を演出した後で「実はAブロックのエレナ選手は替え玉で、Bブロックから復活したエレナ選手と決勝で対決!」と云うドラマチックな展開を考えていたのですけどねぇ。
未亜:しかしですね、小島さんっ、手塚モモコを影武者としていたと主張する西豪寺エレナ様がBブロックの準々決勝にリザーバーとして進出したのは、一回戦で美月うらら姫を大逆転勝利で下した小野未来が負傷欠場となったからですよねっ。もしも小野未来が怪我をしてでも出場していたら、手塚モモコは出られなかったんじゃないんですか?
イコ:おいおい、未亜たん。あたくしが、美月うらら選手にだけ「寝てくれ」と頼んだとでも思っているわけ?大流血で両腕を破壊された小野未来選手がハイキック一発で大逆転勝利なんて、そんなドラマみたいな事が起こるわけがないんですよ。未来選手にも根回しをして、うららちゃんと未来ちゃんは一回戦の前日に「西豪寺グループ」が所有する某所で綿密なリハーサルも行っています。流血はフェイクだし、腕も折れてるわけないでしょ。「WARスペシャル」で腕が折れますかぁ?何と申しましても、此の大会のスポンサーは「西豪寺グループ」なのですからね。ほとんどの選手は「エレナ社長にお世話になっている」わけで、、、。
未亜:あわわわわっ。もうやめてけれ!そんな内幕を明かされたら、夢も希望もないぢゃん!
イコ:いえ、だからこそ此れからの対戦が興味深いのですよ。柏木選手は学生で在りながらモデルとしても活躍しておりますが、師匠としてのプライドからか愛弟子のエレナ社長からの援助をキッパリと断って独立プロダクションを設立しています。姫様選手は「民間のスポンサーが付けない決まり」となっており、姫様の国家が全面的にバックアップしています。そして、孤立無援となった大久保千秋選手も買収しようと動いたのですが「私は、もうお金では動かない。昔、自分を見失ったからっ!」と頑なに拒否されました。つまり、準決勝に進出したエレナ社長以外の三選手は、何れも「西豪寺グループ」がコントロール出来なかった輩なのです。ま、あたくしとしましては、今後の事も考えて「姫様サイドにも有利な絵図」を書きましたけどね。ムフフフ。
未亜:それでは、ココからはガチンコと云うことなのでしょうかっ。さあ、柏木礼奈の入場だっ。あっ。ところで、特別ゲスト解説の美月うらら姫はどーしたんでしょう?
イコ:うららちゃんは、横浜アリーナでのライヴに向かいましたから、もう会場にはいませんよ。ダブルブッキングになっちゃったので、そもそも準決勝以降は出場不可能だったのです。此れからステージがあるのに準々決勝に出すわけにもいかず、一回戦でスッテンコロリンしてもらって、時間が許す限りゲストで出てもらったわけですよ。エレナ社長は当初「決勝はチャンピオンのうららちゃんとやりたいわね」とお望みだったのですけど、何せ人気者ですし、スタッフもバッティングを承知で仕事を入れてますからねぇ。困ったもんです。エレナ社長もご立腹だったのですが、チャッカリと横浜アリーナでの「美月うらら姫ショー」もエレナ社長が全面的にプロデュースしていますから、転んでもタダでは起きないですよ。エレナ社長は、横浜国際総合競技場と横浜アリーナを行き来して八面六臂の大活躍中なんです。凄いナァ、やっぱり。
未亜:はぁ、どうりで、会場からチビッ子が消えておりますっ。さて、柏木礼奈がぁ、軍団を率いてぇ、おっと、山口梨香と二人きりで入って来た!「高田清美とマリア様」は、どーしたっ。そして「柏木組」の弟子である「西豪寺エレナ様と小野未来と藤田千秋」の姿も見えないぞっ。小島さん!どーなってますかっ。
イコ:そりゃ、姫川さん、西豪寺エレナ社長に「柏木組」が乗っ取られただけざんしょ。マリアちゃんは今頃、横浜アリーナで映画の宣伝をしていると思いますよ。高田清美ちゃん、小野未来ちゃん、藤田千秋ちゃんも、「美月うらら姫ショー」に駆り出されたんじゃないんですかね。みんな、なかなかの演技派ですから、エレナ社長も高額で引き抜いたと思われます。唯一、山口梨香選手だけが買収に応じず「一蓮托生」とばかりに残ったのでしょう。
未亜:そして、対する姫様の入場だっ。おや?軍団で入場するかと思われましたがぁ、単身でオドオドとリングへ向かっているぞっ。おっと、眼鏡をしています!
イコ:おやおや、柏木選手も舐められましたね。アレは、加藤絵里選手ですよ。
未亜:おおっと、姫様軍団はリングサイド最前列の観客席で和やかに観戦しておりますっ。大事な準決勝に影武者としてぇ、加藤絵里を出場させたぁ!小島さんっ、片瀬那奈ちゃんファンでも正式名称が「加藤絵里」とは認識していないと云われるキャラクターを、敢えて姫様は身代わりとして出場させましたねっ。しかし、眼鏡と黒子でバレバレだっ。柏木礼奈が怒った!リングサイド最前列に陣取る姫様軍団に「本物を出せ!」とアピールしているぞっ。レフェリーの木田敦子が構わずゴングを要請したっ。おっと、加藤絵里は木田敦子と共にぃ、何故か「レジ打ち」をして遊んでいるぞ!一体、何をやっているのでありましょうかっ。
イコ:随分と仲が好いですね。まるで親子の様です。
未亜:完全に無視された柏木礼奈がぁ、加藤絵里に怒りの一本足頭突きを炸裂させたっ。レフェリーのあっちゃんは素早く逃れ、強烈な頭突きをマトモに喰らった加藤絵里が真っ二つに割れたぁ!柏木礼奈、コレはやり過ぎだっ。洒落にならないガチ攻撃で、まさに姫様に扮した加藤絵里を一刀両断!!うわっと、まるでウランちゃんの如く姫様に扮した加藤絵里が分裂したっ。小島さん!何ですかっ。
イコ:実にシュールですね。姫様軍団の技は、読めません。
未亜:おおっと、二人に分裂した加藤絵里が扮する姫様を見て、それならばとぉ、セコンドの山口梨香が乱入だっ。まるで双子の様な柏木礼奈と山口梨香がぁ、妖しげな分身の術を使う加藤絵里が扮する二人の姫様とタッグマッチで対戦しようとしております!うわっ、何だ、どうしたっ。ココでレフェリーの「あっちゃん」こと木田敦子がゴングを要請した!なな、なんと、柏木礼奈の「反則負け」とコールしているっ。小島さんっ、納得いかないですね!
イコ:柏木選手に山口選手が加勢しましたからね。シングル戦に第三者が加わったのですから、確かに反則です。
未亜:だって、加藤絵里だって二人に分裂したじゃん!それに、そもそも姫様が相手だったはずなのに、ニセモノで加藤絵里が出た事の方が反則ではありませんかっ。汚い!徹底的に姫様軍団は卑劣な手段を駆使して、まんまと決勝へ進出してしまったぁ!しかもぉ、裁いた木田敦子レフェリーは準々決勝で「明らかに西豪寺エレナ様に雇われた」と思えるレフェリングを行い、此の試合でも不可解な行動が目立ち過ぎたっ。小島さん!よもや、西豪寺グループと姫様軍団が結託しているんじゃないでしょうね?姫様軍団は木田レフェリーともども、さっさと退場だっ。勝ち逃げだぁ!場内騒然だっ。権威ある「KNKGP」が汚されてゆく展開に、ファンの堪忍袋の緒が切れたか!おっと、ココで高瀬リコちゃんが花道を突っ走ってリングに入ったぁ!呆然としている柏木礼奈と山口梨香に、何やらアピールだっ。そして、三人がガッチリと手を合わせぇ、リコちゃんがマイクを持った!小島さんっ、リコちゃんは小島さんを睨んでいますよっ。
イコ:負け犬の遠吠えです。柏木選手も高瀬選手も、姫様に負けたんですよ。
未亜:小島さんに対してぇ、高瀬リコちゃんが「そっちがその気なら、やってやるよっ。こんな茶番はもう沢山だ!柏木先輩と山口先輩とあたしは、新団体を創る。こんなの全部、八百長じゃないかっ。誰が優勝しても、あたしたちがそいつと闘って勝つ!お客さんっ、どーですかっ。柏木さんやあたしが負けたのはおかしいと思っていませんか?」と一気に捲くし立てたっ。おおっと、お客さんも支持しています!小島さんっ、どーしますかっ。
イコ:勝手に喚いていればいいでしょ。兎に角、姫様が決勝へ進出するのは確定で、覆りません。アノ三人が離脱したって、西豪寺グループの天下は揺るぎなく磐石ですよ。リコちゃんみたいなお嬢様に、何が出来るって云うのですか。高瀬グループも、礼奈や梨香のお父さんが社長の会社も、ぜ〜んぶまるっと「西豪寺グループの関連企業」なんですよ。莫迦莫迦しい。今や海外進出と打って出た西豪寺グループは、姫様とも友好関係を確立しています。決勝は「姫様とエレナ社長」と始めから決まっていたんですよ。ファンだって、分かっていたはずです。
未亜:ココまであからさまな仕掛けで、姫様が決勝に進出してしまったっ。コレで西豪寺エレナ様も勝ち上がったならば、ドッチラケの出来レースとなってしまいます!反乱を宣言した高瀬リコちゃんと柏木礼奈、山口梨香の動向も気になりますがぁ、此の辺で暴動寸前となった会場から一旦お別れいたしますっ。次回は準決勝第二試合「大久保千秋 VS 西豪寺エレナ」でお目にかかりましょう!皆さん、ごきげんよう!
(小島藺子/姫川未亜)