未亜:銀河系那奈億人の麗しき片瀬那奈ちゃんファンの皆さん、こんばんは!番狂わせの連続となっております「第壱回・片瀬那奈・怪優グランプリ」の準々決勝を、実況は姫川、解説は今や「悪魔の仕掛け人」とファンから罵倒されております小島藺子さんでお送りいたしますっ。
イコ:誰が「悪魔」なのよさ。多くのファンはあたくしの完璧な演出に熱狂してます。
未亜:しかしですね、小島さんが舞台裏を明かしている事に対して、純粋なファンは「裏切られた」とブーイングしておりますよっ。うらら姫、エレナ様、そして高瀬リコちゃんと大人気選手が次々に敗退してしまった展開に「やりすぎだ!」と抗議の声がツイッターで広まっております!
イコ:盛り上がってて、ええじゃん。
未亜:さて、準々決勝の第三試合は「大久保千秋 VS 藤田千秋」の同期生対決が行われますっ。特別ゲストとしては、ふたたびお色直しをされた「女王・美月うらら姫」に加わっていただくのですがぁ、うらら姫はまだいらしておられませんっ。ああっと、何だ、何だ!リング上に美月うらら姫が登場だっ。カラスのコスプレ姿で歌い出したぁ!小島さんっ、どーなっているんですかっ。
イコ:うららちゃんが「もっと目立ちたい」と云うのでね、ホラ、会場のチビッ子も大喜びでしょ。お祭りなんですから、楽しく行きましょう。其れにゲスト解説が加わるとあたくしの負担が増えるんですよ。鼎談にしなきゃならないから、ネタ作りが大変なのです。鳴海も「もう、ウチには、片瀬那奈さんの役は無理っすよ」と泣きを入れて来ましたからね。
未亜:アノね、、、。さて、うらら姫の華やかなステージが終わりまして、レフェリーのRINAがリングへ上がったっ。おおっと、ココで先ほど疑惑の敗退をした高瀬リコちゃんがやって来たっ。小島さんに抗議しておりますっ。「レフェリーを変えろ!」とぉ、小島プロデューサーの胸ぐらを掴んで殴りかかろうとしている!
イコ:ゲホゲホ、、、分かった。じゃあ、高瀬、お前が裁けばいいだろ。其れで文句ないな?
未亜:おっと、急遽レフェリーが高瀬リコちゃんに変更されましたっ。リコちゃんは納得してリングインだっ。おおっと、RINAを張り倒した!リング下にRINAが転がり落ちたっ。コレは、疑惑のレフェリングに対する制裁かっ。おやっ、いつの間にかリングサイドに姫様軍団が集まっておりましたぁっ。倒れたRINAを姫様軍団が介抱しております!やはりRINAレフェリーは姫様軍団の仲間だったのかっ。小島さんっ、大丈夫ですか?
イコ:高瀬選手は、まだチカラが有り余ってますね。いやはや、殺されるかと思いました。ニヤニヤ。
未亜:姫様軍団がRINAを連れて退場しましたがぁ、おおっと、ひとりだけ残った!
イコ:本物の姫様選手ですね。大久保選手と藤田選手の同期生対決を見守りたいのでしょう。
未亜:そして、藤田千秋が会社の制服姿で入場だっ。誰かがセコンドとして付いておりますっ。うわっとぉ、西豪寺エレナ様だ!更に、車椅子に乗って小野未来も続いておりますっ。押しているのはぁ、柏木礼奈だぁ!何だ、何だっ、小島さん!一体どーなっているんですかっ。
イコ:遂に「土下座」の師弟が揃い踏みしましたね。リザーバーとしてチャンスを得た藤田選手は、此の試合に賭けているのでしょう。師匠の柏木選手、そして姉弟子であるエレナ選手と未来選手と、所謂ひとつの「柏木組」を総動員して大久保選手に挑む覚悟です。此れは、最後に残った四強である大久保選手も危ういですね。
未亜:大変な事となりましたっ。当然の如く柏木礼奈に加勢している山口梨香とマリア、そして死んだはずの高田清美まで藤田サイドへやって来た!おおっと、甲田美和子、流山まどか、松沢明美、園田香織、雪代、岡田夏子、矢田和美、藤波紹子、新村慶子、葵、とぞくぞくと片瀬那奈ちゃんが演じた地味なキャラクターたちも藤田千秋の応援に大集合だっ!小島さんっ、驚きましたね!
イコ:いやぁ〜、此れは凄いナァ。判官贔屓にも程がありますね。此れじゃ、大久保千秋選手は負けると決まった様なもんです。遂に「四強が全滅」ですか。う〜ん、ふ〜ん、些かやりすぎだったかしらん。
未亜:何を自問自答して、ニタニタしているんですかっ。正に多勢に無勢と云った図式が予想される決戦のリングに、今、大久保千秋がたった一人で向かっておりますっ。おおっと、此れは銀色のレザー姿だ!伝説の歌手時代の片瀬那奈ちゃんが蘇ったぁ!!大久保千秋に「歌手・片瀬那奈」が憑依したぁっ!!小島さんっ、ゾクゾクしますねっ。
イコ:流石は大久保選手ですね。持てるチカラの全てを込めて藤田選手の挑戦を真っ向から受ける覚悟が感じられます。
未亜:さあ、大久保千秋がぁ、浮いたっ!花道から宙に飛んで、華麗に藤田千秋が待つリングへ舞い降りたっ。魅せますねぇ!高瀬リコちゃんが開始のゴングを要請したっ。おおっと、出た、出たぁ!藤田千秋が速攻で土下座だっ。鼻水をたらしてぇ、迫真の演技だっ。いきなりだナァとばかりにぃ、師匠譲りの究極大型兵器を導入だっ!それに対して大久保千秋はぁ、逆立ちだぁーっ、小島さん!伝説の技が炸裂しましたねっ。
イコ:まさか、此の「MIU逆立ち」が見れるとは思っておりませんでした。大久保選手の引き出しの多さは、底知れませんね。先ほどの入場でも「ジョージアの銀色案山子星人」を再現していました。う〜ん、凄いナァ、やっぱり。
未亜:しかし、藤田千秋にも意地があるっ。同じ「千秋」との名前で被ってしまうからとぉ、出世街道から外されてしまった屈辱を忘れてはいないぞ!おおっと、セコンド陣が大久保千秋に襲いかかろうとしておりますっ。それを、レフェリーの高瀬リコちゃんが次々と必殺技で撃退だ!柏木礼奈と西豪寺エレナ様と小野未来は、静観しているっ。柏木が弟子たちを一喝したっ。おおっと、藤田千秋サイドのセコンド陣が観客席へ移動しましたっ。
イコ:此れは、藤田選手に対する最大のエールです。大久保選手が本気ですから、ならば藤田選手には堂々とタイマンでやらせたいと思ったわけですよ。高瀬レフェリーも体を張って二人の一騎打ちを成立させようとしていますから、柏木選手やエレナ選手と云った実力者の心に響いたのでしょう。
未亜:只、気になるのは姫様の存在ですねっ。全くアクションを起こさず、リングサイドで戦況を見守っていますっ。リング上では伝説の大技「MIU逆立ち」を繰り出した大久保千秋に対してぇ、藤田千秋が美脚キックを放ったっ。大久保千秋は片腕で倒立しておりますがぁ、もう片方の腕に目掛けて魂の蹴りを藤田千秋がっ。おおっと、大久保千秋は後方に回転し、藤田千秋にライダーキックを炸裂だ!大久保千秋、物凄い身体能力だっ。立ち上がった藤田千秋にぃ、豪腕パンチを狙っているぞ!コレで決まりかぁっ。一撃必殺の豪腕パンチがぁ、うわっ、藤田千秋が間一髪でかわし、なな、なんと逆にクロスカウンターで大久保千秋の顔面を直撃だっ。ダウンした大久保千秋の頭を踏みつけた!コレは師匠の柏木礼奈が姉弟子の西豪寺エレナ様を粉砕した非情な攻撃の再現だっ!!藤田千秋の下克上が達成かっ。大久保千秋は不屈の闘志で立ち上がったがぁ、藤田千秋が狙い済ましてハイキック!延髄にヒット!!姉弟子の小野未来が美月うらら姫を大逆転で破った技を繰り出したぁっ!藤田千秋は「華麗なる盗人」だっ。
イコ:何と云っても、藤田選手はかつては「万引き」の名手でした。更生したものの、其の経験をプロレスに活かしましたね。流石の大久保選手も、アブナイですよ。
未亜:高瀬レフェリーがダウン・カウントを数えておりますっ。大久保千秋は、藤田千秋の執念の前に敗れ去るのかっ。新たなるスターが誕生か!大久保千秋がぁ、藤田千秋の足元でうずくまり動けないっ。カウントがセブンまで進んだ!おっと、大久保千秋が藤田千秋の美脚にすがりついて立とうとしております!まだあきらめていないのかっ。
イコ:此れは、マズイですよ。藤田選手はトドメの打撃で決めないといけません。
未亜:ああっと、大久保千秋が藤田千秋の両足を掬って寝技に持ち込んだっ。出ました!大久保千秋にはコレがあったぁ!得意の寝技地獄に藤田千秋を引き込んだっ。蛇の様に絡みつき、キチンウイング・フェイスロックを完璧に決めた!おおっと、信じられませんっ。藤田千秋が前方に回転し強引に振りほどき、大久保千秋の美脚を掴んでジャイアント・スイングだぁーっ!!思わぬ攻撃に朦朧としてダウンしている大久保千秋にぃ、コーナーに駆け上がりムーンサルト・プレスを敢行だ!!
イコ:藤田選手は、出世街道から外されても腐らずに頑張っていたんですね。持てるチカラの全てを大久保選手にぶつけています。大久保選手は、此れを喰らったらアブナイですよ。
未亜:おっと、大久保千秋は逃げずに受けたっ。決まったか!いや、カウント・ワンで弾き飛ばしたっ。大久保千秋、打たれ強さも天下一品かぁ!藤田千秋は呆然としておりますっ。おっと、高瀬レフェリーが大久保千秋を止めようとしているっ。何だ、何だっ!ココでリングサイドで静観していた姫様が動いた!乱入だぁ!!折角の名勝負を台無しにしてしまうのかっ。おや?姫様は高瀬レフェリーを羽交い絞めにしているぞっ。小島さん!どーなっているんですかっ。
イコ:高瀬レフェリーは危険だと察知して止めようとしましたが、姫様選手が阻止しましたね。同期生ですから、決着をつけさせたいと思ったのでしょう。
未亜:大久保千秋が、全てを出し切り棒立ちになった藤田千秋に豪腕パンチを真正面から炸裂させたぁ!藤田、ダウン!!おっと、カウントを数えるまでもなく、高瀬レフェリーがゴングを要請だっ。強い!大久保千秋が準決勝に進出ですっ。おおっ、高瀬レフェリーが泣いている!倒れた藤田千秋を抱き起こしたっ。リコちゃんと藤田千秋が号泣して抱き合っているっ!姫様が抱き合う高瀬リコちゃんと藤田千秋の肩をポンポンと優しく叩いて、大久保千秋と握手し、リングから去ったっ。小島さん!姫様らしくない謎の行動ですねっ。
イコ:よくやったと云う事でしょう。やはり、同期生ですからね。
未亜:勝者の大久保千秋が、藤田千秋と高瀬リコちゃんに近づいてぇ、コレは友情の三人での抱擁シーンとなるのでしょう!うわっ!何だ、どうしたっ。大久保千秋が、藤田千秋と高瀬リコちゃんを豪腕パンチで殴り倒したぁ!!藤田とリコちゃん失神だっ。大久保千秋は倒れた二人の顔面にサッカーボール・キックを炸裂させたぁ!柏木礼奈と西豪寺エレナ様がリングに突進して来たっ。それを見た大久保千秋は、脱兎の如く花道を退場したぁ!何だ、一体何が起こった?小島さんっ、場内騒然でモノがリングに投げ込まれていますよっ。
イコ:全く分かりませんナァ。只、大久保選手は此れで全てを敵に回したと云えるでしょう。アノ姫様ですら藤田選手の健闘を讃えたと云うのに、余りにも理不尽な態度でした。盟友の高瀬選手も、流石に愛想が尽きたんじゃないですかね。
未亜:確かに、大久保千秋は強かったっ。しかし、ベビーフェイスとして人気者だった大久保千秋の突然の豹変ぶりに、大観衆も非難轟々です!全く、どうしてしまったのでしょうっ。さて、次回は準々決勝の最後となります「小早川妙子 VS 手塚モモコ」でお目にかかりましょうっ。それでは、大混乱がどうにもとまらない会場から、皆さん!ごきげんよう!
(小島藺子/姫川未亜)